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短編集

オオカミと七匹の子ヒツジ

作者: さゆみ

 




 昔あるところに、お母さんヒツジと七匹の子ヒツジが仲良く暮らしていました。それはある日のことーー


「では、お買い物に行ってくるから、良い子でお留守番してるのよ」


 お母さんヒツジは言いました。


「はーい」


 七匹の子ヒツジたちは元気にお返事をしました。


「あ、オオカミが来るかもしれないから、気をつけるのですよ」


 お母さんはそう言うと出かけて行きました。




***




 それを木の陰からずっと見ていた一匹のオオカミがいました。オオカミは子ヒツジを食べようと思っていました。


「さてと、準備すっかー 」


 オオカミはまず、腕に白粉を擦りつけました。そしてシャキシャキドリンクとマムシドリンク、ウコンドリンクと青汁を一気飲みし、最後にのど飴を口に放りこみました。


「ふっ、歴代オオカミのようなヘマはしないわい」


 オオカミは子ヒツジたちの家に向かいました。


 トントン

「お母さんですよ」


 オオカミは鼻をつまんで言いました。


「わぁ、お母さんだー」


 ガチャ


 子ヒツジが鍵を外す音がしました。


 (なんだ、なんだ、もう開けるんかい)


「お母さん.おかえりなさい」


 無防備にドアを開けてしまったため、子ヒツジたちは一匹残らずオオカミに食べられてしまいました。そしてタイミング良く帰ってきたお母さんもそのまま食べられてしまったのです。オオカミのお腹は八匹のヒツジたちでパンパンに膨れてしまいました。体がひと回り以上大きく見えました。


「シャキシャキドリンクがよ〜く効いてるから全然眠くないぞ。寝たらダメだからなー、寝たらお腹を切られる。寝たらダメだ……」


 オオカミはゆっくりと森の中を散歩することにしました。満腹感とやわらかいそよ風と小鳥のさえずりにつつまれて、オオカミは幸せ気分でした。


 その時です。ドン‼︎ 銃声が森の中に響きました。オオカミは撃たれてしまったのです。そしてその場に倒れました。


 それから間もなくして、猟師がやってきました。猟師はオオカミを見てビックリしました。


「な、なんだ! 熊じゃないのか……」


 猟師は熊狩りに来ていたのです。麻酔銃だったのでオオカミは眠っているだけでした。猟師はパンパンに膨れたオオカミのお腹に興味が湧きました。持っていたハサミでお腹を切ってみました。すると、中から七匹の子ヒツジとお母さんヒツジが飛び出してきました。


「うわー⁉︎」


  猟師はその場に座り込んでしまいました。


「ああ、驚かせてごめんなさい、助けて下さってありがとうございます」


 お母さんヒツジは猟師にお礼を言いました。


「あなたは命の恩人です。どうか私たちの毛を刈ってお持ち帰り下さい」


 猟師は少し考えてから、うなずいて全員のヒツジの毛を刈り始めました。そして、刈った毛でヒツジの着ぐるみを作り上げました。


「出来た! さあ、これをオオカミに着せよう」


 猟師はニヤリと笑って言いました。




***




 オオカミは目を覚ましました。


「はて、俺は寝てしもうたのか? はっ! ま、まさか…… 切られたか……」


 オオカミはヨタヨタしながら川に行きました。そして川面に映った自分の姿を見て、唖然としました。


「な、な、な、なんだこりゃああぁぁぁぁーー」


 オオカミはしばらく動かなくなりました。やがて、空を見て何やら叫び始めました。


「そうか! そうだ! そうか! そうなんだ! そうだったのか! ヒツジを食ったからだ! 俺はヒツジじゃない! オオカミだ! よし、オオカミを食ってオオカミになろうーーーー」


 ヒツジの着ぐるみを着たオオカミはまた、ヨタヨタ歩き出しました。それを後ろから眺めていた猟師はボソッと呟きました。


「おい、脱げよ…… それ、前ファスナー…… 全開…… 気付けよ……」





 おしまい






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― 新着の感想 ―
[良い点] オオカミのアホさと、羊の優しさ。 そしてそれを感じた猟師の着ぐるみオチ。 熊じゃないから殺さない猟師さん凄く優しいです……! そしてオオカミの能天気さなら、きっと着ぐるみを着ていても生き…
[良い点] オオカミのキャラがいい味出してます。 落ちも面白かったです。 ご馳走さまでした(^ー^) [気になる点] ありません。
[良い点] 狼のキャラが可愛い!好感が持てます。 [一言] こういうおとぎ話のパロディ大好きです。甘すぎずグロすぎず、文章もとても読みやすく、緩急のついた展開が良かったです。どこまでも悪い男な狼も好き…
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