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遠い昔のお話。


空を見上げた。


…清々しい位の晴天だった。


光が木々の隙間から差し込むのを


黙って見ていた。


「…まだ、此処にいたのか」


「えぇ。彼は此処が好きだった」


「…そうだったな。俺が怒る度に此処に来ていた」


逆光で顔が見えないが、笑っているらしい。


「お前は…何時まで待ち続ける」


低いトーンで問われ、少し戸惑いながらも


「そうね…何時までも、よ。帰って来るのを信じてるから」


と、答える。


「そんな事したら、お前が壊れてしまう!」


「壊れないわ。私は彼から預かったの」


「なら尚更だ!」


「…貴方は一つ勘違いしてるわ。貰ったんじゃ無い、預かったの」


「彼奴はもう帰って来ない!」


「いいえ、帰って来るわ。預けたものを取りにくる」


「…」


ふと、太陽を雲が隠し顔が見える。


「…ちょっと、どうして悲しい顔をしてるの?」


「…お前もだろう」


「そんな事…あるかもしれないわね」


自嘲気味に笑う。


「私は…此処で彼を待つの。帰って来る事を祈りながら…」


「そん時は…一緒に祈ってやるよ」




遠いむかしの話、

1人の男は

世界を救うために

故郷を旅立った。


彼は、嫌われていた。

故郷の人々に。

「俺が行っても誰も悲しまないさ」

彼は旅立つ時にそう言った。







「…ねぇ、『  』。貴方が旅立って…」




「私は、悲しいな」


何となくのお話。



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