私の世界だったのです。
「あはは」「ねーなんかおかしーっ」
中学生のとき、女の子のグループの笑い声が聞こえました。
男の子はそこにいなくて、女の子ばっかりでたくさんのグループ。
私はその中に、いませんでした。
ただ、その笑い声を聞いてぼんやりしている、そんな普通の人間でした。
私は、何か秀でたものがあるわけじゃありませんでした。
普通じゃないところが一つもない事が、普通じゃない・・・そんな人間でした。
いつだって、なにをしてもなにを考えても、それは「平均点」でした。
高校の、私のクラスの話をしましょう。
私の担任の先生は三十代後半の男の先生です。
黒いフレームの眼鏡をしていて、担当は理科でした。
いつも袖がぶかぶかの白衣を着て、左手はポケットの中でした。
私の前の席の女の子は、とてもいい子で、仲も良いです。
彼女を嫌っている人は居ないみたいで、特別な人もいないようです。
その子はいつもニコニコしていて、こっちまで嬉しくなってきました。
私の後ろの席の女の子は、遅刻ばっかりしていて、授業もあまり出ていません。
ただ、音楽と体育と社会だけは必ず授業に参加していて、
でも私は、その子の声を聞いたことはありませんでした。
私の隣の席の男の子は、クラスのリーダー的存在でした。
正義感に溢れていて、よく人助けをしているそうです。
ただ、彼は喧嘩もよくしていて、いつも鼻に絆創膏がありました。
うちのクラスは「そんな人たち」が集められるクラスでした。
そして、うちのクラスは多分、世界一仲が良いクラスだったんじゃないかと思います。
私は、何か秀でたものがあるわけじゃありませんでした。
普通じゃないところが一つもない事が、普通じゃない・・・そんな人間でした。
いつだって、なにをしてもなにを考えても、それは「平均点」でした。
でも、私は皆の仲で、一番恵まれている人間でした。
そのクラスになって、一日でそれを実感できるほどに、私は恵まれていたのです。
私の担任の先生は、左手がありませんでした。
私の前の女の子は、耳が聞こえませんでした。
私の後ろの女の子は、声が出ませんでした。
私の隣の男の子は、鼻が利きませんでした。
私がなんでこのクラスなのかは、分からなかったけど、
私はこのクラスだったことを、とても誇りに思うのです。
私は嬉しくて嬉しくてこのクラスで全員が揃ったとき泣いてしまいました。
皆ははじめ驚いていたけど、大丈夫?って、大丈夫だよって、笑ってくれました。
だから、私は大丈夫だよ。ありがとう。って
皆に最高の笑顔をおくる事ができました。
あぁ、私はなんていい仲間を持ったのでしょう!
私は、なんでこのクラスだったんでしょう。
今となってはもうどうでもいいことだけれど。
・・・簡単に分かってしまう・・・。by零緋