少女は鈴と仲良しだったのだ。
思いつきをUP。
コッチも久しぶりだな…。
リン、とその場には似つかない音が鳴った。
その廃墟はいかにもな雰囲気を醸し出し、人を寄せ付けなかった。
【そっちに行くの?】
少女は鈴に向けて問うた。
それに答えるかのように、またリン、と音がした。
【…いいよ、行こうか】
ニコリと笑う少女には、声と云うものが存在し得なかった。
声を発す事を禁じられた。口を開ける事すらままならなかった。
鈴はもう一つ音を弾ませると、廃墟の中に入って行った。
…少女もそれに付いて行くかのように。
【此処に何かあるの?】
少女は鈴に問いかける。鈴はリンと鳴り響く。
これを少女らは繰り返していたのだ。
リー……ン…
鈴が、止まった。正確には音が止んだ。
【…?何も無いよ。ココ。行かないの?】
鈴が、鳴らない。廃墟にはいつもの静寂が訪れる。
朝が来たのだ。壊れた窓枠が朝日を反射させて少女は目を瞑った。
リン…。
【朝、弱いもんね。行くよ。】
少女は来た道を引き返した。
ただ、真っ直ぐ奥に入っただけだから、出口に行くのは簡単だった。
【次はどっちに行きたいの?】
リン、と音が左からした。
周りに人がいないのは、早朝だったからか。それとも、廃墟の傍だったからか。
或いは―――――…。
少女は左に歩き出した。傍ではリン、と音が響いた。