中編 side:L
謁見の間。
重臣たちが急ぎにも関わらず集まったこの部屋に足を踏み入れた時から一段とおとなしく私にすり寄ってくる存在がある。
そう、それは私の腕の中にある。
おとなしくしていてくれるのをいいことに、私は玉座に迷いなく腰を下ろした。
もちろん手放すはずのない腕のぬくもりと一緒に。
落ち着いたころにようやく顔をあげたぬくもり。
周りをみて目をこれ以上ないほどに開いている。
そんな姿も愛らしい…。
進行役の者が場を収め皆が私の言葉をまっていた。
腕の中の存在がどうして良いかわからないといった様子で不安げに瞳を揺らしていた。
小動物のようで頼りなげに震えている瞼を見てしまったら止められなかった。
私は思わず腕の力を強めてしまったのだ。
さすがに私が力を入れすぎて苦しかったのか離れようと身じろいでいることを察し、腕の力を緩めたが…
よかった。
私の腕の中に留まってくれるようだ。
では、事を進めてしまおう。
そう思って私は目的を果たすことにした。
「急な招集にも関わらず集まってくれたことに感謝する。
今日は報告したき事があり集まってもらった。」
それだけでこの場に集まった者は緊張に包まれる。
この状況から腕の中の存在に不躾な視線をよこす者もいた。
好奇な視線も多かった。
そんな視線が集中し、私の天使に対してなんということだと思わずにはいられない。
私はこの娘の居心地が悪くならないように視線で牽制した。
周りは一瞬にして静まりかえる。
空気が凍ったのが分る。
他のことを考えているらしい娘は自分の世界に入ってあまり状況をわかっていない様であったのが救いだろう。
そして、私は言葉を続ける。
「余、レオンハルト・ロードス・ローウェイズはこの娘を妃とする。 以上だ。解散」
そう。
一番言いたかった言葉を言いきった。
もうこの場に用はない。
許可など必要ないのだから。
私が全てなのだ。
暴君。
それでもいい。
普段の政では民の声も臣下の意見にも耳を傾け善政を心がけてきたつもりだ。
だが、どうしてもこれだけは誰に何を言われても変えるつもりはないのだからよいだろう。
今の私の国を見ると近隣諸国からは世界の中心・大国とまで呼ばれている。
無理に政略結婚する必要もなく国は充分潤っているのだから文句は言わせない。
そして私は茫然としている娘を来た時と同じように腕にしまいこの場を後にして直ぐに私室へと戻ることにした。
今まで色あせて見えた世界がウソのように華やいでいる。
疲れも吹き飛んだように身体が軽い。
さぁ これからが楽しみだ。
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