中編
さて、そんな私ではありましたがそこからはあっという間でした。
なんと目の前にいた男性がいきなり私に抱きついてきたのです。
抱きつかれた私は驚きで固まっておりました。
十分な時間この男性に抱きしめられ、その暖かさに安心感さえ抱いておりました。
そしていつのまにか現れた清楚なメイド服をきた侍女さんにあっという間に私は湯殿に連れて行かれ、磨きあげられて…
御姫様のようなドレスを着てまた部屋に連れ戻されたのです。
休む暇もなく男性に手を取られ長く豪華な廊下を進みます。
あまりの長さに私は途中で疲れてしまい足がもつれて転びそうになったのです。
そのときからです…この男性の力強い腕に抱きあげられ、状況を確認するよりも早く御姫様抱っこのまま謁見の間だと思われる会場に入った時には羞恥で顔が赤くなりました。
その時に周りを見ないようにしていたのが問題だったのでしょうか…
安心できるぬくもりを感じていたのでその暖かさに包まれ、恥ずかしさから顔を隠していたので周りの状態がわからなかった私は…
いつの間にか一つ上にある壇上の椅子に近づいていました。
男性がその椅子に座り、その膝の上に私も一緒に座ることになりました。
御姫様抱っこのまま横抱きで静かに座れられ、どういう状況なのか理解した時にはすでに多くの瞳にさらされていたのであります。
この間に私たちは言葉を交わしておりません。
状況についていけずに今まで固まっていた私。
そんなやり取りもない私たちでしたが動きがありました。
皆が集まるこの場所で進行役と思われる人からこの男性が席に着いた瞬間ざわめいていた会場をおさめる言葉が放たれました。
「静粛に。 陛下よりお言葉がございます」
陛下………?
私はいま自分の耳に入ってきた言葉を信じることができませんでした。
場所もさることながらこの人に高貴な雰囲気は感じておりました。
しかし、まさか陛下と来るとは思ってもみなかったのです。
…いえ、この会場に入ったときから何となくわかっていたつもりではありました。
ですがこんな非現実的な状況を信じたくなかったというのが本音でしょう。
さてさて、私を抱きしめたままにも関わらずこの男性は力強く宣言したのです。
「急な招集にも関わらず集まってくれたことに感謝する。
今日は報告したき事があり集まってもらった。」
ザワザワザワザワ…
突然の招集・そして報告ということで再び会場はざわめきに包まれておりました。
手を私を後ろから抱き締めるようにしているこの男性。
片方の手を挙げ場を一瞬で静まらせました。
そして。
「余、レオンハルト・ロードス・ローウェイズはこの娘を妃とする。 以上だ。解散」
あっこの人の名前レオンハルトっていうんだぁ~
と、私は一番気になるところを聞かなかったふりをしてとりあえず不自然に現実逃避していたのです。
しかしアレですね。
ここまでくればさすがの私もわかります。
認めたくはありませんが、これは私の大好きな噂の異世界トリップというものですね。




