↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

女狐と令嬢

作者: 葉月クロル
掲載日:2026/10/23

AIで画像を作って貼り付けてみました。

昭和の香りがするw

楽しいので、もっと増やすかもしれません。


レイラを新しくしました。

ゴージャスで可愛い(*´ω`*)

AIすごい!

挿絵(By みてみん)

 わたしはエミリー。深緑の森に囲まれた領地を持つアルデンヌ伯爵家に生まれ、焦茶色の髪と茶色の瞳を持つ平凡な令嬢である。

 地味な色合いと言う勿《なか》れ。艶やかな焦茶の髪も甘い飴玉のような濡れた茶の瞳も、大地の精霊に愛されている印なのだ。


 幼い頃から決められていた婚約者は隣領の男爵家当主であるディックである。彼はそこそこ見られるレベルの容姿だが、わたしは『男性の価値は性格よ』と思っていたので、優しく親切な彼を好ましく思っていた。音楽とお芝居を愛する彼と作る家庭は穏やかで暖かなものになると信じていたのに……。


 賑やかな街でデートしている最中に、従姉妹のレイラに会ってしまった瞬間から、すべての歯車が狂い始めた。


 陽光を浴びて輝く金髪と可憐な青い瞳を持つ、社交的で華《はな》のあるレイラに、ディックの心はあっけなく奪われた。

 彼の顔を見た時、わたしは『おお、ディックよ、おまえもか』と内心でため息をついた。彼女は略奪するのが大好きな、生まれついての『色恋の魔女』で『意地汚い女狐』なのだ。

 レイラはその美しい容姿と吸引力で、次々と男性をたぶらかして事態を混乱に陥れる女なので、女友達はひとりもいない。そのせいか、わたしに対してとても敵愾心《てきがいしん》を抱いている。


 それからレイラはちょいちょいディックにちょっかいを出したようで、彼が話す言葉は次第にレイラの話題ばかりになった。


挿絵(By みてみん)


 わたしは婚約者として、何度も彼を諌《いさ》めて警告したけれど、恋に浮かれる彼は「彼女は友達に過ぎないよ。嫉妬するのはやめたまえ」なんてモテ男みたいな台詞を吐いて自分に酔っていた。

 とてもキモいと思った。


 でもって、ある日突然彼から冷たく宣言されたのだ。「真実の愛を見つけた。君との婚約を解消したい」と。

 女狐に取り憑かれたお馬鹿さん、裏切り者にはなんの価値もないのよ。こちらからさようならだわ。

 でも、ムカつく。

 こんな奴にわたしの数年が消費されたと思うと、超ムカつく。

 お芝居の主人公になったような臭い言葉を撒き散らすディックの姿にムカつきまくりながら、わたしは慰謝料を巻き上げた。


 さて、ディックを落としたレイラはわたしに勝ち誇った笑みを向けたけれど、真顔のわたしに「あ、そう」と切り捨てられると今度は真っ赤な顔をした。彼女が欲しかったのはディック本人ではなく「私から奪う」という行為そのもの。ディックが真実の愛だと信じたものは、女狐の悪意に過ぎなかったし、わたしが切り捨てたものはレイラにとってもゴミなのだ。


「あなた、いつか刺されるわよ?」


 親切に忠告してあげたのに、あの子は「なによ、本当は悔しいんでしょう? 悔しくて、無理をしているだけだってわかってるんだから!」と軋《きし》んだ蝶番のように口からキーキーうるさい音を出した。


 いい機会だったので、わたしは「お父様、わたしのハートは傷ついて粉々に割れそうです。癒されるために金貨をください」とまとまったお金を巻き上げると「チャーリー、あとはよろしくね」と異母弟にすべてを丸投げして、名も知らぬ遠くの街へと向かった。

 嘘よ。

 よく知ってる街よ。

 ディックがおかしくなったのがわかってからすぐ、わたしは行動に移していたのだ。移住先をばっちり下調べして、腹心の部下に生活基盤を整えさせておいた。

 イケメンで頭がいいけれど、庶民だからと諦めていた彼は、「わたしは貴族家を出ようと思うの。あなたは一生わたしの下僕として生きなさい」と告げたら「なんて酷いことをおっしゃるのですか、お嬢さま!」と、目に涙を浮かべて喜んでいたわ。彼の性癖を捻じ曲げてしまったのはきっとわたしだから、仕方がない、最後まで面倒を見てやりましょう。


 騙しちゃってごめんなさいね、お父様。

 婚約者はあんなだし、お父様はわたしの話なんてろくに聞いちゃくれないし、義母との関係も良くなかったから、アルデンヌ家から出たくて機会を伺っていたのよ。

 幸せになるから許してね。


 そして今わたしは、美しく洗練された店内で、ガラスケースの中に収まった極上の宝石たちと共に毎日楽しく過ごしている。

 伯爵邸を出て三年が経ち、わたしはこの街でも指折りの高級宝飾店『シルヴァンス』を経営するオーナーとなったのだ。


 大地の精霊に愛されたわたしは、幼い頃から鉱物や宝石の知識を独学で深めていた。本物を見抜く目も、素敵な宝石と巡り合う幸運も持っているわたしは、慰謝料とお父様の金貨を元手に店を持った。そして懸命に、でもとても楽しみながら働いて、最初は小さかった店も驚くほどの急成長を遂げたのだ。


 焦茶の髪を編んでから気品あるアップスタイルにまとめ、仕立ての良い上質なドレスに身を包むわたしの肩には、見える人には見えるちっちゃなお友達がちょこんと座っている。


『エミリーエミリー、磨く? 石、磨く?』


「午前中はお店に立つから、午後に磨くわ」


『わーいわーい、キラキラに磨いてねー』


 大地の精霊は、宝石をカットして磨き上げると力が湧いてくるという。

 幸いわたしは手先が器用なので、足踏み式のグラインダーを使って原石をオリジナルカットし、オンリーワンがお好きな高貴な方々にお求めいただき莫大な利益を手にしているのだ。


 そういえば、ディックたちはどうなったかというと。


 わたしという邪魔者がいなくなった後、ディックは胸を張ってレイラに求婚したそうだ。だが、わたしという「奪う対象」を失ったレイラにとって、ディックなんてパッとしない男爵で、終わったゲームの捨て駒だった。


「あなたのような男に興味なんてあるわけないでしょう? すまし顔のエミリーのものを奪うのが楽しかっただけよ」


 酷薄な冷笑とともに捨て去られたディックは、そこでようやく自分の愚かさに気づいた。幸せな家庭を築いていけるはずの婚約者を失った彼は、復縁したくてわたしを探し回ったらしいけれど、実家のアルデンヌ伯爵家にさえ偽の情報しか与えていないわたしが貴族のボンボンに見つかるはずがない。


 ある日の夕暮れ、レイラが新しい恋人である富裕な子爵令息と仲睦まじく歩いているところへ、目がイっちゃったディックが現れ、笑顔で斬りつけたのだという。

 レイラの顔面から胸にかけて、サクッと斬り捨てたディックは、そのまま川っぷちまで走ると飛び込み、浅瀬の岩に頭をぶつけて昇天してしまったらしい。

 レイラは命は助かったものの、醜い傷が残ってもう女狐ムーブはできない身体になったらしいわ。世の女性方、安心なさってね。


 その後、ふたりの惨劇がお芝居になったらしいから、あの世に行ったディックは満足かもしれないわね。

お読みくださって、ありがとうございました。


連載中の『 『悪の氷結花』、継母になる。2〜春を待ちわびて〜(仮)』と、

その前の話の『【書籍化】『悪の氷結花』、継母になる〜天使な息子を可愛がっていたら、辺境伯に溺愛されました〜』もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。