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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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タタラくんの号令の元、酒の釜が開けられ、海鮮料理が並べられていく。


「ムクタ様……」

タタラくんがムクタさんを呼んだ。

「おいぼれはほっといてくれていいのに…」

ムクタさんはニコニコして、目尻に刻んだ皺を深くしながらタタラくんを見た。そして、乾杯を待つ村人たちを見渡した。


「みんな、今日はお疲れ様だったね。素晴らしい大漁に、――乾杯」




ムクタさんの乾杯が終わると、みんな大盛り上がりで宴が始まった。

大人には酒、子供にはぶどうジュースが振る舞われ、美味しい料理とちょっと酸っぱいぶどうで無限に食べれそうだ。

誰かが貝で出来た打楽器を打ち、指笛が旋律を奏でた。子供達の可愛いダンスにムクタさんが手拍子を打っている。


***


「やっぱり思った通りだ!この酒美味いぞ!!」

サチはご満悦で酒を煽っている。

「ヒロ!タタラ!お前らも飲んどけ!」

「サチ!タタラはまだ子供だろうが」

ヒロが珍しくサチを止めている。

「よく働いた男に子供も大人もねぇよ!お前の弟の坊主もなかなか根性がある!!」

クタクタで飲んだからかサチはいつもより饒舌だ。

「何がしたいか知らねぇが、いい手をしてた。あれはいい男になるぞ!」

サチがグッと親指を立てて男衆の輪の中に戻って行った。


「すまないな、浮かれてるみたいだ」

ヒロが申し訳なさそうに言う。

「いえ、いいんです。……大塩が終われば俺も成人です。その時、一緒に飲んで欲しいです」


「何かあるのか?」


ヒロはまっすぐにタタラを見た。


「え?」

タタラの瞳をヒロは見返した。

「大塩の後の事になると、タタラは少し違う」

タタラはどこか迷うように目を伏せ、顔を上げた。


上げた顔は皆の指揮をとる、少し大人びた少年に戻っていた。


「ヒロさん、島を作る時は、俺も協力します」

「あ、あぁ…」

「今日みたいに……みんなでできたら、きっと楽しくできますね」

「……確かに。一人でやる事ばかり考えていた」

「ヒロさん、今日はたくさんありがとうございました。みんな、ヒロさんの事、覚えたと思いますよ」

すでにヒロの思考は島作りに移っていて、タタラの変化にヒロが気づく事は無かった――。


***


「カナエさん」

「あ!タタラくん!」

私はお母さんたちと子供達に囲まれていた。

「タタラさん!聞いておくれよ!この子ったらー」

子供にタコを渡されて悲鳴をあげてしまった。しかも、子供が重そうだからと思わずタコを掴んでしまって盛大に墨を吐かれた。

「ちょっと!言わないで下さいよ!生きてるタコなんて初めて見たんです!」

「でもあんた、食べてるじゃないか」

「美味しいです!」

どっと笑いが起きた。

あれも食べろこれも食べろと勧められて、なんだか家族になったみたいで嬉しい。

「カナエさん、改めて、先日は弟が――」

「あ!その事、私も聞きたくて――」

私たちの声がかちあったその時。

「うぇーーーい」

酔っ払ったムクタさんが飛び込んで来た。

「ムクタ様!!」

「うぃーーひぃっく」

ムクタさんは赤い顔でタタラくんと私を両腕に抱いて楽しそうだ。

「あーらら……ムクタ様できあがっちゃったねぇ」

「ほんとに弱いんだから……タタラ、家までお願いできる?」

お母さん達は慣れたものなのか動じない。

「はい……カナエさん、手伝ってもらっても?」

「あ、はい」

二人でムクタさんを両脇から支えようとするが私の力が足りずよろけた。

「おっと」

支えてくれたのはヒロさんだった。

お母さん達はヒューヒュー言っている。

「彼を運ぶのか?一緒に行こう」



なんだか妙な声援を受けながら、私たちはムクタさんを送る事になった。



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