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幹の終わりに灯るもの――帰れなくなった少女の異世界旅――  作者: 河居


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44/55

大漁

「ロープを張れ!全員掴んでるかー!?」

男の人たちが二列に並び、ロープを掴んで位置に着いた。

「お前らぁ!!これ終わったら宴会だぞ!しまっていくぞぉ!!」

「おおーー!!」

先頭からサチさんの声が聞こえて笑ってしまった。みんないい声で返してくれる。

「今日はマレビト様も網を引くぞー!遅れをとるな!」

村人の誰かが煽って、また歓声が上がった。


「お!いよいよ始まるね!」

お母さん達が集まってくる。

「はじまったらね、みんなでおうえんするのー!」

「あんた達も網が浜まで上がったら引いておいで!練習だよ」

「はーい!!」

「浜まで上がってからなんですか?」

「引き潮が強いからね、危ないのさ。網が浜に上がるまでは真剣勝負さ」

豪快なおばさんが大きく柏手を打った。


「さぁあんた達!!男見せなぁ!!」


おばさんの煽りに今日1番の歓声が上がった。




「それ!引けぇ!!」

号令がかかって、一斉に男達がロープを引く。いくらか順調に引いていたが途中から全く動かなくなった。それどころか海に引き戻されている。

「引き潮だ、こっからが本番だよ!あんた達!気張りなぁ!!」

お母さん達が声を張り上げる。子供達もがんばれー!と顔を真っ赤にして叫んでいる。


***


「引き戻されてるぞ…!」

サチが力を込めるが砂浜は力を逃すように足元を沈ませて行く。

「このままじゃダメだ……!カナエ!!」

ヒロがカナエに向かって叫ぶ。

「何か号令をかけてくれ!力が分散してる!」


***


突然声をかけられたけど、すぐに答えた。

――綱引きみたい、そうだ!

「オーエス!です!オーで貯めて、エスで一気に引いて下さい!!」

慣れない場で出した大声はちょっと震えていた。

「みんな聞いたか!?掛け声に合わせろ!力を合わせろ!!」

私の拙い大声をヒロさんが繋いでくれる。

威勢のいい返事が返ってくる。

「みなさん、私に続いて叫んで下さい!!オーエス!」

今度は震えないように力を込める。

「オーエス!!」

「おーえす!!」

「オーエス!!!」


掛け声に合わせて、みんなが一つになった。

ロープは止まり、グッと動き出した。


「動き出したぞ!!この機を逃すなぁ!!」

いつもと違うヒロさんの声が浜に響いて、さらに大きな返事が返ってきた。

「はは!やるじゃねえか!おもしれぇ!」

サチさんの声が上ずる。

「オーエス!」

「おーえす!!」

「おーえちゅ!!」

小さな子達も一緒になって、ムクタさんのそばで大きな声をあげている。


「はは!こんなに元気な地引網は久しぶりだ、さぁ子供達、網が上がるよ!行っておいで」


ムクタさんが子供達を促した。

網は浜にあがっていた。

「さぁ!お前らマレビト様の前につけ!最後はお前らであげるんだぞ!」

年嵩の男達がロープを離して子供達に委ねた。途端に負荷がかかってサチさんとヒロさんの顔が真っ赤になっている。

子供達も負けじと声を張り上げ力を込めた。




みんなが最後の一踏ん張りを終えて砂浜に転がった。笑う膝も、上がる息も、全部が興奮材料になった。



視線の先には網がはち切れるほどの大漁だ。

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