潮汐
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ヒロは一人、砂浜に座っていた。
短い桟橋に、大きなものと小さなものを細い棒でつなげた原始的なボート。今日は漁に出ないのか、離れたところで男たちは網を繕っていた。
「何をしているんですか?」
タタラがやってきて隣に座った。
「……時間を数えている」
「時間、ですか?」
「自分の心拍を数えて、塩の満ち引きの時間を数えている」
ヒロは集中したように波間を眺め、指先で小さく拍を打っていた。
「え?」
「……あまり動揺させないでくれ。脈が乱れるとズレる」
言いながら、波打ち際まで移動して、ポケットから小石をいくつかだした。
「あぁ、緊張させたらすまない。そこまで繊細では無いよ」
言って、ヒロは波打ち際に石を並べては崩し、並べてはまた崩した。
「……何をしているのかきいても?」
タタラが遠慮がちに小声で聞いてくる。
その様子が少しカナエに似ていて、微笑んでしまう。
「大丈夫だ。ムクタは島を作って欲しいと言ったが、砂を運んだだけでは波に流されてしまうだろう?」
微笑んだことで、少し距離を縮めてタタラは聞いた。
「はい。干潮の時に運んでも、きっと次の干潮の時には無くなっています」
「だろう?だから、砂は運ばない」
ヒロはなおも波打ち際に石を並べている。
「砂は波に運んでもらうんだ」
ヒロはその後、干潮がはじまり、終わるまで、そこに座っていた。




