表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/51

第四十九話 赤い印の意味

 村の外れまで馬を走らせ、ようやく息を整えた。

 夕日が地平線に沈みかけ、空は朱色に染まっている。

 だが私とミリアの頭の中には、あの崩れた地下で見た光景が鮮明に残っていた。


 「——あの地図、覚えてる?」

 ミリアが馬上で問いかける。

 「もちろん。王都の北、南、東……全部で十三箇所に赤い印」

 私は頭の中で位置をなぞる。

 「しかも、そのほとんどが……」

 「物資集積所や小都市の近く、ね」

 二人の声が重なった。


 これは偶然じゃない。

 赤い印は、王国を包囲するための要所。

 つまり、同時多発的に襲撃が起きれば、王都は孤立する。


 「残り時間は多くて……一月」

 ミリアが低く呟く。

 「クレセントが本気で動くのは、その時」


 私たちは互いに顔を見た。

 そこにあったのは、敵意ではなく、同じ危機を共有する者の眼差しだった。


 「王城に報告するしかないわ」

 「ええ。でも……」

 ミリアはわずかに視線を逸らした。

 「王が動く前に、先に潰せる拠点は潰すべき。時間稼ぎになる」


 その提案に、私は口を引き結ぶ。

 正論だが、危険すぎる。

 だが、このまま指をくわえて一月を待つ選択肢はない。


 「……分かったわ。二手に分かれましょう」

 「一緒に動くのは嫌?」

 ミリアの口元がわずかに笑ったが、冗談ではないと悟っている。

 「あんたと組むのは、最終手段よ」

 そう言い捨てて、私は手綱を握り直した。


 こうして、私たちは別々の道を走り出した。

 次に会う時が、王都の命運を分ける時になるかもしれない——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ