第四十話 門前の邂逅
王都南門の前は、朝から活気に満ちていた。
行商人の荷車、農民の荷袋、兵士の詰所から響く号令。
その喧騒の中——私は一人の女の姿を見つけた。
外套のフードを深く被っていたが、歩き方と背筋の伸び方でわかった。
——ミリア。
追放されてから初めて、その姿を目にする。
予想していた弱々しさはなく、むしろ以前よりも鋭い光をその瞳に宿していた。
「動くな!」
南門の兵士が槍を構え、彼女を囲む。
通行人がざわめき、足を止める。
私はゆっくりと馬車から降り、群衆をかき分けて進んだ。
「久しぶりね、ミリア」
「……セリーナ」
声は低く、しかし震えてはいない。
私の方は笑みを浮かべたが、内心は針の上に立つような緊張感で満ちていた。
「ここはお前のいる場所じゃないわ」
「そうかしら。——私は取り戻しに来ただけよ」
その言葉に、周囲の空気が一瞬止まった。
彼女の視線は私だけを射抜き、門も兵士も存在しないかのようだった。
「捕らえなさい!」
私が命じると、兵士たちが動く。
だが次の瞬間、傍らのカイルが槍を弾き飛ばし、兵士たちを後退させた。
「邪魔だ」
低い声が響く。
「まだやるつもりなのね」
「ええ、何度だって」
ミリアの返事には、一片の迷いもなかった。
そのとき、門の上から見張り台の鐘が鳴り響く。
——外から大量の馬蹄の音。
新たな一団が迫ってきていた。
私とミリアは、ほぼ同時にそちらへ顔を向けた。
その瞬間、次の戦いの幕が上がったのだと悟った。