表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/51

第三十八話 王都の動揺

 晩餐会の最中、私はグラスを手に笑顔を作っていた。

 煌びやかなシャンデリア、音楽、甘い香水の匂い——

 しかしその中で、ひそやかな囁きが耳に届く。


 「……辺境で、奇跡が起きたそうよ」

 「聖女でもない女が、病人を癒したって話だ」


 私は笑顔を保ったまま耳を傾ける。

 ただの噂に過ぎない——そう言い聞かせる。

 けれど、妙に胸がざわついた。


 晩餐会が終わった後、控室でルーカスが報告を持ってきた。

 「この数日、辺境の村々で“金色の光を放つ女”の目撃が相次いでいます」

 「偶然の作り話でしょう」

 口ではそう言いながらも、心の奥に嫌な予感が広がる。

 ——あの目撃談、もしや……。


 机に置かれた地図の辺境の一角に、赤い印がいくつも増えていた。

 それは、ミリアが通った村の位置に重なっている。


 「追放されたはずの彼女が……何をしている?」

 ルーカスは少しだけ目を細めた。

 「復讐の準備かもしれません」

 「ふふ……なら、迎え撃つだけよ」

 そう言ったものの、胸のざわめきは収まらない。


 夜、私は寝室の窓辺に立ち、月を見上げた。

 ミリアがまだ諦めていないとしたら——

 これは本当に終わった物語ではない。


 ——そして私がその時点で気づかなかったのは、

 彼女の歩みが、すでに王都の運命を揺らし始めていたということだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ