2/51
第二話 別れと宣戦布告
広間を出ると、廊下で執事カイルと護衛ルーカスが待っていた。
カイルが眉を寄せる。
「お嬢様、本当に良かったのですか。婚約破棄など——」
「ええ。むしろ好都合よ。これで宮廷のしがらみから離れられるわ」
そう言うと、カイルは深いため息をついた。
けれど、その目にはわずかな安堵も見える。
彼もまた、この婚約が政治的な鎖だったことを理解していた。
「ルーカス、領地に戻る準備を」
「了解」
その夜、馬車に揺られながら王都を離れる。
窓越しに、遠ざかる城のシルエットを見つめた。
(必ず戻るわ。そして——あの玉座の周囲を、私の味方で固める)
悪役令嬢として終わる気はない。
私はこの国を動かすつもりだ。