8、ホワイトハンド
「天ヶ瀬先生、前回の手術お見事だったね。」
カンファレンスへ向かうため、長い廊下を歩いていると外科部長が後ろから話しかけてきた。
「ありがとうございます。立花先生のご指導のおかげです。」
俺がそう言うと、外科部長はクスッと笑った。
「相変わらず謙虚だね。そういえば知ってる?天ヶ瀬先生、ホワイトハンドって影で呼ばれてるんだよ。綺麗な白い右手でどんな病気も治してしまう、天才外科医っていう肩書き付きでね。」
ホワイトハンド、か。ホワイトなんて言葉を聞くと虫唾が走る。俺に白は似合わない。
「そうなんですね。初めて聞きました。」
「まぁ、そういうの興味なさそうだもんね。ファンクラブまでできてるみたいだし。じゃあ、次の手術も頑張ってね。」
外科部長は会議室のドアを開けながらそう言った。
「はい。ご期待に添えるように頑張ります。」
会議では明後日に控えている手術の最終確認が行われた。
「木枯雫さんの手術は予定通り、7月15日10時から行われます。執刀医は天ヶ瀬先生、第1助手は立花先生、第2助手は一色先生です。あれ、一色先生はまだ来ていないですね。」
医師たちが辺りを見回すと、勢いよく会議室の扉が開いた。
「いやー、すみませんね。5分遅れちゃいました。おばあさんが倒れていたんで、胸骨圧迫をやってたんですよ。無事息を吹き返したんで一件落着です。久しぶりにやると肩が凝るなぁ。」
トイフェルこと一色奏夢は肩を回しながら、軽快な足取りで入ってきた。




