7、隙を見せてはいけない
「椿先生、おままごとしよう。」
「先生、見て。お絵描きしたんだ。上手でしょ。」
「ねぇねぇ先生、あっちで読み聞かせして。」
よく見れば、子供たちが椿を囲んでいた。いつものことである。そして、…。
「皆さん、何しているんですか?先生たちの邪魔をしてはいけませんよ。病室へ戻ってください。」
我らが救世主、看護師長のお出ましだ。これもまたいつものことである。
怒られた看護師と患者、子供たちは残念そうにその場を離れた。
「ありがとうございます。助かりました。」
「いえ。それにしても懲りないですね。同じことを何度やれば気が済むのか。子供ならまだしも、大人があんな風にするなんて。」
看護師長は去っていくみんなの後ろ姿を見ながら言った。
「まぁ、気持ちは嬉しいんですけどね。僕らも仕事があるからずっと構ってはいられないだけで。」
「そうですね。でも、嫌な時ははっきり言ってください。特に、天ヶ瀬先生は。」
「はい、気をつけます。」
俺は名指しを喰らったので、反省の意を込めて頭を下げた。
「それじゃあ、天ヶ瀬先生は外科のカンファレンスが始まるので3Bの部屋に向かってください。七国先生はこの後子供たちの診療をするので準備お願いします。」
「分かりました。すぐに向かいます。じゃあな、椿。またお昼に。」
「おぅ、時雨はプレゼン頑張れよ。」
2人は背を向けて歩き出した。少し遠くから誰かが見ているとも知らずに。




