3、悪魔に捧げる天秤
「誰だ、君は。」
「俺は悪魔だ。人間を生かすも殺すも俺の自由。お前たちの罪と命を天秤にかけてやろう。」
「悪魔?それなら早く殺してくれ。僕はもう思い残すことはない。」
「本当にそうか?お前になくても、女の方は何か言いたいことがあるんじゃないか。そうだよな、関口かれん。」
女は驚いて、顔を上げた。さっきまで出ていた月は雲に隠れ、メルダーの顔には影がかかっている。
「なんで、私の名前を。」
「悪魔だから、お前たちのことなんて何でもお見通しなんだ。それで、関口かれん。お前はこれからどうしたい?こいつに何を伝えたい?お前の罪をどう裁かれたい?」
メルダーを見上げる女の目は、決意が固まっているようだった。
「ここまできたら、2つに1つだと思っています。一緒に生きるか、一緒に死ぬか。」
女は男の顔を見ながら、そう言った。
「俺はどちらでも構わない。なるべく楽しませてくれ。」
女は深呼吸をして、メルダーの目をまっすぐに見た。
「殺してください。私はたくさんの人を騙してきました。みんな私の見た目しか褒めないけど、彼は私の内面を見てくれたんです。お金以上に価値があるものをくれたから、今度は私が彼に捧げないと…」
女はもう一度深く息を吸った。
「だから、彼が死ぬというのなら私も一緒について行きます。私は彼のものなので。」
男はなぜか満足そうな顔をしていた。
「そうか。じゃあ、空いている方の手でしっかり手を繋げ。決して離さないように。」
メルダーがそう言うと、2人は強く手を繋いだ。それを確認すると、メルダーは男の目を見てこう告げた。
「絶対に離すなよ。お前は地獄に行く方がお似合いだ。」
「余計なお世話だ。」
男はそう言って笑った。メルダーも少しだけ微笑んだ。
「じゃあな、関口かれん。来世では幸運を。」
その瞬間、メルダーは同時に手を離した。2人は暗い闇の中へと消えていく。
それをほんの数秒眺めた後、メルダーは立ち上がり車の方へと歩き出した。多少すっきりしない部分はあるが、これで今回の任務は完了である。




