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1、天使の代わりに制裁を




 

 殺すのは、1人のはずだった。それなのになぜこんな状況になっているのか。メルダーは内心焦っていた。






 彼は今、崖の上にいる。彼の左手は女の手を掴み、右手は男の腕を掴んでいた。男と女は、今にも底の見えない暗闇に落ちそうになっている。まさに絶体絶命の状況。その発端は()()分前に遡る。




 13分前。


 メルダーは久しぶりの任務に向かっていた。1人の女を殺せという、何の変哲もない至って普通の任務である。


 メルダーにとって人一人を殺すことは、水道の蛇口を捻るよりも、目覚ましが鳴る前に起きるよりも簡単なことだった。





 山道を運転していると、本部にいるモルスから連絡が入る。


「対象は今、崖の上で男と口論になってるよ。車であと5分ぐらいのところ。」


「了解。」


「対象の女は関口かれん、27歳。アパレルの会社に勤めてる。ひょんなことから会社の秘密を知ってしまったらしい。それで、会社から排除の依頼が来たんだ。」


「ふーん。」


「興味ないかもだけど、一応頭の片隅にだけ入れておいて。その女について調べてみたら、色んな男を騙して金を奪い取っているみたいなんだ。何の罪もないような女じゃない。白か黒かで言えば、完全に黒だ。殺す価値はある。」


「そうか。」


「会社からの報酬は2億円。取り分はメルダー、本部、バルコで4対3対3だ。」


「分かった。」


 電話の向こうでは軽快なアラームが鳴っている。


「じゃあ、頑張って。Executa(エクスクータ).(執行せよ)」


Wie du (ヴィードゥ)willst(ヴィルト).(仰せのままに)」




 お互いに合言葉を交わして、電話を切った。対象の情報は事前に頭に入れているから、恐らく大丈夫だろう。素人の女1人を殺すのは復帰戦にちょうどいいはずだ。とメルダーが考えているうちに目的地に到着した。



 車から降りて辺りを見渡すと、少し遠くに2つの人影が見える。メルダーは気づかれないようにそっと近づいていった。すぐそばの岩陰に隠れると、モルスが言っていた通り男女が言い争っている声が聞こえる。



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