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世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(思いの魔法が紡ぐ未来)「ねぇ、本当に大切なものって、見えると思う?」

作者: 希望の王

この物語は、世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(禁断の理想郷)「貴女こそが、世界の敵です」(完成版)(挿絵80枚以上)の女主人公”結衣”の十五番目の娘”あずは”の物語です。



【あずはの物語:内なる葛藤と静かなる革命】


挿絵(By みてみん)

あずは


アストレア王国の十五番目の王女、あずはは、いつも所在なさげに廊下の隅を歩いていた。きらびやかな装飾が施された王宮の中で、彼女だけが色彩を失ったモノクロームの風景の中にいるようだった。母である結衣女王は、その美貌と強大な幻想魔法で国を治める、誰もが畏敬の念を抱く存在だ。しかし、結衣の体内には、双子の姉であるユイの空間操作能力も宿っていた。時折、その強大な力が制御を離れ、目に見えない世界の均衡を揺るがすことがあった。


あずはには、母のような派手な魔法の才はなかった。彼女が持つのは「思いの魔法」。人の願いや感情が、世界に微かな影響を与えるという、目に見えない、実感の湧かない力だった。魔法学校では、実技の授業で何も起こせないあずはは、嘲笑の的だった。


「本当に王族の血を引いているのかしら?」


挿絵(By みてみん)

あずはと他の生徒

陰口は耳に届き、あずはの心を深く傷つけた。華やかな姉たちの隣に立つと、自分の存在がひどく霞んで見えた。


結衣女王も、娘の不遇を嘆いていた。他の娘たちは皆、それぞれの才能を開花させ、国のために貢献している。だが、あずはだけが、まるで透明な存在のように、周囲の視線から抜け落ちてしまう。結衣は、娘の秘めたる力に気づきながらも、その扱い方に戸惑っていた。


「私の魔法は、一体何のためにあるのだろう…」


夜の自室で、あずはは何度もそう自問自答した。窓の外には、星々が宝石のように瞬いている。その遠い光を見つめていると、自分の存在の小ささに押しつぶされそうになった。そんな時、夢の中でいつも語り掛けてくる亡くなった祖母の言葉が、かすかに蘇ってくるのだった。


挿絵(By みてみん)

あずは


「あずは、お前の持つ力は、目には見えぬけれど、世界の根底を支える、誰にも気づかれぬほど強い力なのだよ」


その言葉だけが、あずはの心の奥底に残る、小さな灯火だった。


ある日、アストレア王国を未曽有の危機が襲った。結衣女王の中で眠るユイの空間魔法が、まるで暴れ狂う獣のように制御不能に陥ったのだ。空は黒い亀裂に覆われ、大地は脈打つように歪み始めた。各地で竜巻が発生し、降り注ぐ雨は鉄のように冷たい。大陸が裂け、隕石が流れ星のように地上へ落下していく。人々は、強大な力を持つ結衣女王に助けを求めたが、彼女自身もまた、暴走する姉の強大な力に抗うことができず、苦悶の表情を浮かべるばかりだった。


「お母様!」


あずはは、苦しむ母の姿を見て、いてもたってもいられなかった。姉たちの強力な魔法も、この予測不能な空間の歪みには全く通用しない。魔法学校の教師たちも、原因不明の事態にただ右往左往するばかりだった。


その混乱の中で、あずはは、人々の間に渦巻く感情に気づいた。恐怖、絶望、そして怒り。世界が終わってしまうのではないかという極度の不安が、見えない波のように広がっていた。その負の感情の奔流こそが、空間の歪みをさらに悪化させているのではないか――あずはは、そう直感した。


「私の魔法は、攻撃には使えないけれど…」


あずはは、震える手で自分の胸を押さえた。自分にできることは、ただ一つ。人々の心に、小さな希望の光を灯すことだけだ。彼女は、王宮の庭に立ち、深呼吸をした。そして、心の中で強く念じた。


「どうか、世界が元に戻りますように。どうか、人々の心に安らぎが訪れますように」と。


目に見える変化は何も起こらなかった。空の亀裂は依然として広がり、大地の揺れも収まらない。周囲の人間たちは、あずはの無力さを嘲笑った。


「こんな時に、一体何をしているんだ、役立たずの王女!」


しかし、あずはは諦めなかった。彼女は一人一人に語りかけた。絶望に打ちひしがれる兵士に、「まだ終わりじゃない」と囁き、泣きじゃくる子供の手を握り、「きっと大丈夫だよ」と優しく声をかけた。彼女の言葉には、特別な力などなかった。ただ、ひたむきな願いが込められていた。


すると、どうだろうか。最初はごくわずかな変化だった。恐怖に支配されていた人々の心に、ほんの小さな希望の灯がともり始めたのだ。それは、嵐の海に浮かぶ小さな灯台のように、頼りないけれど、確かにそこに存在していた。人々の心に希望が芽生え始めると、不思議なことに、世界の歪みがほんの少しずつ、だが確実に収まり始めたのだ。


「ああ…空が、少し明るくなった…?」


誰かが呟いた。それは、信じられないような光景だった。人々の「元に戻ってほしい」という静かな願いが、あずはの「思いの魔法」を通して、世界の法則に微かな影響を与え始めたのだ。それは、直接的な力ではない。だが、人々の信じる心が集まることで、まるで静かなる潮流のように、世界を穏やかに押し戻していく力だった。


挿絵(By みてみん)

あずは


激しかった空間の歪みは、数日後、完全に消え去った。空には再び青色が広がり、大地は静かに息づいている。アストレア王国は、未曽有の危機を乗り越えたのだ。


しかし、あずはの活躍は、決して派手なものではなかった。彼女が何をしたのか、多くの人々は気づいていない。結衣女王は、疲労困憊の娘を優しく抱きしめた。


「あずは…お前は、本当に強い子だ」


初めて心からの言葉で褒めた。


国民の間に、静かな変化が起こり始めていた。目に見える力だけが全てではない。あずは王女が、あの混乱の中で、人々に希望を与え、世界を救ったのだという噂が、 धीरे धीरे 広がり始めた。彼女を見る目は、以前のような嘲笑や疑問ではなく、微かな敬意と感謝の念を帯び始めていた。


あずはは、相変わらず目立たない存在だった。しかし、彼女の心には、確かな光が灯っていた。派手な魔法は使えなくても、人々の心に寄り添い、その思いを力に変えることができる。それは、誰にも気づかれないけれど、世界を根底から支える、かけがえのない力なのだと。あずはは、その静かな力を胸に、いつか、この国の人々の心の声に耳を傾ける女王になることを、静かに決意するのだった。


挿絵(By みてみん)

あずは

①結衣(母)の世界の法則を司る魔法:幻想魔法。(輪廻転生や人形化の魔法など)


②ユイ(母の姉)の世界の存在を司る魔法:空間操作能力魔法(世界そのものや大陸や惑星を操る能力)


③あずは(結衣の娘)の世界の運命を司る魔法:思いの魔法。(人の思いの具現化。人の人生を決める。世界の物理現象を決める。直接的な攻撃力はないが、世界に存在する魔法の中で、最強。自分の理想の未来をつくることができる。初代能力者は、結衣の母であり、あずはにとっての祖母である、なぎさ。) 

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