ep.85 文化祭の準備 ⑤
衣装作りを担当しているユリアは、ヨミ達が買ってきてくれた材料を手に、メイド服を作っていた(日にちを分けてヨミ達は買い出しに出ている)。
「ユリアちゃ〜ん、ここってどうすればいいの〜」
「あ、ここはですね。ここをこうして……こうすれば大丈夫ですよ」
「あ、なるほど! ありがとう!」
「いえ、どういたしまして」
「ユリアさん、この裾の部分ってどうすればいいのかな?」
「ここはこうしてみても……うん。この感じでいきましょう」
「お、サンキュー」
ユリアは男女ともに分け隔てなく仲良くなっており、衣装作りのリーダーとして、みんなを引っ張っていた。
このメイド喫茶、女子だけがメイド服を着るのではなく、男子もメイド服を着ることになっているので、着る人のサイズに合わせて作っているのでかなり時間がかかる。
その為、元々の衣装作り担当の人数より、大幅に人数を増やして作業をしていた。
「皆さん、一度休憩にしましょう。あまり根を詰めていては、集中力が続きませんから」
『は〜い』
ユリアがそう言うと、皆は素直に聞き入れ、休憩を取り始めた。
皆が休憩を取っている中、ユリアだけは教室に残り、作業をしていた。
ものすごいニヤケ顔で。
「ふへへ〜♡ これをヨミさんが着て接客……考えただけで顔が蕩けちゃいますよ〜♡」
どうやらユリアはヨミのメイド服を作っているらしく、メイド服を着たヨミを想像して破顔しているようだ。
ちなみに、ヨミ自身は当日、メイド服を着ることを知らない。
知っているのはユリア、エルナ、アイア、ミャナ、そしてクラスのみんなだけだ。
ヨミには極秘事項なので、ここ最近のユリアは、全くと言っていいほどヨミと一緒に過ごせてなかった。
「今は辛抱です……! この服を着た素敵なヨミさんを見るために……!」
心を鬼にしてユリアは、ヨミのメイド服作りに集中した。




