ep.83 文化祭の準備 ③
武具屋にやって来た二人。
中に入ったエルナは、目をキラキラと輝かせていた。
「そういえばエルナさん、先生から借りていた剣ってどうしたんですか?」
「あ〜あれね、先生に返したの」
「そうなんですか?」
「うん。雷術で短剣を生み出せるようになったし、ずっと借りっぱってのもなんか嫌でさ」
「なるほど」
「でもね〜。やっぱり短剣だけじゃなくて普通の剣も使いたいんだよね……だから、こうして武具屋を見ると無意識に目が行っちゃうんだ」
「だからあんなに熱心に見ていたんですね」
「うん……ごめんね……? 未練がましい女で……」
「いえ、全然。それだけエルナさんが剣を愛していると言うことですから。全く気にしないでください」
「ヨミ……ありがとう……!」
エルナは、剣を楽しそうに見ていく。
まるで、おもちゃを見つめる子供のように。
「何か気になったのありました?」
「う〜ん……これとかいいなぁって思った。切れ味も良さそうだし、魔術の負荷にもなんなく耐えれそう」
エルナは、剣先が細いタイプの剣を選んだ。
その剣を見つめる表情は、子供のように無邪気で、それでいて真剣そのものだった。
「それじゃあ」
「え……?」
「すみません、これください」
「あいよ」
「ふぇえ!?」
ヨミは、剣をエルナから取って、お会計に向かってしまった。
「ちょ、ちょちょちょちょちょちょヨミ!? な、なんで……!?」
「日頃のお礼です。いつも、エルナさんには助けてもらってお世話になってますから」
「そ、それを言うなら私だって……ってか、そんな高いのもらう訳にはいかないよぉ!」
「いえ。もらってください。じゃないと、僕が困ります」
「な、なんで……」
「いつも助けてもらってる大事な人に、お礼もできない最低な男だと、落ち込みます」
「ず、ずるいよその言い方……そんなの、もらうしかないんじゃん……」
「はい♪ だからもらってください♪」
ヨミは剣を購入し、店を出てエルナに渡した。
「あ、ありがとう……! 一生大切にするから!」
「はい♪ じゃあ、買い出しに戻りましょうか」
「う、うん……!」
エルナはヨミの隣に並び、歩き始める。
「…………………」
エルナは隣を歩くヨミの顔を見て、全身が熱くなるのを感じた。
(私、ヨミの事、もっと好きになってる……)
元よりヨミの事が大好きだったエルナだったが、今回の事をキッカケに、これまで以上に好きになってしまっているらしい。
それを自覚したエルナは、これまでとは考えられないくらいにしどろもどろになったりするようになる。
それをこの時のエルナは、まだ知らなかった。




