ep.80 決着
「風術、竜巻!」
「水術、泡弾!」
メチャとジャクに術をぶつける二人。
すると、メチャとジャクはその術を受け気絶してしまった。
「た、倒せちゃいました……?」
「ひょ、拍子抜けですね……こんなにもあっさりと倒れるとは……」
二人も、ここまで簡単に倒せるとは思ってなかったようで驚いた様子を見せている。
「ど、どうしますか……? お二人に加勢とか……」
「いえ。あそこに私達が加わっても足手まといにしかなりません。今はヨミ様の元に向かい、安全を確保しましょう」
「は、はい!」
そう言って二人は、ヨミの元へと向かった。
この場に残されたのは、様子のおかしいワーイとボロボロのエルナとミャナの三人。
「「はぁはぁ……」」
「邪魔は……させ、ない……」
「赤髪」
「何?」
「この間のあの技を使う。時間を稼いで」
「分かった。どのくらいあればいい?」
「一分……ううん、三十秒あればいい」
「分かった。任せなさい!」
エルナがワーイに向かっていく。
「ふぅ〜……」
エルナがワーイの元に向かっている間に、ミャナは集中する。
ヨミの力を使うには、相当の集中力が必要になるらしく、ミャナは瞳を閉じて、両手で剣の柄を握り、前に構える。
そして、深く深呼吸をする。
すると、ミャナの体に銀色の光りが集まってくる。
「ハァ! ハッ! フッ! ハァ!」
「ぐっ……! くっ……!」
エルナはミャナが集中している間、ワーイに邪魔をさせないよう雷の短剣で連続攻撃をしている。
先程よりも威力が強いのか、ワーイはその攻撃を防ぐ事しかできていなかった。
そして、三十秒が経ち──、
「赤髪!」
「フッ!」
ミャナが叫ぶと、エルナは側転をして真横に移動する。
ワーイの姿をその目に捉えたミャナは、剣を一度鞘に収め──、
「剣技術・刀舞剣乱/ER式!」
「っ!?」
目にも留まらぬ速さで移動し、ワーイを斬った。
ミャナが振り終えた剣を鞘に収めると、一枚の桜の花びらのような物が舞った。
「はぁはぁ……このやり方なら、扱いやすいかもしれない……」
ミャナは、最初に使った時と技の使用方法を変えていた。
斬る時に一度鞘に収めたり、斬り終えた後に、すぐに敵が倒れるのではなく、鞘に収めてから倒れるようにしたり。
「はぁはぁ……でも、この疲労感は軽減されない、か……」
ミャナはその場に倒れてしまった。
「ミャナ!?」
そんなミャナに駆け寄るエルナ。
ミャナの後ろでは、ワーイが気を失い倒れている。
「これ、どうしよう……」
エルナが考えていると──、
「私がなんとかしてあげましょうか?」
「え……?」
突如として、女性の声が聞こえてきた。
エルナが顔を上げ、声のする方を見ると、そこには──、
「あなたは……?」
「私はグリエ・チャーム。この学園の校長の古い知り合いよ」
「は、はぁ……」
薄い緑色のドレスを身に纏った女性──グリエ・チャームが立っていた。
「あなたが今悩んでるのは、そこに倒れてる男をどうしようかって事でしょう?」
「は、はい……」
「その男、私が運んであげるわ」
「い、いいんですか?」
「えぇ。困ってる子供に手を差し伸べるのが、大人の役目でしょう?」
「あ、ありがとうございます……じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「えぇ。任せなさい。あなたはその子を早く医務室に連れて行ってあげなさい」
「は、はい!」
「じゃあね」
グリエは、軽々とワーイを抱きかかえ、去っていった。
そんなグリエの後ろ姿を見つめながら、エルナは──、
(な、なんだったの……? なんの気配もなく突然現れたけど……あのジジイの知り合い……胡散臭い……。ってか、胸とケツデカっ! 歩く度にブルンブルン揺れて、あんなの反則級だろ……ドレスの裾もスリットが入ってて見えそうでドキドキするし……あんなの、ヨミとは会わせられない)
と、思っていた。
☆ ♡ ☆
気を失ったミャナを連れ、医務室にやって来たエルナ。
そこにはユリアとアイアもいた。
「あれ、二人とも」
「エルナさん! みゃ、ミャナさんは!?」
「大丈夫。強力な技を使って気を失っただけだから」
「そ、そうですか……よかった〜……」
「で? 二人は何してんの? ヨミのところに行ったんじゃ?」
「ヨミ様の無事を確認した後、中に入るのに鍵が必要なのに気がついて、リエ先生にもらいに来たのですが……」
「いないの?」
「えぇ」
医務室の中に、リエが普段使用している机と椅子が置いてある。しかし、そこにはリエの姿は見当たらない。
と──、
「皆さん、どうしたんですか?」
三人の後ろから、リエが声をかけてきた。
「どうしたんですかじゃありませんよ。ヨミ様の病室の鍵をいただきたかったのですが」
「あ〜! ごめんなさい……!? すっかり失念していました!?」
「「おいおい……」」
小声でツッコミを入れるエルナとアイア。そんな中、ユリアは──、
「先生? 汗かいてますけど、大丈夫ですか?」
「え!?」
そう指摘されたリエは、額の汗を慌てて手で拭い始める。
そして、ちょっと上ずった声で──、
「だ、大丈夫よ! 心配しないで!」
と、答えた。
「「「……………?」」」
そんなリエの様子に、少し違和感を覚える三人だった。
この話数で【冒険者達との戦い】は終了となります!
次話から新たなタイトルになりますので、楽しみにしていてください!




