ep.79 駆けつける仲間!
「行くわよ、クソッタレぇ!!! ハァァァァァァァァ!!!」
エルナが雷の短剣を持ち、ワーイに向かって走り出す。
「雷魔法・ショックヘル!」
「効かない!」
ワーイが放つ雷を、エルナは二本の短剣で吸収しながら弾いていく。
そして、ワーイとの距離をどんどん近づけたエルナ。
短剣を振りかぶり──、
「オーラァ!」
「ぐっ……!? くあ……!?」
ワーイの体を斬りつける。
ワーイは、斬られた痛みより、斬りつけられた時の衝撃で後方に吹き飛び苦痛の声を漏らした。
「まだまだぁ! ハァァァァァ……ぐがっ!?」
吹き飛ぶワーイに追い打ちをかけようとしたエルナだったが、突如、真横から稲妻が飛んできて真横に吹き飛んでしまった。
「な、何……!?」
「雷魔法・ショックスロー」
壁にぶつかり止まったワーイは、ゆっくりと魔法の名前を呟く。
それを見たアイアが小さく呟く。
「なるほど……稲妻の発生する時間を操り、隙が生じたタイミングで放った……と言う訳ですか……」
「そんなの有りかよ……でも、負けない……! ヨミの為に!」
なんとか立ち上がろうとするエルナに、再びワーイが──、
「雷魔法・ショックヘル!」
雷魔法を放った。
地面と空。
両方から雷がエルナに迫る。
「エルナぁ!」
アイアが叫んだ。その時──、
「剣技・柱刀!」
「水術、幕の泡!」
「「っ!?」」
二人が声のした方を見ると、そこにはミャナとユリアが立っており、エルナを守る為に魔術を使っていた。
ミャナが剣技で、剣を地面に突き刺し、地面を流れる雷を引き付け吸収。
空から迫る雷は、ユリアがオーロラのように泡を展開し、吸収した。
「エルナさん! アイアさん! お待たせしました!」
「遅れた!」
「ったく。本当遅いわ」
「来てくださり、ありがとうございます」
ユリアとミャナの元に、アイアとエルナが駆け寄る。
「エルナさん……すでにこんなにボロボロになって……」
「こんなのどうって事ないわ。全然平気」
「強がるな」
「イデっ!?」
ミャナがエルナの肩を軽く突くと、エルナは全身を震わせ痛みに耐えた。
「何すんのよ!」
「待たせてごめん。ここからは挽回する」
「……………………えぇ。頼んだ」
「私達はどうすれば?」
「あそこにいるジャクさんとメチャさんは、ヨミ様を狙っています。今はまだ目立った動きはないですが、いつ何をするかわかりません」
「あいつらに近づきたいんだけど、障害になってるのがいるの」
「あいつか」
「うん」
全員でワーイを見る。
何故か剣を持たず、呆然とこちらを見てきている。
その様子は、誰が見てもおかしいと分かる。
「じゃあ、あいつは私と赤髪が相手する。二人は向こうを」
「そうね。それが最善ね」
「わ、分かりました! 私頑張ります!」
「お二人とも、決して無理はなさらないでくださいね」
「「うん」」
エルナとッミャナが前に出て、ワーイと対峙する。
アイアとユリアの二人は数歩後ろに下がる。
「行くよ、ミャナ!」
「えぇ!」
二人が疾駆する。
敵が二人に増えたと言うのに、全く動揺したりしないワーイ。
そんなワーイは、二人目掛けて魔法を放つ。
この攻撃、エルナ一人だったら回避したりはできなかっただろう。
しかし、今は一人ではなく、ミャナがいる。
「剣技・散刀!」
ミャナが体を回転させ、上空から迫ってくる雷を全て剣に吸収していく。いや、散らしていっていると言った方が正しいか。
(悔しいけどこの技、すごい……!)
隣で疾駆しながら、エルナは素直にミャナの技のすごさに驚いていた。
「でも、私も負けない!」
エルナは、雷の短剣を二本生み出し逆手持ちにし、ワーイに斬りかかる。
「ハァァァァァァ!」
そのエルナの攻撃を雷魔法で弾いていくワーイ。そんな魔法には負けないと攻め続けるエルナ。
ワーイが放つ遠隔の雷魔法を、エルナに近づかせないように散らし続けるミャナ。
その攻防を見たユリアとアイアは──、
「す、すごい……」
「えぇ……悔しいですが、今の私ではあそこに加わる事はできません……」
「アイアさん……」
「ですが、今は悔いてる時間はありません。あの二人のおかげで、向こうに行く隙ができました」
「あ……確かに」
「警戒をしつつ、向かいましょう」
「は、はい!」
エルナ、ミャナの二人のおかげで、ジャクとメチャの元に行く隙が生まれた。
その隙を逃さないように、二人は油断なく三人の戦いを見つめる。
そして──、
「今です! 行きますよ!」
「はい!」
二人は、走り出した。




