ep.77 動き出す奴ら
エルナ達が、マエオ達と戦ってから一週間が経った。
ヨミは未だ目を覚ましていない。
エルナとアイアは強くなるために互いに高め合い、ミャナはリエに相談しながら個人で特訓を続けていた。
ユリアはこの一週間、姉であるミリアと共に書庫で調べ物をしたり、ヨミの元へお見舞いに行ったりしていた。
この一週間は、特に変わった事はなく、ヨミが目覚めないと言う事以外、平和な時間だった。
しかし、その平和は突然終わりを告げる。
「キャッ!?」
「どうしたんですか!?」
突如、隔離棟の方から保健医が廊下に飛び出してきた。保健医は床に倒れ込んでしまう。
そこにリエがたまたま居合わせ、状況を尋ねる。
と、倒れた保健医の視線の先に──、
「あなたは……メチャさん!? 目が覚めんたんですか!?」
そこにいたのは、【雷撃の閃光】の一員であるメチャ・ヤコザだった。
メチャとジャクの二人は、昏迷状態で寝たきりだったはず。
それなのに、そのメチャが目の前に立っていた。
「メチャさん、大丈夫ですか? お体の調子は──キャッ!?」
リエがメチャに近づくと、メチャはリエを突き飛ばした。
リエがメチャを見上げると、メチャの目は虚ろで、何かを小さく呟いていた。
その呟いに耳を澄ますリエ。
「殺す……殺す……ヨミ・アーバント、殺す……」
「はっ!?」
メチャの呟き。それは、リエにとっては聞き捨てならないものだった。
メチャは、そう呟きながら、フラフラとノロノロとした歩みで進んでいった。
「皆さんに、急いで伝えなくては……!」
リエは保健医を別の保健医に任せ、走り出した。
☆ ♡ ☆
リエの元にメチャが現れた頃、エルナとアイアの元に──、
「殺す……殺す……ヨミ・アーバント、殺す……」
「エルナ、あれって……!」
「あのキザ野郎のチームメイト、ジャク!? 目を覚ましたの!?」
【雷撃の閃光】の一員、ジャク・ジャクが虚ろな様子で歩いていた。
「なんか、様子がおかしい……?」
「歩き方がおかしいですね。まるで、酔っ払っているみたいに」
二人はジャクの方を、不思議に思いながら見つめている。と、そこにリエが慌てた様子でやって来た。
「エルナさん! トーリさん!」
「「リエ先生?」」
乱れた呼吸を整えたリエは、必死な表情で二人に訴えた。
「大変なんです! メチャさんが目を覚ましたんですけど、小声でヨミさんを『殺す』って言ってて……!」
「「っ!?」」
「そ、それ本当ですか!?」
「はい……!」
「さっき、ジャクもあそこを歩いてた……もしかして、あいつもヨミを狙ってる……!?」
「あっちに向かっているとすると……あっちにはヨミさんがいる棟があります……」
「かなりマズイですね……ユリアさん、ミャナさんに声をかけて、急いで向かいましょう!」
「「うん(はい)!」」
どう動くかを決めた三人。
「お二人は私が呼んできます! もし仮に戦闘になった場合、私じゃ足手まといですから」
「分かりました。ではお願いします。エルナ、行きますよ!」
「えぇ! ヨミに手出しはさせない!」
そう言って、リエはユリアとミャナの二人を呼びに、エルナとアイアの二人はヨミの元へと向かった。
☆ ♡ ☆
エルナ達がジャク達の動きに気づき、行動を開始した時。
学園のとある一室の窓から、その様子を眺める人物がいた。
「おやおや。気がつくのが早いですね。それに、もう一人は動かない……。記憶を失っているんでしたっけ。やれやれ、全くもって面倒ですね。ですが、仕方ありません。洗脳を施し、動いてもらいましょう」
その人物とは、学園の校長、グルス・ヴォルアだった。
グルスは不敵な笑みを浮かべながら、椅子に座り、背もたれに体重をかけ──、
「ヨミ・アーバントを殺してもらう為に」
と、呟いた。




