ep.74 ミャナの思い
皆がそれぞれ、休息を取るため解散した数時間後。
もう時刻は夜を回っていた。
「……………………」
休憩スペースのソファで寝ていたミャナが目を覚ました。
そして、そのままヨミが眠るベッドが見える窓の前に行く。
「ヨミ君……」
窓に手を付け、眠るヨミを見つめる。
ヨミは、少し苦しそうな表情を浮かべながら眠っている。
「あの力は、君の力なんだよね……? なんで、私に与えてくれたの……?」
ミャナは窓越しに語りかける。
窓に付ける手、声は小さく震えていた。
「私は、君の力をもらう資格があるのかな……? 肝心な時に側にいなくて、守る事もできない……強くなるって言ってる割には全然強くなれない……そんな私に、ヨミ君の力をもらう……側にいる資格なんて、あるのかな……」
ミャナは大粒の涙をこぼしながら、その場にへたり込んでしまう。
「ぐす……この剣……この剣で私は、ヨミ君を傷つけた……怪我をさせた……危険な目に遭わせた……そんな私に、側にいる資格なんて、ないよね……」
ミャナは剣を放り投げ、両手で顔を覆い号泣し始める。
「私はぁ……! これから……! どうすれば……!」
ミャナはヨミ以外に心を本当の意味では開いていない。
故に、ユリア、エルナ、アイアに心の内に秘める思いを告げられないのだろう。
だから、こうして苦しんでいる。
ヨミの力だって、本当は嬉しい。でも、心の奥底ではどうして自分が? とも思っている。
嬉しさの中に戸惑いや恐怖があり、ミャナは今、悩んでいる。
どうすればいいのかと。
そんなミャナに、救いの手を伸ばす人がいた。
「シーズさん。私で良ければ、話、聞きますよ?」
「せ、先生……」
ミャナが顔を上げると、そこにはミャナが投げた剣を持ち、右手を差し出しているリエがいた。
「私じゃ、まだ信用ならないと思いますし、ヨミさんほど話しやすくないかもしれません。ですが、私は、困ってる人の力になりたい。だから、少しでもいいんです。私に話してみてはくれませんか?」
リエは、ミャナに優しく声をかける。
その優しさにミャナは──、
「ありがとうございます……じゃあ、ちょっとだけ、いいですか……?」
「もちろんです。では、こっちに」
「はい」
リエの手を取り、立ち上がるミャナ。
リエに手を引かれ医務室の中へと入っていく。
この後、ミャナの話は数時間に及んだ。
それを、リエはしっかりと聞いてくれていた。




