ep.6 クラス対抗クエスト
ヨミとアイアが試合を行い、勝敗がついた少し後。
学園の校長室で──、
「あれが、ヨミ・アーバント。…………邪魔、だな。早急に排除する必要がある。 ”デストドラゴンに襲わせたが” それで駄目なら……フッ」
校長室にいた男性が、窓の外を眺めながら口許を綻ばせた。その表情は、何かを企んでいるようだった。
その視線の先には、ヨミがいた。
☆ ♡ ☆
ヨミとアイアの試合が終わった、その日の夜。
ヨミ達は三人で、部屋でのんびりしていた。すると──、
「ん? はい、どうぞ」
ドアがノックされたので、ヨミは入室を許可する。と、ドアを開けたのはミリアだった。
「夜分にすまないな」
「いえ。どうしたんですか?」
「あぁ。この方がお前と話したいと言ってな」
ミリアがそう言い、右に避けるとそこには、白髪の男性が立っていた。その後ろには長髪で茶髪のガタイのいい男が立っている。
「えっと……」
ヨミ達は、誰なのかが分かっていないらしく首を傾げている。
「突然の訪問、すまないね。私はこの学園の校長、グルス・ヴォルア。そして、後ろにいるのは教頭のゴーザ・ヴァイル。ゴーザ共々これからよろしくね」
「は、はい! すみません! まさか校長先生と教頭先生だったとは!?」
「いいんだよ。気にしないで」
ヨミが慌てて謝罪すると、グルスが鷹揚にかぶりを振る。
ヨミの部屋にやって来たのは、泉霞叡術魔術学園の校長だった。
白髪で、白髭を生やし、一見六十代以上に見えるが、実際は五十代半ばと、若かった。
その後ろに控える教頭のゴーザは、グルスよりも若く、三十代半ば。髪は茶髪で、腰まで届くくらいの長髪だった。
体はかなり鍛えているのだろう、筋骨隆々と言う言葉がピッタリな肉体をしていた。
「それで? そんな偉い人達がこんな時間になんの用なのよ?」
エルナは不機嫌そうに尋ねた。おそらく、ヨミとの時間を邪魔されたのが気に食わないのだろう。
「いや、少しね。入学式を無断欠席した方達と会ってみたいなと思いましてね」
「「「っ!?」」」
ヨミ達は、グルスのその言葉を聞いた途端、バツが悪そうに下を俯いた。
「はっはは。そう気にしなさんな。事情は聞いてるよ。デストドラゴンに襲われたんだってね。無事で良かったよ。ね、ゴーザ」
「は、はい……」
グルスは鷹揚に笑い、ヨミ達の無事を喜ぶ。が、最後のゴーザを見やる時の表情、声音は聞く者に恐怖を抱かせるようなものだった。
「…………」
そのグルスの声に、ヨミ、ユリア、エルナ、ミリアも怯んでしまっていた。
「あ、あの……」
そんな沈黙を破ったのはヨミだった。
「何かな?」
グルスが笑みを浮かべてヨミに尋ねる。だがその笑みは、どこか不敵さを秘めているようにも見えて……。
「来てくださったのはすごく嬉しいんですが、明日にそろそろ響きそうな時間でして……」
ヨミが壁にかかっている時計を見やりながら言う。
「あ、すまないね。ではそろそろお暇するとしようか。行くぞ、ゴーザ」
「はい」
グルスはゴーザに呼びかけ、部屋を後にする。その後ろをゴーザが付いて行くが──、
(ふっ。ユリア・ヴァージン。やはりいい女だ。必ず俺のモノに)
「っ…………!?」
ゴーザは部屋を去る前、ユリアを見やり、品定めするかのようにユリアの体を見回した。
その視線に気がついたユリアは小さく体を震わせる。
去っていった二人を見て、エルナが──、
「あの教頭、ユリアをエロい目で見てやがった。許せない」
エルナは憤りを抱いていた。
「ユリアをエロい目で見ていいのは、ヨミだけなのにね」
「そうです」
「へっ!? な、何言ってるの二人共!?」
エルナとユリアが、揃ってそんな事を言うもので、ヨミは思わずたじろいでしまった。
☆ ♡ ☆
そしてその翌日。
ヨミ達は自分達のクラスで、席に着いていた。
「今日は、特別授業だ」
『特別授業?』
ミリアの言った特別授業と言う言葉に、教室内の生徒達が首を傾げる。
「あぁ。今日は、五人の班を作り、学園の外の『魔物の森』に向かってもらう。そして、学園に戻ってくるまでのタイムを競ってもらう。これは、仲間との絆やチームプレイができるか、団結して動けるかを見る授業になっている」
ミリアの言葉に、生徒達はざわつき始める。
それもそのはずだ。
『魔物の森』とは、学園から三キロ先にある危険な森で、その名の通り、魔物が沢山生息していると言われている場所だからだ。
しかも、三キロも離れている為、戻ってくるのに早くても一週間はかかる。しかも、五人で行動しなければいけないと言う事もあり、さらに遅くなる可能性もある。
そういう色んな要素があり、生徒達はざわついていると言うわけだ。
「静かに。危険な魔物は事前に我々が始末してある。それに、安全なルートを用意してあるから、それに沿って動けば大丈夫だ」
「はい、先生」
「どうした?」
一人の生徒が挙手し、立ち上がる。
「五人一組の班は、どうやって決めるんですか?」
「あぁ、それは事前にこっちで勝手に組んでおいた」
『…………』
ミリアの答えを聞いた瞬間、ユリア、エルナ、アイアの三人が緊張した面持ちを浮かべていた。三人とも、ヨミと一緒の班になりたいらしい。
「それでは、外に出ろ。そこで班を発表する」
外に出たヨミ達。ミリアの指示を受け、班ごとに並ぶ。果たしてユリア達は──、
「やりましたわーーーーー! ヨミ様と同じ班になれましたわーーーーー!」
「ヨミと一緒、よっしっ!!!」
「ヨミさん! よろしくお願いします!」
「うん。お願いします」
ユリア達は全員、ヨミと一緒の班になる事ができた。三人は喜び過ぎなくらい、喜んでいた。
「ふん」
そんな四人を遠くから見つめる、一人の男子生徒が。
「それでは各自、スタート地点へと送る。…………無事を願う」
「ん?」
ヨミ達は、転移術で学園から三キロ離れた『魔物の森』へと転移した。
しかし、ヨミはミリアの最後の言葉と表情が少し気になっていた。
ヨミ達が転移した後。
園庭に残されたミリアの元に──、
「よくやってくれました、ミリア。邪魔な存在を消すための特別授業、ですからね」
「くっ……!」
ミリアの後ろに突然、グルスが現れた。グルスの顔は、何かを企んでいるようだった。
好きな人と同じ班になりたいと願い、なれた時は大袈裟なくらい喜んでしまう。
皆さんにも経験があるのではないでしょうか?
班行動の時は好きな子の事しか見えない……。みたいな事、ありませんでしたか?
そういう思い出を少しでも思い出せてもらえたら、嬉しいです♪
この続きは、2/2の日曜日に投稿します!
楽しみに待っていてください♪
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