ep.63 失う大切な存在
事件が起きたのは、俺がお祖父様から話を聞いた翌日だった。
『母様!?』
突如として、母様が倒れた。
命に別状はないらしいが、ずっと意識を失ったままとなってしまった。
医師が言うには、二度と目を覚ます事はないだろうとの事だった。
『これも、犠牲、なのか……』
俺の隣で声を震わせながら呟くお祖父様。
ふと、お祖父様の表情が気になってお祖父様の顔を見てみると──、
『っ!?』
そこには、今まで見たこともないくらいに怖い顔をしたお祖父様がいた。
その目には、憎悪が宿っているような気がした。
まぁ、当時の俺は幼かったから憎悪なんて分からなかったが。
母様が倒れてからお祖父様は変わってしまった。
ずっと部屋に閉じこもり、たまに出てきたと思ったら、本屋に書物を買いに行くだけ。
食事もほとんど摂らなくなり、誰とも会話をしなくなった。
『お、お祖父様……?』
俺は何度もお祖父様の部屋を尋ねた。しかし、門前払いを食らうだけで、会うことはできなかった。
『今だ』
お祖父様が本を買いに行った。
俺はその隙にお祖父様の部屋に入った。
お祖父様が何を調べているのか、何を考えてるのか。
それが知りたくて入ってしまった。しかし、それが間違いだったのかもしれない。
『こ、これ……』
お祖父様の机の上には、沢山の本が積まれていた。
それも全て、呪いや儀式や歴史、伝統などについての本ばっかりだった。
『しかも、存在してはいけない生命体に関する内容のものばっかり……「存在してはいけない生命体」か……。それは一体なんなんだ……?』
俺は、本を読み漁った。
お祖父様が帰って来る前に少しでも情報を得ておきたい。そう思って。
そして、見つけた。
『っ……これって名前……?』
『見たのか』
『っ!? お、お祖父様……!? ご、ごめんなさい……勝手に……』
『いい』
お祖父様は買ってきた本を机に置き、椅子に座る。
『お前はどう思う?』
『え……? ど、どう、とは……?』
『お前の父を殺し、母を生きたまま眠らせた犯人をどう思うか、と聞いてるんだ』
『っ!?』
『そこに書かれてる名前は、この世に存在してはいけない生命体の名前だ。そいつがこの世に誕生してしまったからグーリャもお前の母も犠牲になった。お前はそれでも何も思わないのか?』
『っ……! こいつのせいで、父様と母様が……!』
俺が持っている本に、その名前が記されている。
『私は、必ずその人物を見つけ出し排除する。それが私の生きる理由だ。グート。お前はどうだ?』
『僕は……』
即答できなかった俺。そんな俺を見てお祖父様は──、
『お前には失望したよ。自分の両親が犠牲になっていながら、何も行動を起こさないとは。もういい。二度と私の前に姿を見せるな。そして、二度と口を利くな。分かったな』
『ま、待ってください……!?』
『出てけ!!!』
『っ!?』
こうして、俺はお祖父様からの信頼を失い、二度と会話をする事もなく、会う事もなく、成長し家を出ることとなった。
父様を失い、母様を失い、尊敬していたお祖父様から見限られた。
それもこれも全て、本に記されていた人物のせいだ。
俺は、決めた。必ずこの人物を殺し、復讐すると。
そして、お祖父様に認めてもらうと!
『待っていろ! ヨミ・アーバント!』
グートの過去が明らかになりました!
なぜグートの両親が犠牲になってしまったのか。そして、なぜ本にヨミの名前が載っているのか?
新たな謎が増えましたが、その答えが明らかになるのはもう少し先になります!
次話から章タイトルも変更され、ついにグートとの対決に終止符が……?
この続きは6/15の投稿を予定しております!
楽しみにしていてください♪
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