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最弱の魔法使いが、女子の力を借りて最強に  作者: 龍  岳
第一章 絆 編【グート・ヴォルアとの対峙】
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ep.59 ヨミの叫び、グートの叫び

「ヤメロぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 クロノスドラゴンが叫ぶ。

 グートがヨミに向かって手を伸ばすと、ヨミがその手を弾く。


「へぇ〜。まだそんな力が残ってんのか」

「はぁはぁ……」


 ヨミはグートの手を弾いたものの、座ったりしゃがんだりはできない。

 横たわった状態で、上半身を少し上げるのが限界だった。


「ま、ほとんど抵抗できないから殺すのは簡単だ。もうちょっといたぶってから殺すか」


 グートはヨミの周りをゆっくりと歩き出す。

 よほど気分がいいのか、時折鼻歌まで歌っている。


「さ〜て、オラァ!」

「ぐっ……!」


 グートはヨミの背後に回ると、思い切り背中を踏みつけた。

 そして、背中に足を乗せた状態でまるで地団駄でも踏むかのようにヨミの背中を踏みつける。



「ぐっ……! くっ……!」


 ヨミは体が動かない為、それを受け入れるしかない。

 元々大量に吐血をしているヨミだが、背中を踏まれ続けていることでさらに吐血してしまう。

 そもそもなぜ、ヨミは吐血が止まらないのか……?


「オラァ! オラァ!」


 グートがヨミを踏み続ける様子を、ヴェノムカーデに巻き付かれた状態で見つめるクロノスドラゴン。


(我がいながら、こんな事になるとは……!)


 クロノスドラゴンは悔いていた。

 自分がいながら、ヨミを守れず、助けられず、見ていることしかできない。

 そんな状況が悔しくてたまらなかった。


(どうにかして、この状況を打破しなければ……!)


 と、クロノスドラゴンが心でそう思った瞬間、眩い光りがヨミ、グート、クロノスドラゴン、ヴェノムカーデを包みこんだ。


 ☆ ♡ ☆


 グートがヨミの周りを歩き始め、クロノスドラゴンが自らの力のなさに悔いている時。

 とある場所で本を読む男性がいた。

 その男性は、窓から差し込む光りで口許から上が見えず、誰かは分からない。


 そんな男性が、パタン、と読んでいた本を閉じる。


「さて、そろそろ頃合いかな?」


 と、誰もいない部屋に独り言ちた。

 そして、本を椅子の隣にある机の上に置き、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

 服装は純白のTシャツと長ズボンだった。


「今行くからね。 ”タイリ”」


 そう言って男性は、その場から姿を消した。


 ☆ ♡ ☆


「な、なんなんだこの光りは!?」


 グートは目をつむり、何が起きたのか分からずパニックに鳴っていた。

 ヴェノムカーデも眩しいのか、目を瞑っていた。ヨミも瞑っており、クロノスドラゴンだけが唯一目を開けていた。


(これは……ふっ。そうか。来てくれたのか)


 クロノスドラゴンは軽く笑みを浮かべた。

 そして次の瞬間──、


「グギャッ!?」


 クロノスドラゴンに巻き付いていたヴェノムカーデが弾け飛んだ。


「なんだ!?」


 眩い光りが落ち着いてきたタイミングでヴェノムカーデが弾け飛んだ為、グートは驚き、クロノスドラゴンの方を見る。

 すると、そこにはバラバラになったヴェノムカーデが地面に散らばっていた。


「う、嘘、だろ……!? あのヴェノムカーデが……」


 ヴェノムカーデに近づき、亡骸を見つめるグート。

 その間にクロノスドラゴンはヨミの元へと向かう。


「大丈夫か!?」

「は、はい……ぐふっ!?」

「おい!」

「す、すみません……なぜか吐血が、がふっ!? と、止まらなくて……」

「どうして……」


「君の心臓に、小型のヴェノムカーデが寄生してるからさ」


「「っ!」」


 ヨミとクロノスドラゴンの後ろから声が聞こえてきた。

 二人が後ろを振り向くと、そこには純白の服を着た男性が、ヨミ達の方へと歩いてきていた。

 男性の顔には仮面が装着してあった。

 その仮面は、水色で顔のような顔じゃないような、よく分からない模様が描かれていた。


「あ、あなたは……?」


 ヨミは、その男性が誰か分からず首を傾げる。が、隣のクロノスドラゴンは、その男性を見て、どこか嬉しそうにしていた。


「まさか、お前が来てくれるとはな」

「やぁ。久しぶりだね、タイリ」

「タイリ……?」

「よせ。その名前はもう捨てた。今の我はクロノスドラゴンだ」

「そうだったね。ごめんごめん」


 クロノスドラゴンと謎の男性は、仲睦まじい様子で会話をしている。

 その様子に首を傾げるヨミ。その間も吐血は続いている。


「そうだ。こいつの吐血が止まらない理由、お前は知ってるのか?」

「あぁ。この子の心臓に、小型のヴェノムカーデが寄生してるんだ。そのヴェノムカーデが心臓を蠢き、暴れているから吐血が止まらないんだよ」

「なるほどな……で、どうすればいい? どうすれば小型のヴェノムカーデを取り除ける?」

「君の ”魔法” ならできると思うんだけど?」

「我が強大な力を使うと、そいつに負荷がかかりすぎるんだ……」

「なるほど、ね〜。僕は嬉しいよ。君が ()()()()()()()()()()

「ふん」

「分かった。これは僕からのプレゼントだ。君が戻ってくれた、ね」


 そう言って男性は、ヨミに手を翳す。

 すると、その手から水色の光りが放たれる。

 その光りに包まれるヨミ。と──、


「あ……」


 ヨミの吐血が止まった。


「どう? 変な違和感とかない?」

「は、はい……! 特に異常はありません! ありがとうございます!」


 ヨミは立ち上がり、男性に向かって頭を下げお礼を告げた。

 と、ヨミが頭を下げたのと同じタイミングで男性が右手を横に突き出た。

 すると、突き出して数秒後に「グギャ!?」と言う声が聞こえてきた。


「っ!?」


 ヨミが頭を上げると、男性は右手でバリアを張っていて、そこにヴェノムカーデが衝突していた。


「な、なんで……!? ヴェノムカーデはさっき倒したんじゃ!?」

「彼は一体だけとは言ってないよね?」


 グートは二体目のヴェノムカーデを出現させ、ヨミを襲おうとしていた。


「ふん!」


 右手に力を入れ、ヴェノムカーデを吹き飛ばした男性は、グートと向き合う。


「ねぇ、なんで君はこの子を執拗に狙うの?」

「そんなの、テメェに答える筋合いはねぇ!」

「う〜ん……そうなんだけど、気になるんだよね〜。どうして君が、そこまでこの子を憎み、恨み、命を狙うのか。まぁ、どうせしょうもない理由なんだろうけどさ」


 男性の挑発を聞いたグートは、眉間にシワを作り男性を鋭く睨みつける。


「安い挑発だが、あえて乗っかってやるよ。俺がそいつを狙う理由? そんなの決まってんだろ! そいつはこの世に存在しちゃいけない奴だからだ!」

「へぇ〜。それで?」

「くっ……! 俺が大尊敬している ”あの方” は、そいつの事が邪魔だって言った。だから殺す。 ”あの方” の為に、俺はそいつを殺すんだ!」

「それだと、君の意志ではなく、その尊敬する人の意思を受け継いでるだけな気がするけど? 僕が聞いてるのは君の心。君自身の思いなんだけどな」


 男性は、あえて挑発するような口調で聞く。


「俺の、思い……?」

「そ。君自身の思い。意思さ。君はどうして尊敬する人の意思を受け継ごうと思ったの? どうしてそれを受けて行動を起こそうと思ったの?」

「お、俺は……」


 グートは、自身がヨミを恨み始めた日の事を思い出した。

 謎の男の登場、クロノスドラゴンとの関係。また新たな謎が出てきました!

 ですが、次話でグートがヨミを狙うようになった理由が明らかになります!

 章のタイトルも少し変化しますので、お楽しみに!


 皆様の応援のおかげで、PV数が4000を、ユニーク数が1500人を突破いたしました!

 誠にありがとうございます!!!

 皆様に楽しんでいただけるよう、これからも頑張って参りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!

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