ep.52 記憶の欠落
「はぁはぁはぁ……!」
「で、あるからして……」
ミリアが教室で授業をしていると、廊下から走る音が聞こえた。
ミリアを始め、生徒達が廊下の方を見ると──、
「ヴァージンさん! スカーレットさん! トーリさん! シーズさん!」
保健医のリエが、慌てた様子で勢いよく扉を開き、中に入ってきた。
そして──、
「ヨミさんが、目を覚ましました!」
「「「「「っ!」」」」」
リエの言葉を聞いた四人は、勢いよく立ち上がる。
そして、ミリアの方を一斉に見る。
四人の視線を一気に受けたミリアは、優しく微笑みながら──、
「行って来い」
と、言った。
それを聞いた四人は一斉に動き出す。
「先生、ありがとう!」
「感謝します、先生!」
「この恩、忘れない!」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
四人はリエと共に、走って去って行った。
「全く。騒がしい奴らだ」
と、呆れながらも、嬉しそうに微笑んでいた。
☆ ♡ ☆
「ヨミさん!」「ヨミ!」「ヨミ様!」「ヨミ君!」
四人が勢いよく部屋の扉を開け、ヨミの元に駆け寄る。
「皆さん……すみません……」
四人が駆け寄ると、ベッドの上で力なく項垂れ、か弱く謝罪の言葉を口にした。
「ど、どうして謝るの……?」
ミャナが心配そうに尋ねる。
「またご迷惑とご心配をかけてしまいました……これで何度目か……本当に、すみません……」
「確かに心配はしたけど……そこまで思い詰めなくてもいいのよ……?」
「そうですよ、ヨミ様。何もそこまで気にしなくてもいいんですよ」
落ち込むヨミを、エルナとアイアが慰める。
しかし、ただ慰めるだけならいいのだが、その慰め方が問題だったようで……。
「二人とも、落ち込んでる人にエッチな事禁止!」
ミャナが二人をヨミから引き剥がす。
二人は、ヨミの顔を自分の胸に抱き寄せていた。
ミャナは、その行為が気に食わなかった。
「あなたも何か言って!」
「ふふ。私は別に、いいと思いますよ? ねぇ、ヨミさん。よしよし」
「んなっ!?」
ミャナはユリアにも同意を求める。が、ユリアは微笑みを浮かべ、ヨミを大きな胸に抱き寄せて、頭を優しく撫でていく。
「ユリアは分かってるわね〜。ヨミはこれが大好きなのよ」
「ぼ、僕、そんな事一度も言った事ないんですけど!?」
「あら? 寝言でいつも言ってるじゃないですか。おっぱい好き〜って」
「え!? 嘘!?」
「ヨミ君、嘘だから騙されないで」
「アイアさん!」
「すみません♪ ですが、少しは元気出たようですね」
「あ……ありがとうございます……」
エルナ、アイアの二人はユリアと一緒にヨミに抱きつく。
「あんたはいいの?」
「う〜……!」
エルナが尋ねると、ミャナは唸りながらヨミに抱きついた。
ミャナの胸も、出会った時より成長しているので、顔に柔らかな感触が当たって……。
(こ、これはマズイ……!)
顔を真っ赤にしながら、どうしようかと迷っていた。
☆ ♡ ☆
「「「「覚えてない!?」」」」
「はい……」
「ま、全く……?」
「はい……クロノスドラゴンを召喚した所までは覚えているんですけど……」
「そっか……」
ヨミはなんと、ワーイとの戦闘を覚えてなかった。
クロノスドラゴンが力を貸してくれて、召喚した所までは覚えているが、どのようにして戦ったのか、どのように勝利をしたのか、それらを全く覚えてないと言う。
それを聞いたミャナ以外の三人は──、
「「「(あの時と同じ……)」」」
と、顔を見合わせて小声で呟いた。
それを聞き逃さなかったミャナは──、
「ちょっと」
三人を廊下に呼び出した。
「あの時って何? どういう事?」
「あ〜そうか。ミャナはまだ来る前だったっけ」
「?」
エルナが代表して答える。
「実はね、ヨミは前、暴走して人を殺めたりしてしまった事があるの」
「え……」
「しかも、その時のヨミは、ヨミであってヨミじゃない感じで……」
「はい……すっごく怖かったです……」
「それで、ユリアの事を見たら急に取り乱し始めて、気を失って、目を覚ましたら、今みたいにその時の記憶を失ってたの」
「なるほど……」
そう。特別授業のあの日、ヨミは謎の暴走を起こした。
ヨミであるが、ヨミではない何かになっており、ユリアを見るなり取り乱し、意識を失ってしまった。
しかも、その際の記憶が全くなかった。
それと同じような事が今起きている。これは、何か関係があるのか、それとも……。
「これは、ヨミには……」
「分かってる。そんな事、本人に言えるわけない」
ミャナは深刻そうな表情を浮かべて言った。
大好きで大切なヨミを、苦しめてしまうかもしれないことなんて、言えるわけがなかった。
「そっか……ヨミ君は、前にもこんな事があったんだ……」
「うん……でも今回は謎なんだよね……。別にヨミはヨミのままで、変わった事もなかったんだけど……」
「やはり、クロノスドラゴンが関係しているのでしょうか?」
「そう言えば、クロノスドラゴンってヨミさんの体内に宿っているんですよね?」
「えぇ。そのはずです。ヨミ様に力を貸してくれると言って、姿を消しましたから」
「もしかした、クロノスドラゴンの強大な力が、ヨミ君の体に影響を及ぼしているとか?」
ミャナの言葉に、ユリア、エルナ、アイアの三人は顔を合わせる。
「その可能性が高いですね」
「って事は、私達がクロノスドラゴンの事を調べてるのはあながち間違いじゃないって事よね」
「もっといっぱい調べましょう!」
四人は、ヨミを守るため、助けるため、支えるためにクロノスドラゴンについてもっと詳しく調査する事にした。
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