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ep.4 3人での同棲

 デストドラゴンを討伐した三人は、学園に向かう事にした。

 入学式を無断で欠席した挙げ句、無断遅刻したのがデストドラゴンと対峙したのだと証明する為、エルナが(らい)(じゅつ)でデストドラゴンの首を切り、学園に持ち帰ることにした。

 それが証拠になるので、お叱りを受けても少しで終わるだろうと言う、ちょっとした企みもあったりする。

 地底(ちてい)(そう)を抜け、洞窟を出て、やっと地上へ出た三人。


「はぁ〜! 空気が美味しいわね!」

「ですね♪」


 エルナとユリアが地上の空気を味わっている。ちなみに、ユリアは胸元が弾けてしまっているので、ヨミが上着を貸して、隠している。

 エルナは、胸が少し見えていたり、スパッツが見えていたりしてもあまり気にしていないらしく、そのままの格好だ。

 三人は、学園へと向かう。その道中で。


(二人共、楽しそうに話してる。もう仲良くなったんだ。やっぱり女の子の方がそういうの早いのかな?)


 ヨミがそう考えながら、二人の後ろを歩いていると──、


「ヨミさん?」

「え?」


 突然、ユリアに声をかけられた。


「大丈夫ですか? やっぱり背中が痛むのでは……?」


 いつの間にか二人との距離が広がり、遅れてしまっていた。

 そんなヨミを心配して、ユリアが引き返してくれたらしい。その少し後ろにはエルナも立っている。


「い、いや、大丈夫ですよ! お二人が仲がいいんだなぁと思っていただけですので!」


 ヨミが優しい笑みを浮かべて答える。実際、そう思っていて足取りが遅くなってしまっていた訳だから(少しは背中の傷が痛むが、二人を心配させたくないので黙っている)。


「いや、仲がいいんだなってそんな他人事みたいに言わないでよ。ヨミがいたから私達は出会えたのよ? だから私達が仲がいいのはヨミのおかげなの」


 エルナが当然でしょと言わんばかりに、小ぶりの胸を張って言う。


「そうですよ。ヨミさんがいなかったら、私はあそこで死んでいました。でも、命を助けてくれて、エルナさんと出会わせてくれたのは他の誰でもない、貴方です。ですから、ヨミさんが気を遣って距離を取る必要はないんです! というか、私達の隣には常にヨミさんがいてくれないと困ります!」


 ユリアがヨミと距離を詰め、断言する。要はヨミが必要だと。


「あ、ありがとうございます。でも、別に距離を取ってる訳ではないんですが……」

「へっ!? そ、そうなんですか!? わ、私ったらとんだ勘違いを!? す、すみませんーーー!?」


 ヨミがややバツが悪そうに答えると、ユリアがしまったという表情を浮かべ慌てふためき、その場にしゃがみ込み、真っ赤にした顔を両手で覆い隠した。


「はぁ〜……この天然」


 エルナは、呆れた目でユリアを見ていた。


 ☆ ♡ ☆


 ヨミ、ユリア、エルナの三人はデストドラゴンの首を持って歩いていた為か、学園に到着したのは夕暮れ時だった。


「「「…………」」」


 そんなヨミ達三人は今、生徒指導室で椅子に座っていた。

 その目の前には椅子に座り、その前にある机に肘をつき、左手に頬を乗せてジト目で三人を見つめる女性がいた。


「あ、あの……」


 ユリアが、沈黙に耐えかねたのか口を開く、すると──、


「私語を許した覚えはないが?」


 目の前に座る女性が、低い声でユリアの言葉を遮った。


「っ…………」


 ユリアは女性の迫力に怯み、俯いてしまう。


「で? 入学式に参加せず、翌日の夕暮れに学園にやって来た理由は?」

「あ、あの……」

「私はそこの男子に聞いてるんだが?」


 ユリアが代表して答えようとすると、女性がユリアを睨む。すると再びユリアは俯いてしまう。

 そして女性が「で?」と続きを促す。


「え、え〜っと……その……昨日の事からお話しますと昨日、ユリアさんが地底巣に迷い込まれまして、そこに僕が偶然赴きまして、そこでまぁ、色々あって今日、デストドラゴンをエルナさんと協力して討伐して、今に至る、と言う訳なんですけども……」


 ヨミが女性の顔を見ながら説明を行う。

 その声音は緊張していて震えているが、しっかりと内容は聞き取れた。

 ヨミは事実をかいつまんで語った。まさかユリアの胸を揉みましたなんて、バカ正直に言えるはずもない。

 三人は女性の反応を窺っていた。この女性は学園の教師で生徒指導も行っているらしい。果たして──、


「…………ま、堅苦しのはここまでだな。君が言ってる事は信じるよ、ヨミ・アーバント君」


 女性は表情を和らげ、和やかな雰囲気で言った。先程までの緊張感が嘘のようだった。


「し、信じてもらえるんですか……?」


 ヨミは到底信じてもらえないだろうと思っていたので、簡単に信じてもらえた事に驚きの声を上げた。


「まぁ、実際にデストドラゴンの首を持って帰ってきたからな。信じるしかないだろ〜」


 そう。デストドラゴンの首がいい証拠になったのだ。

 幸い、夕暮れ時だった事もあり、生徒達はほぼ学園寮に帰っていたので、ヨミ達の事は騒ぎにはならなかった。

 もし、生徒がいたならかなりの騒ぎになっていた事は容易に予想できる。


「本来なら君達には処罰を与えなきゃいけないんだが、今回は不問! これ以上の追求は無し!」


 女性教師は、席を立ちそう言う。すると──、


「本当ですか、お姉ちゃん!」


 ユリアが立ち上がり、女性教師に近づく。


「「ん? お姉ちゃん?」」


 ヨミとエルナが、顔を見合わせ首を傾げる。


「こら、学園にいる時は先生と呼べと言ったろ?」

「え、ちょ、ちょっと状況が理解できないんだけど……どういう事?」


 エルナが仲睦まじく話している二人の様子を見て、理解できないといった様子で尋ねた。


「ん? あ〜私ら姉妹なんだよ。ちなみに私はミリア・ヴァージン。あんた達三人の担任だ。よろしくな」


 そう。この女性教師──ミリアは、ヨミ達の担任で、ユリアの姉だった。ちなみに年はユリアより五つ上の二十歳だ。


「そ、そうだったんだ……」


 エルナはビックリしていたが、納得したのだろう。小さく頷いていた。

 その隣にいるヨミは、驚きが隠せないようで、口を開けながら呆けていた。


「ん? ユリア、アンタちょっと胸大っきくなったんじゃない? 前はもうちょっと小さかったと思うんだけど……まぁ、それでもEカップだっけ?」


 ミリアはユリアの胸を見ながら、そんな事を暴露する(かくいうミリアは、釣鐘形のFカップのおっぱいで、ユリアに負けないくらいの巨乳だった)。と──、


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!? へ、変な事言わないでよぉ!? ヨミさんの前なんだよ!?」

「何〜? あの子の前だと何か困る事でもあるの〜?」


 ミリアが、悪戯じみた顔でユリアに尋ねる。後ろにいるヨミは、自分が聞いてもいい話なのか分からず、居心地悪そうに俯いていた。


「あ、あるの! お、男の子の前でそういう事言っちゃ駄目なの! 特に……」

「ヨミの前では?」

「うっ……」


 ユリアが慌てふためきながら答えている。そして、最後の言葉をミリアが遮ってしまう。するとユリアは顔を真っ赤にして──、


「お、お姉ちゃんっ!!!」


 今までで一番大きな声で叫んだ。その声は学園中に響いたとか、響かなかったとか。生徒の間ではちょっとした噂話になっていたらしい。


 ☆ ♡ ☆


 三人が、生徒指導室で説教? を受けた一時間後。三人は今、ミリアに案内されて寮の廊下を歩いていた。

 地下のような場所のとある一室にたどり着くと──、


「着いたぞ。ここがお前達の部屋だ」

「え、ここ?」

「なんだ、文句があるのか? ヨミ・アーバント」

「い、いえ……」


 ヨミが驚き声を漏らすと、ミリアが鋭い視線を向けてきた。

 その視線に怯んだヨミは、黙ってしまった。

 ヨミが驚いたのも無理はない。案内された部屋は、とても狭い部屋で、一畳くらいの広さしかなかった。

 だと言うのに、ど真ん中にベッドがドンッと置いてあり、他の家具は置けないし、スペースがもの凄く限られてしまっている。

 おそらくだが、この部屋は一人用か、はたまた物置か。


「結構狭いのね……」


 エルナが部屋の中に入り、室内を見回しながら呟いた。

 エルナが入っただけで、すでにキツキツになってしまっている。


「ここで、ヨミさんと……」


 ユリアは、ヨミとの生活を想像したのか、顔を赤くして廊下から室内を見ていた。


「他の生徒も、男女混合なんですか?」


 ヨミが困ったようにミリアに尋ねる。


「そんな訳ないだろ? 間違いが起きたらどうするんだ。男女で一緒なのはお前達だけだ」


 ミリアがさも当然かのごとく答える。


「えぇ!? じゃ、じゃあなんで僕達はいいんですか!? 間違いが起きたら困るんですよね!?」

「お前、私の妹に手を出すって言うのか? えぇ?」


 ヨミが言うと、ミリアが距離を詰め、顔を近づけ冷徹な目で尋ねる。


「い、いや、そんな事は……」

「ユリアに魅力がないってか? えぇ?」

「どうすればいいんですか!?」


 一瞬、ユリアの胸に目が行ってしまいそうになったが、グッと堪え答えたヨミだが、どう答えても地雷になりかねない質問で、ヨミは困惑した。


「あはは! すまんすまん。からかいすぎたな。お前達にはむしろ、間違いを起こしてもらわなきゃ困るんだよ」

「えぇ!?」


 ヨミの耳元で呟いたミリア。その言葉を聞いたヨミは顔を真っ赤にしてしまう。


「よし。という訳で、お前達はこの部屋でいいな」

「い、いや、やっぱり僕はどこか一人の部屋で……」


 ヨミが提案しようとすると──、


「駄目よ。ヨミは私達と一緒に暮らすの」

「そうです! ヨミさんは私達と一緒にここで……」


 エルナとユリアが、その提案を却下してしまう。


「で、でも……」

「もう諦めな」

「は、はい……」


 こうしてヨミは、狭い部屋でユリアとエルナと言う、美少女二人と同棲する事になった。


 ☆ ♡ ☆


 夜。狭い部屋の中には、ベッドの上にヨミ達三人。そして、その前にはミリアが立っている。


「あの、まだ、何か……?」

「あぁ。今日、お前達以外の生徒に伝えた事をな。まず、授業は明日から始まる。昼は食堂で取ってくれ。生徒は無料だ。そして、風呂なんだがすまん。お前らの部屋には備え付けがない。他の部屋にはあるんだがな」

「「「ええええええええええええええ!?」」」


 三人は、ミリアの最後の言葉を聞きつい叫んでしまった。


「えーって、お前達は遅れてきたんだからいい部屋がなくなるのは当然だろ。でも、まぁ、風呂無しは可哀想だからな。この隣の部屋には大浴場がある。しかも混浴だ。どうだ? 入りたく──」

「「入りたい!」」


 ミリアの言葉を遮り、ユリアとエルナが挙手して叫んだ。


「そうだよな。だが、使わせるには条件がある」

「条件?」


 ヨミが首を傾げる。


「風呂に入る時は、必ず三人で入る事!」

「…………」

「必ず三人で……」

「いや、それは分かりました! なんで三人で入らなきゃいけないんですか!」


 ヨミが訳が分からないと言った感じで問う。


「その方が、間違いが起こりやすいだろうがぁぁぁ!!」

「えぇーーーーー!?」


 あまりにも平然に、当然のように答えるミリアに、ヨミは驚きを隠せなかった。


「ま、間違いがって……」

「女子二人と裸の付き合い。互いの体を洗い合いっこ。その時うっかり手が胸に。そしてそのまま……みたいな事が起きるだろ!」

「ヨミさんと一緒に……」

「ヨミに、体を……」


 ユリアとエルナは、ヨミと一緒にお風呂に入る所を想像したのか、顔を真っ赤にしていた。まるでのぼせたかのように。


「ま、取りあえず言っておかなきゃいけない事はこんなもんか」

「あ、あの、トイレは……?」


 ヨミがもう一つ大事な事を聞く。


「あ〜。トイレなら、この部屋を出て突き当りを右に曲がった所にあるぞ」

「ま、まさか、トイレまで一緒に!?」

「そんな訳あるか。まぁ、お前達が一緒にしたいなら止めはしないが」

「そ、そんな事しませんよ!」


 すかさずツッコミを入れるヨミだったが──、


「わ、私はヨミが一緒にって言うなら別にいいわよ!」

「わ、私も!」

「ちょ、二人共!?」


 など、ユリアとエルナがとんでもない事を言い出してしまった。

 この後、ミリアは「頑張れ」と一言ヨミに残し、部屋を去って行った。


「と、とりあえず休みましょう。昨日からゆっくりできてませんから。とりあえず二人はお風呂に入ってきてください」


 ヨミが気を取り直し、そう提案する。


「え……? よ、ヨミさんは入らないんですか……?」

「そうよ。一緒に入るのが、使わせてもらう条件でしょ?」

「今日はとりあえず別でもいいって許可はもらいました。初めてなんですし、ゆっくり入った方がいいでしょ? だからまず、二人で入ってきてください」

「わ、分かった……」

「分かり、ました……」


 ヨミが微笑みながらそう言うと、二人は残念そうに頷き、隣の部屋に向かった。


 ☆ ♡ ☆


「ヨミと入りたかったわね」

「はい……」


 ユリアとエルナが、隣の部屋の中に入り、脱衣所っぽい所で制服を脱いでいた。

 脱ぐと言っても二人の制服はすでにボロボロなのでほぼ脱ぎ捨てるに近いが。


「あ〜このスパッツ、新しいの買わなきゃ駄目ね〜」

「私もブラジャーが壊れてしまいました……」

「あんた、本当にデカいわね。ちょっと分けてほしいくらいよ」

「え!? だ、駄目ですよ、こ、これはヨミさんに……あ……」

「ヨミに、何? もしかして、もうすでにヨミにおっぱい揉まれてんの!?」

「あ〜いや、その……」

「何よそれ、羨ましすぎるじゃない……!」


 エルナが全裸になり、悔しがる。

 ユリアも全裸になり、タオルを持ちながら──、


「ヨミさんは、私達と一緒にいるの、嫌なんでしょうか……?」


 そう小さく呟く。その呟きを聞いたエルナは──、


「それはないでしょ。本当に嫌なら一緒の部屋に住んだりしないわ。多分、お風呂に一緒に入るのは本当に恥ずかしいのよ。嫌なんじゃない。裸を見るのも見られるのも照れるのよ。そこら辺、男の子の方が敏感だって聞いた事があるわ」


 エルナはそうやって答えた。


「さ、お風呂入りましょう。私達の残り湯でヨミを卒倒させてやりましょう!」

「そ、そうですね!」


 そうして二人は、大浴場へと入って行った。


 ☆ ♡ ☆


 二人がお風呂に入っている中。ヨミはベッドに横になって眠ってしまっていた。

 その右手には写真が握られている。


「…………グリちゃん…………」


 ヨミは寝言でそう呟いた。握られた写真には、少年と少女が映っていた。

 少年はヨミだが、少女の顔は、光りの屈折で見えなかった。


 ☆ ♡ ☆


「お待たせ〜」「お待たせしました」


 エルナとユリアが順に入室してくる。

 エルナはバスタオルらしきものを首にかけ、髪の毛を拭いていた。一方、ユリアは頭にタオルを巻いている。

 二人共制服ではなく、パジャマを着ていた。

 エルナは赤を基調としたもので、上下が繋がっているワンピースのようなパジャマだった。

 ユリアは水色を基調としていて、モコモコのもので、下半身はショートパンツで、上半身は胸元が少し露わになっているものだった。


「あれ? ヨミ、寝てる」

「本当ですね。疲れてるんですね。このまま寝かせてあげましょう」

「そうね。お風呂は明日でもいいし」


 二人はベッドに上がる。ヨミを真ん中にして。

 二人が乗った事により、振動が生まれ、ヨミの手から一枚の写真が落ちた。


「ん? これって、写真?」


 エルナがそれを拾い上げる。


「あ、エルナさん。人のを勝手に見ては……」

「これって、ヨミの子供の頃、よね?」

「そうですね。可愛いです♪」

「でも、なんで横撮りなんだろう?」

「あ、確かに。おかしいですね」


 二人は写真を見て違和感を抱いていた。


「この写真にはヨミ(・・)一人(・・)しか(・・)映って(・・・)ないのに(・・・・)


 この一枚の写真が今後、全員が直面する悲しい真実の一つであることを、この時は誰も知らなかった。

 この続きは、日曜日に投稿させていただきますので、楽しみにしていてください!


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