ep.37 九死に一生
タイトルに関して、本来であれば
『九死に一生を得る』
ですが、あえて
『九死に一生』
とさせていただいております。
脱字だったり、間違いなどではないのでご安心くださいませ。
キンッ! キンッ!! キンッ!!! キンッ!!!!
謎の少女が、ヨミのシールドを何回も攻撃している音が響き渡っている。
ヨミは両手を掲げ、シールドを展開しているが、両肩を負傷している為かなりキツそうな顔をしている。
(このままじゃ、破られる……! 守ってばかりじゃ勝ち目はない……でも、このまま戦っても勝てる気はしない……! どうすれば……!)
ヨミは、少女の猛攻を防ぎながら考えていた。
しかし、その考える時間を与えてくれるほど、敵は優しくない。
「あは♡ 隙が生まれてしまいましたね♡」
「っ!? ぐぁ!?」
ヨミが考えようとした時に生じた、僅かな隙を見逃さなかった少女は、隙を見つけ扇を振るい激しい竜巻を発生させた。
ヨミはその竜巻に当たり、後方へ吹き飛んでしまう。
「ぐっ……!?」
地面に打ち付けられたヨミ。うつぶせ状態のヨミは両肩に相当なダメージがあったのだろう。腕を全く動かせず、横たわってしまっている。
「うふふ♡ その肩では立ち上がる事すらできませんね♡ 女の子を守ろうとしたその勇気と心意気は素晴らしかったですよ♡ では、ここで死んでください♡」
少女が扇を構え、ヨミに向かって斬りかかろうとした、その瞬間──、
「うっ!? うぅ……!?」
突如、少女が苦しみだした。
持っていた扇を落とし、たたらを踏みながら苦しむ少女。
「うっ……!? うぅ……!? あぁ!?」
少女の体から、濃い緑色の光りが放たれる。そして、少女はその場にへたり込んでしまう。
「はぁはぁ……わ、私……な、なんでここに……? こ、ここはどこなの……? っ♡」
少女は辺りを不思議そうに見渡していたが、突然、顔を真っ赤にして体を震わせた。
少女の表情は、発情しているかのごとく蕩けている。
「はぁはぁ……♡ か、体が、熱い……♡ だ、誰でもいいから襲いたくなる……♡ 襲ってほしくなる……♡ はぁはぁ……♡ んんっ……♡」
少女は、妖艶な吐息を漏らし続ける。
そんな少女を空から見つめる薄い緑色のドレスを身に纏った女性がいた。
「はぁ〜。まだ完璧じゃない、か。改良の余地がありそうね。というかありすぎるわね。まぁ、期待通りの働きをしてくれたから、今日はここまでにしましょう」
女性が指を鳴らすと、下にいた少女と女性が同時に姿を消した。
少女の姿が消えたことで、ミャナ、アイア、エルナ、ユリアの四人は目を見開いて驚いていた。
「に、逃げた……?」
エルナが言う。
「ど、どういうつもりで……?」
アイアが言う。
「た、助かったのでしょうか……?」
ユリアが恐る恐ると言った感じで言う。
「そんな事より今は、ヨミ君を!」
ミャナが左肩を押さえながら、倒れているヨミの元へ駆け出す。
「は、はい! ヨミさん!」
ユリアもミャナに続き、ヨミの元に駆け寄る。
エルナ、アイアの二人も体の痛みと戦いながら駆け寄る。
「ヨミ君! 大丈夫!? しっかりして!」
「…………………」
気を失っているのだろう。ヨミからの返答はない。
「誰か……ヨミ君を運べる人……!」
この場に、ヨミを担いで学園まで運べる人物はいない。
エルナならばできたのかもしれないが、エルナも負傷している為、担ぐ事ができない。
いくら戦う力があると言えど、この場にいるのは女子。男一人を担いで長距離を歩く事は不可能だ。
そんな時──、
「お困りのようだね」
「「「「っ!」」」」
「あんた……!」
「が、学園長!?」
四人の前に現れたのは、泉霞叡術魔術学園の学園長、グルス・ヴォルアだった。
「なぜ、学園長がこちらに?」
アイアが尋ねる。
「学園の備品を仕入れに来ていたのですが、突然爆発音が聞こえまして。気になって見に来てみたら、皆さんがいらしゃったんです」
「怪し」
エルナが小さく呟く。
どうやら、エルナはグルスの事が嫌いなようだ。
「ヨミ・アーバント君を学園まで運べばいいのかな?」
「は、はい! お、お願いできますか!?」
「もちろんだとも。我が学園の大事な生徒だからね。見過ごしたりなんてしないよ」
「あ、ありがとうございます……!」
グルスはヨミに近づき、触れようとする。その時──、
バシッ!
「おや、ミャナ・シーズさん? 何をするんですか?」
ミャナがグルスの手を叩いてしまった。
「ヨミ君に触れないで。あんたみたいな奴に、私の大好きなヨミ君に触れてほしくない」
「ふむ。それは困りましたね。そうなると学園まで運べませんが……」
「私が運びます!」
グルスの後ろから声をかけてきたのは──、
「リエ先生!」
保健医を務めるリエだった。
「私がヨミさんを運びます。シーズさん、それならいいですか?」
「……………まぁ、それなら」
「校長、それでもいいでしょうか?」
「まぁ、いいでしょう。私は先に学園に戻ります。気をつけてくださいね」
「はい」
グルスは一人で先に学園に戻っていった。
「先生、ヨミは細いけど、男の子だからそれなりですよ。運べます?」
「もちろんです! 私、こう見えても力には自信があるんです!」
「そんな細腕見せられても説得力ないね」
「えぇ。そうですね」
「心配になってきた」
「ま、まぁまぁ皆さん、先生に任せましょうよ」
「皆さん、酷いですよ……」
リエはみんなにいじられながらも、ヨミを学園に運び始めた。
ヨミは大丈夫なのか、現れた謎の少女は一体なんなのか、誰なのか。
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