ep.33 ミャナ、救出！
「ヨミ！？」「ヨミ様！」
「ヨミさーーーーーーーーーーーーんっ！？」
ミャナの剣が、ヨミの心臓を貫こうとするその瞬間──、
「はっ！ ふっ！」
「……………っ！？」
ヨミは瞬間移動でもしたかの如く、ミャナの元から消えた。
「はぁはぁ……」
なんとか絶体絶命のピンチから抜け出せたヨミだったが、両肩を貫かれているため、腕を動かすことができない。
ピンチと言う状況は、何も変わっていなかった。
「あいつ……しぶといな……！ おい女！ さっさと殺っちまえ！」
リーサルがそう叫ぶと、ミャナは疾駆する。
（ど、どうすれば……！）
『龍翼、展開！』
「うわぁ！？」
ミャナがヨミの元に到着する寸前、突如としてヨミの背中にクロノスドラゴンの翼が出現。
そのまま上空に飛び上がった。
「こ、これ、クロノスドラゴンが！？」
『あぁ。あの少女を助けるまで我の力を貸すと言ったろ。【龍術】と唱えよ。そうすれば我の力の一端を使う事ができる』
「わ、分かりました！」
ヨミは地上に降り、ミャナと対峙する。
「ミャナさん、行きます！ 龍術、龍威咆哮！」
「っ……！？」
ヨミが魔術を使うと、ドラゴンの咆哮に似た衝撃波が発生した。
それに押されるミャナ。剣を地面に刺す事で、なんとか踏ん張るミャナ。
『貴様はあの少女を傷つけたくないのだな？』
（はい！）
『ならば、早急に決着を着けなければな！ ドラゴンズハウリングだ！』
「はい！ 龍術、圧縛！」
「っ！？」
ヨミは威圧感でミャナの動きを止める。
そして──、
『今だ！ 接近して、少女に触れろ！』
「はい！ 龍術、龍速！」
ヨミは一瞬にしてミャナに接近する。そして、ミャナの背後に回り、背中に触れる。
「これでいいですか！」
『あぁ。十分だ！ 最古術、干渉！』
「うっ！？」
ミャナはビクンッと体を震わせる。
色のなかった目が、あっちこっちと忙しなく動き、ミャナの体からは大量に汗が吹き出る。
「あっ……！？ がっ……！？ ぐっ……！？」
「ミャナさん！ 元に戻って！」
「あっ……！？ があああああああああああああ！？」
ミャナの瞳に、色が戻り始める。
それを見たリーサルは──、
「あの女！ やっぱり役立たずだったか！ 今ならあの男も隙だらけだ！ アタシが殺してやる！」
リーサルがエルナ、アイア、ユリアの三人に重力術をかけたまま、ヨミに肉薄していく。
が──、
『我の邪魔はさせん！ 最古術、鎖縛！』
「ぐっ！？ な、なんだ、これ！？」
近づいてきたリーサルの体に、鎖が纏わりつき、拘束する。
拘束を解こうともがくと、余計に体に鎖が食い込み、動けなくなる。
「んなんだよ、これぇぇ！！！！」
身動きが取れない事に腹を立てるリーサル。
その間にも、クロノスドラゴンの力によるミャナへの解除は続いていて──、
「あ！ あ！ あああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！」
「お願いします……！ 元に戻ってください……！」
『ここまで強い洗脳術は初めてだ……だが、我に突破できない魔術などない！ ハアアアアアアアアアアア！』
「ああああああああああああああああああ！！！」
ミャナが絶叫すると、ミャナの体に真っ赤な光りが集まり始める。
そして、ミャナの瞳が元に戻り──。
「うっ……」
ミャナは気を失い、その場で倒れてしまった。
「ミャナさん！」
『安心、しろ……気を、失った、だけだ……』
「クロノスドラゴン？」
『少女の洗脳、は、解けた……これで、目的は、達した……我は、少し、眠る……』
そう言って、クロノスドラゴンは眠りに就いた。
「ありがとうございました、クロノスドラゴン。ミャナさん！」
ヨミは、倒れているミャナに駆け寄り、優しく抱きかかえる。
「ヨミさん！」「ヨミ！」「ヨミ様！」
リーサルが拘束された事で、重力術が解けたエルナ達三人が、ヨミとミャナの元に駆け寄る。
「皆さん！」
「ミャナは！」
「大丈夫です。気を失っているだけです」
「良かったです……！」
「っ！ 風術、風の盾！」
アイアが後ろを振り返り、風の盾を発生させる。
「はぁはぁ……よくも、はぁ……やってくれたなぁ！！ しかも、アタシを放ったらかすなんて！ 許さない……！ ぜってぇに許さねぇ！！！」
「「「「っ……！」」」」
リーサルは、魔術を放とうとした、その時──、
「ぐっ……！？ な、なんだ、これ……！？ か、体が、言うことを聞かねぇ……！？」
リーサルは突如として、吐血をし、その場に倒れ込んでしまった。
「な、何？ 何が起きたの！？」
「分かりません……ですが、これはチャンスです！ リーサルを倒す！」
「そうね！」
エルナとアイアが、倒れたリーサルに近づこうとすると──、
「あなた達は、倒れた人を襲うのですね」
「「「「っ！？」」」」
突如として大気が震え始め、それと同時に声が聞こえた。
そしてリーサルの目の前に、紫色の髪の毛で紫色のチャイナドレスのような服を着た少女が姿を現した。
「あ、あんたは！？」
「ワタクシは、三術姫の一人、大気のエーサルと申します。リーサルをここで殺される訳にはいかないんです。なので、ここは退かせていただきます」
「あ、待ちなさい！」
「では」
エーサルはリーサルを抱え、姿を消した。
「逃げられた……！」
「今回ばかりはよしとしましょう。ミャナさんを救出できたのですから」
「そうね」
逃がした悔しさに、歯を食いしばる二人だったが、ミャナを助けられた事を喜ぶことにした。
「部屋に、帰りましょうか」
「そうね」「はい」「そうですね」
ヨミ達は、寮の部屋へと帰って行った。
そんなヨミ達の姿を見つめる、怪しい人影がいることに気づかずに。
ミャナの救出、やっとできました！
ヨミとクロノスドラゴンは今後、仲良くなれるのか？
ヨミ達を見つめる怪しい人影とは一体……？
気になりつつも楽しんでいただけてましたら、幸いです！
次話は日曜日に投稿いたしますので、楽しみに待っていてください♪
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