ep.32 ヨミとクロノスドラゴン
(僕は、ここで死ぬのか……)
ヨミは海の中にいる、ように深い闇に沈んでいた。
光などなく、深い闇に。
(僕は、誰も守れず、誰も助けられずに、このまま……)
『何を諦めてんだ?』
(こ、この声……クロノスドラゴン……?)
深い闇の中に、突如としてクロノスドラゴンの声が響き渡る。
『貴様はこの程度で諦めるのか? 我の力を手にした貴様は、この程度で諦める弱者なのか?』
(で、でも……僕は魔術も上手く使えないし、弱いし、クロノスドラゴンにも、呆れられたし……)
『……………そうだな。貴様には呆れた』
(………………)
『だが、我は貴様の事を「弱い」などと一言も言っておらんぞ』
(え……?)
『確かに、貴様は魔術が苦手で、あの黒い力の事も理解できていない。それに併用に関してもまるっきり分かっていない無能だ』
(うっ……)
『だが、貴様には素質があり、芯がある。誰かを守りたい、助けたいと言う、強い信念がある。そして、我との龍術契約を ”顔色一つ変えずに” 使えている。それがどんなにすごい事か』
(クロノスドラゴン……)
『貴様は、強い。それは我が保証する』
(あ、ありがとう──)
『だが! 貴様に力を貸すのは止めるからな!』
(な、なんでですか!?)
『我の力を貴様にやるのは、無駄だと思ったからだ』
(で、でも、それだとミャナさんを助けられない……)
『それだけは特別に力を貸してやる』
(え……)
『我は約束は守る。あの少女を助ける力だけは貸してやる。だが、その後は一切貸しはせん』
(あ、ありがとうございます……!)
『ふん。ほれ、分かったらさっさとしろ。このままだとお前、死ぬぞ?』
(そ、そうでした……! ど、どうすれば……)
『我が少しだけ力を貸してやる。それで打破しろ』
(は、はい!)
深い闇に一筋の光りが差し込み、そこからクロノスドラゴンがやってくる。
そのクロノスドラゴンの背中に乗り、ヨミは闇から抜け出した。
「待っててください、ミャナさん!」
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