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ep.31 使えない魔術

「………………!」

「くっ……!?」


 ミャナの剣が、ヨミの眼前を横切る。


「この攻撃、一回でも当たったら、死ぬ……!」

『おい貴様。なぜあの力を使わない?』

「あ、あの力って……?」

『我に振るったあの黒い炎の魔術だ』

「でも、僕は魔術が使えないから……」

『貴様は馬鹿なのか? あの力は魔術ではない。それに、魔術が使えない訳ではないんだぞ、貴様は』

「え……? っと!?」


 クロノスドラゴンと会話している隙を逃すミャナではない。

 油断しているヨミに、ミャナは何度も剣を振るう。

 それをヨミは、なんとか躱していく。


『さっさと使え! 貴様、死ぬぞ!』

「は、はい! 業火、(えん)()(そう)!」


 ヨミは力を使う。すると、黒い焔がヨミの両拳に纏わりつく。


「こ、これ……」

『来るぞ』

「っ! 業火、(えん)()(きゃく)!」

「っ……………!」


 ヨミはミャナの剣を躱し、足に黒い焔を纏わせ、ミャナの剣を蹴り飛ばした。


「ミャナさん、少しだけ、我慢してください……! 業火、(えん)()(てい)!」

「ぐっ……!?」


 ヨミはミャナの腹部に、掌底を打ち込む。

 それを受け、ミャナは後方に吹き飛ぶ。


『後ろだ!』

「はっ! ハァ!」


 後ろから飛んできたミャナの剣を、ヨミは掌底で吹き飛ばす。


「やった!」

『油断するな! 後ろだ!』

「っ!? がっ……!?」


 ミャナがヨミの顔面に、飛び蹴りを食らわせる。

 ヨミはそれを受け、真横に吹き飛ぶ。


「ヨミさん!?」


 後ろで見ていたユリアが、声を上げる。


「がはっ!? はぁはぁ、大丈夫です……!」

『また来るぞ!』

「っ! 業火、(えん)()(へき)! ぐっ……!?」


 ヨミが両腕を構え、防御の姿勢をとる。そこにミャナが連続で拳を打ち付けてくる。


(こ、このままじゃ、反撃できない……!)

『なぜ魔術を併用しない!』

「へ、併用……? それはどういう……?」

『貴様……! 少し見どころがあるかと思ったが、とんだ勘違いだったな! 我の力を貸すのは止めだ!』

「ちょ、クロノスドラゴン……!? うっ……!」


 ミャナの攻撃がヨミの防御を破り、後方に吹き飛ぶ。


「ぐはっ!? がはっ! ぐっ! うっ……!?」


 ヨミは何度も地面を転がる。


「くっ……クロノスドラゴン、どうしたんですか……!?」


 ヨミがクロノスドラゴンに問いかけるが、クロノスドラゴンは答えない。


「どうして……」

「ヨミさん!?」

「はっ!? ぐはぁ!?」


 ミャナの飛び膝蹴りが、ヨミの腹部に命中。ヨミは地面に打ち付けられる。


「がっ……!?」


 ヨミは大量に吐血をしてしまう。


「ヨミさん!?」「ヨミ!?」「ヨミ様!?」

「アタシを相手に、よそ見なんて、いい度胸じゃんかよ!」

「「ぐっ……!」」


 リーサルが、よそ見をしたエルナとアイアを攻撃する。


「………………」


 ミャナが剣を持ち、横たわるヨミの眼前に切っ先を突きつける。


「みゃ、ミャナ、さん……」


 ヨミが手を伸ばし、魔術を使おうとするが──、


「つ、使えない……!?」


 ヨミは魔術を使えなかった。おそらく、クロノスドラゴンとの事が気になり、集中ができていないのだろう。


「くっ……どうすれば……」

「……………!」

「ぐっ、あああああああああああああああ!?」


 ミャナが、ヨミの右肩に剣を突き刺した。

 ミャナはそこに力を込め、剣先を深くねじ込む。


「があああああああああああああああああ!?」

「ヨミさん!?」


 ユリアがヨミに近づこうとするが──、


「おいおい。邪魔すんなよ!」

「キャッ!?」


 リーサルが遠くから重力術でユリアを押さえつける。


「さぁ、その男を殺せ!」


 エルナとアイア、ユリアの三人はリーサルの重力術で押さえつけられ、動けない。


「ぐっ……ミャナさん……!」

「……………」

「があああああああああああああ!?」


 ミャナは剣を引き抜き、ヨミの左肩に突き刺す。


「ぐっ……あっ……うっ……ミャナさん……! お願いです! 元に戻ってください……!」


 ヨミは必死に呼びかける。が、ミャナは反応しない。


「さぁ、殺せぇ!」

「………………!」


 ミャナが剣を引き抜き、高く掲げ、ヨミの心臓に突き刺そうとする。


「くっ……!?」

「ヨミ!?」「ヨミ様!?」

「ヨミさーーーーーーーーーーーーんっ!?」

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 お楽しみください!

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