ep.29 リーサルとミャナ
ヨミ達が、学園に向かっている頃。
ヨミ達の監視をしていた【三術姫】の三人は、どこかの部屋に先に戻っていた。
「あ〜結局あいつらのイチャイチャと、クロノスドラゴンの力を手に入れるところを見ただけだったな〜」
「うん。あんなに朝早起きしたのに、結局監視するだけ……正直、疲れた……」
リーサルと羊のような角を模した髪型をして、どこか眠そうな顔をした少女──シーサルの二人がソファに座りながら不服そうに言う。
それに対し──、
「二人とも? あの方の意向に背くような発言は、ワタクシが許しませんよ?」
猫の耳を模した髪型をしており、キリッとした目元が特徴的な少女──エーサルが笑顔で言ってきた。その笑顔は不気味なくらい怖かった。
この三人の共通点は、チャイナドレスのような服を着ていて、小学生くらいに幼いというところだった。
リーサルが黄色、エーサルが紫、シーサルが水色。
髪色は服と同じで、リーサルが黄色。
エーサルが紫。シーサルだけが唯一違くて、髪色は銀白だった。
「「ご、ごめんなさい……」」
リーサルとシーサルの二人は、シュンとした表情を浮かべて、エーサルに謝罪をした。
「分かればよろしいのです。それにしても、あのお方の力を、こんな女を操るために使うとは。なんと罰当たりな」
エーサルがそう言いながら、少し離れた場所を見る。
そこには、力なくただボーっとしているミャナが立っていた。
その顔は無表情で、瞳には光りがなかった。
「ホントにな! あのオッサン、あのお方の力をなんだと思ってんだろうな!」
「あのオジサン、嫌い」
「…………一行が戻ってきましたね。リーサル。今日の夜、行けますか?」
「もちろんだぜ! あいつらをコテンパンのギッタンギッタンにしてやんよ!」
「頼みましたよ。帰ってきた時に狙えと、あの方も仰っていましたから。そこの女! あなたも行くんですからね。くれぐれもリーサルの足を引っ張らないように」
「……………」
「はぁ〜……人形と言うのは困ったものですね」
「大丈夫だぜ! いざとなったらこいつ、殺すから」
「そうしてください」
リーサル、エーサル、シーサルの三人は、夜に備えて何か準備を始めた。
☆ ♡ ☆
学園に帰ってきたヨミ達。
現在は、ヨミ達の教室に集まっていた。
ヨミはと言うと、まだ目を覚ましてはいなかった。
その為、机の上に寝かせている。
「みんな、おかえり。無事でよかったよ」
ミリアが、ホッとした表情でユリア、エルナ、アイアに向かって言う。
「ご心配をおかけしてしまい、すみません」
「まさか、二週間も経ってるなんて思わなかったからね」
「ごめんね、お姉ちゃん」
「みんなが無事ならそれでいい。責めたりはしない。色々と話を聞きたいところだが、みんな疲れてるだろう。今日はもう休んで、また明日、話を聞こう」
「「「はい」」」
そう言って、その場は解散になった。
ユリア達はヨミと共に、寮の部屋へと戻った。
☆ ♡ ☆
寮の部屋へと帰って来たユリア達。
「ヨミさん、目を覚ましませんね……」
「そうね……それだけ疲労してたって事なんでしょうけど、心配だわ」
「そうですね。ヨミ様の声が聞こえないと、寂しいですからね」
三人は、ヨミを見てそれぞれ呟いた。
と──、
「ん……」
「ヨミさん!」「ヨミ!」「ヨミ様!」
「みんな……?」
ヨミが目を覚ました。
「ここは……?」
「学園の寮です!」
「私達、帰ってきたのよ!」
ボーっとしているヨミに、ユリアとエルナが興奮した様子で答える。
「ヨミ様、お水です」
「ありがとう、ございます……」
アイアがコップに水を入れて、飲ませてくれる。
それでとりあえず落ち着いたのか──、
「ご心配をおかけして、すみません」
「本当よ! もう、めちゃくちゃ心配したんだからね!」
「ヨミさんがこのまま死んじゃうのかと、何度思ったか……」
「私達に心配をかけた分だけ、ベッドの上で可愛がってくださいね? ヨミ様」
「う、うん……。頑張るよ」
「ヨミに、可愛がられる……ぐへへ〜♡」
「ヨミさんに……えへへ〜♡」
アイアがヨミに提案すると、ユリアとエルナの二人が決して人に見せてはいけないような顔で、ニヤけ始めた。
これが、つかの間の休息だったと言うことを、この時は誰も知らなかった。
☆ ♡ ☆
「さぁ、行くぞ! 着いてこい、女!」
「……………」
リーサルとミャナが、学園の敷地内に侵入していた。
「重力変化術・重槍!」
リーサルは、校舎を攻撃し始めた。
☆ ♡ ☆
ドガァァァァァァァァァァンッッッッ!!!
「「「「っ!?」」」」
「な、何!?」
「校舎が揺れました!?」
「校舎に攻撃を受けている?」
リーサルの攻撃で、校舎は凄まじい衝撃を受け、寮にいる生徒達は全員、ざわめき始めていた。
ヨミ達は、なんとなく予想ができているのか、驚きはしたものの、冷静に状況を判断する。
「とりあえず、外に行きましょう!」
「はい!」「うん!」「えぇ!」
ヨミの号令で、四人は外に出た。
☆ ♡ ☆
「お、来た来た〜」
「あれって!」
「三術姫のリーサル!」
「「っ!?」」
外に出て、校庭の方に行くと、そこにはリーサルとミャナが立っていた。
「あれが、伝説の三術姫……」
「あ、ミャナさん!」
アイアがリーサルを見て警戒をしている隣で、ユリアがミャナを指さし、名前を呼んだ。
「あんの馬鹿……何やってんのよ! 洗脳なんかに負けてんじゃないわよ!」
「ミャナさん!」
エルナとヨミがミャナに呼びかける。
「……………」
しかし、ミャナの反応はない。
ミャナは、左手を左腰に携えた剣の柄部分に添えており、いつでも抜刀できる状態にいた。
「いつでも私達を斬る準備はできてるってか……! いいわ! そっちがその気なら、こっちだってやってやる! ヨミ!」
「はい! ミャナさん、貴女を絶対に元に戻してみせます!」
ヨミ、エルナ、アイアが並び、その少し後ろにユリアが立つ。
「いいね! じゃあ、殺し合いと行こうぜ!」
互いに臨戦態勢になったヨミ達。
そして、リーサルの一言で、戦いが始まった。
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