ep.2 2人の女の子
デストドラゴンから逃げ、とある洞穴に身を隠した三人。
「うん。ここまで来ればとりあえず大丈夫かしらね」
赤髪ロングの女の子が、入り口から外を見ながら言う。すると──、
「あ、あの! 助けていただきありがとうございました! 私はユリア・ヴァージンと言います」
水色髪の女の子──ユリアが自己紹介をする。
「丁寧にありがと。私はエルナ・スカーレットよ。よろしく」
赤髪の女の子──エルナも自己紹介をする。
エルナはおわん形のCカップおっぱい。だが一番目を引くのはおっぱいではなくお尻だった。
スカートの上からでも形がわかるくらい、大きめのお尻だった。
「あ、この人は……」
ユリアがヨミを見やり紹介しようとするが、いかんせんさっき会ったばっかりなので、名前を知らない事に気が付き固まってしまう。すると──、
「ヨミ・アーバント。それが彼の名よ」
エルナはなぜかヨミの名を知っていた。ユリアはなぜ知っているのかが気になり、首を傾げてエルナを見る。
「そ、そんな目で見ないでよ……。名前くらい知っていて当然よ。その子も私と同じ、泉霞叡術魔術学園に入学する新入生なんだから」
エルナは何かを誤魔化すかのように、早口で説明を行った。ユリアがエルナとヨミを交互に見やりながら──、
「お二人も泉霞に入学されるのですか?」
「え、えぇ。あなたも、よね? 泉霞の制服を着てるし」
ユリアの質問に、少し戸惑いながら答えるエルナ。三人とも同じ制服を着ているのだから普通気づくだろうと彼女は思っていた。
と言うか、気づかないはずがない。だが──、
「はい! 私も今年から泉霞の生徒になります。まさかこんな所で同級生の方に会えるなんて思ってもみなかったです。ですが、なぜ私達が泉霞の学生であるとお分かりに?」
「いや、なんでって。私達全員、同じ制服を着てるでしょ? 泉霞の」
気づいていないド天然がここにいた。エルナは呆れながらもしっかりと答えてやる。
「…………あ〜! なるほど! 確かにそうですね! 三人ともおんなじ、です♪」
「はぁ〜……」
エルナの答えを聞き、自分の服装を確かめるユリア。すると、やっと納得がいったのかポンッと手を叩き、満面の笑みを浮かべた。
そんなユリアに、エルナは我慢ができずため息をこぼしてしまった。
(この子、天然すぎない……? そんな事にも気づかないなんて、天然って言うより馬鹿? って、今はそれより)
エルナはしゃがみ込み──、
「ヨミの容態は?」
右向きで横になっているヨミの背中を見て、ユリアに尋ねた。
「あの鋭い爪の一撃を直に受けてしまいました……私を庇ったばっかりに……!」
エルナに容態を聞かれたユリアは、申し訳なさそうに俯きながら答える。その目には涙が浮かんでいた。
そんなユリアにエルナは──、
「後悔してる時間があったら、治術か治癒魔法を使ってヨミを看病して。使えないのなら何ができるのか、教えて」
エルナは敢えて厳しく、強い口調で言う。
「ち、治術は使えます……!」
「だったらボサッとしてないで。さっさとやる!」
「は、はい……!」
ユリアは、ヨミの背中の患部に両手を翳し、術を発動させる。すると、淡い緑色の光りが灯り、患部を癒していく。
それを見たエルナは──、
(驚いた。この子、使えるなんてレベルじゃないじゃない。他の魔法使いよりも制度が高く無駄がない。ここまで完璧な治術は初めて見たわ。ヨミの傷もあっという間に塞がり始めてるし……)
「あなた、何者?」
と、エルナはつい口に出してしまった。
「何者とは、どういう意味でしょうか……? 私は泉霞に入学する普通の見習い魔法使いですけど……」
ユリアは、頭に疑問符を浮かべながらエルナの質問に答えた。質問の意図が分からなかったが、何か答えないと失礼になると思ったのだろう。
「ん〜まぁそう言う事じゃないんだけど……まぁいいわ。そろそろ替わるわよ。疲れたでしょ? 後は私に任せてあなたは休んで」
エルナが頭を掻きながら治療を替わろうとする。が──、
「いえ、大丈夫です。まだ全然疲れてないので。私よりエルナさんの方が疲れたのでは? さっき、ヨミさんを抱えて走ったのですから。なので、私の事は気にせず先に休んでください」
ユリアがその申し出を断る。しかも逆にエルナに休むよう促した。
(嘘でしょ、この子……。さっきからずっと魔術を使っているのよ? しかも難易度の高い治術を。十分程度でも魔術費を多く消費してしまって本来は交代交代でやるのが基本なのに……。この子はまだ平気って……まぁ確かに汗一つかいてないけど……この子、本当に何者なの……?)
「分かったわ。お言葉に甘えて先に休ませてもらう。でも、疲れたり何かあったりしたらすぐに私を起こしてね」
エルナは観念したように、壁に寄りかかりながら目を閉じ言う。
「はい。…………あの、やっぱり今日はここで過ごすんでしょうか……?」
ユリアが恐る恐る尋ねる。
「当たり前でしょ。あのドラゴンが今どこにいて、いつまた襲ってくるか分からないんだから。第一、ヨミが目を覚まさない限りここから動けっこないわ。流石に私も、男子一人担いであのドラゴンから逃げ切る自信はないもの」
エルナは目を閉じたまま答える。
「そう、ですよね……」
ユリアは小さく落胆する。入学式に間に合わなかった事が悔しいのだろう。
「ま、明日学園に行ったら怒られるでしょうけど、私も一緒に怒られてあげるから安心なさい。とにかく今は、ヨミの傷を少しでも癒して明日ここから出る事。いいわね?」
「は、はい……!」
なぜか上から目線のエルナは、そう言って眠りに就いた。怒られるのは当然なのではないかと言う疑念は残るが、まぁそれはよしとしよう。
この後、ユリアとエルナは交代しながらヨミを治療していった。
ユリアがヨミに接する時、頬を赤らめるのが気になったエルナだったが、そこには触れないようにした。
そして、朝を迎えた。
☆ ♡ ☆
身を隠した洞穴で目を覚ましたエルナ。
「ふわぁ〜……ん?」
小さなあくびをした後、エルナは左を見やる。するとそこにはすでに起きていたユリアが正座をしていて──。
「ヨミさん、ごめんなさい……私のせいで、こんな……」
ユリアがヨミの頭を膝に乗せ、頭を優しく撫でながら謝罪をしていた。
「…………」
エルナは、ユリアのその姿に見とれていた。とても優雅で美しかったから。
ユリアは目に涙を溜めていて、今にもこぼれ落ちそうだった。それを見たエルナは──、
(あの子、天然だけど責任感が強いみたいね。でなきゃ、あんなに涙を浮かべて謝ったりしないもの。はぁ〜……若干、苦手意識を抱いていた自分が嫌になるわ)
エルナはそう思った後、ユリアに近づいた。
「おはよう、ユリア」
「ぐす……。お、おはようございます。エルナさん」
ユリアは涙を拭い、エルナに挨拶を返す。
「ふふ。大丈夫?」
「は、はい。すみません……」
エルナに尋ねられたユリアは、可愛らしい笑みを浮かべて答えた。
「謝らなくていいわ。それに、私もしっかりと後をつけられていれば……」
「ん? つける?」
エルナの言葉に首を傾げるユリア。
「あ、いや! な、なんてもない!」
慌てて誤魔化すエルナ。不思議そうな顔でエルナを見つめるユリア。そんな時──、
「ん、んん……」
ヨミが唸り声を上げた。
「ヨミ!」「ヨミさん!?」
二人が声をかける。立っていたエルナは、ヨミに駆け寄りしゃがんだ。
「…………」
二人がヨミに声をかけたが、返事はない。どうやらまだ目を覚ました訳ではなかったようだ。
「ヨミさん……」
目を覚まさないヨミを、悲しそうな眼差しで見つめるユリア。
エルナも同じく悲しい顔をしてヨミを見ている。すると──、
「グギャァァァァァ!」
外からモンスターの雄叫びが聞こえてきた。エルナが入り口へ、外の状況を確認しに行くと──…
「デストドラゴン……見つかったか……」
そう。雄叫びの主は、昨日ヨミ達を襲ったデストドラゴンだった。一晩かけてヨミ達の居場所を探し出したらしい。
(執念深い事ね。…………それより、左目に私の短剣がない……)
そう、デストドラゴンの左目には、エルナが突き刺した短剣の姿が見当たらなかった。
おそらく自力で振りほどいたのだろう。しかし、左目は潰れていて、視えていないことは分かった。
(今の私であいつに勝てる……? ううん、勝つことを考えちゃ駄目。今は二人を逃がす事を考えなきゃ。少しでも時間を稼ぐの)
エルナは、後ろにいるヨミ達を見やり思考する。そして──、
「ユリア、外にデストドラゴンが現れた。あいつの相手は私がするから、ユリアは隙を見てヨミを連れて逃げて」
「え!? いや……」
ユリアがエルナの言葉に戸惑っていると──、
「頼むよ!」
エルナはそう言い残し、外へ飛び出してしまった。
「あ、エルナさん!?」
咄嗟に声をかけるも、エルナはすでに遠くに行ってしまった。
「どうしよう……」
残されたユリアは、ヨミの顔を見ながらどうするべきか考え始めた。
この続きはこの後(お昼過ぎ、または夜になってしまうかもしれません)投稿したいと思っておりますので、少しだけ待っていてください!
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