ep.19 出発の日、近づくユリアとの距離
二日後、出発の日。
「こ、これが馬車!? 私達の部屋より大きいんだけど!?」
エルナが驚愕の声を上げる。
校門の前に停車している馬車。それは、ヨミ達が暮らしている寮の部屋より広く大きかった。
「あら、そうなの? それはミリア先生に申請して変えてもらった方がいいんじゃないかしら?」
「え!? い、いや、それは、その……か、変えてもらう必要は、ないんだけど……」
「あら、そうなの? みんながいいならそれでいいんですが。それでは皆さん、乗ってください。そろそろ出発しますよ」
「「「「はい」」」」
リエが馬車を運転するため、前の席に乗り、馬の手綱を持つ。
そして、ヨミ達が荷台に乗る。
「そういえば、私達は冷風があるんで平気ですけど、先生は大変じゃないんですか? 外で馬車を操縦するんですよね?」
「ご心配、ありがとうございます。ですが大丈夫ですよ。運転者の周りには特殊なバリアが張られ、あらゆる被害から守ってくれるので」
「「「「へぇ〜」」」」
「それでは、出発します」
「「「「はい」」」」」
そうして、五人は学園を出発した。
☆ ♡ ☆
「見つけました。あれがヨミ・アーバントですか」
「そうだぜ!」
「戦ってみて、どうでしたか?」
「めっちゃ雑魚。魔術も魔法も使えないから、女に助けてもらわなきゃなんもできないんだ! なんであんな奴を気にかけるのか、グリエ様の ”まことい” が分かんねぇぜ!」
「リーサル、それを言うなら ”真意” だよぉ〜……」
「んなっ!? そ、そんな事分かってるわ! 少し言い間違えただけだ! ていうか、しっかり起きろよシーサル!」
「だってぇ〜……眠いんだも〜ん……朝早すぎだよ〜……」
「いいですか、二人とも。今回ワタクシ達に課せられた命は、ヨミ・アーバントの監視です。決して戦闘を行ってはいけませんよ?」
「あぁ!」「ふぁ〜い……」
「それでは、参りましょう」
謎の少女三人組──三術姫は、ヨミ達の後を追った。
☆ ♡ ☆
「今日は、ここら辺で休みましょう」
リエが馬車を止めたのは、砂漠に入る少し前の森の中だった。
「砂漠、見えてるのに休むの?」
エルナが尋ねる。
「もう日が暮れますし、砂漠に入ったとしても、目的のダンジョンまでは最低でも一日、長くて三日はかかります」
「えっ!? そ、そんなにかかるの……!?」
「えぇ。なので、今日はここで休んで、明朝に出発するのがいいかと。いかがでしょうか、ヨミさん」
リエがヨミに尋ねる。
「はい。先生の案でいいと思います。事を急いでもいいことはありませんから」
「ありがとうございます。私はここで眠りますので、皆様もご自由にお過ごしください。外に出てもいいですが、あまり遠くには行かないでくださいね」
「「「「はい」」」」
リエは教師らしく、ヨミ達に注意事項を述べながら指示をした。
そして、本人はその場で壁に寄りかかり、一瞬にして眠りに就いてしまった。
長時間の運転で疲れたのだろう。
「先生、すぐ寝ちゃったわ」
「長時間、休まずに運転し続けてましたからね。お疲れだったのでしょう」
「ヨミ様、私の膝を使って眠ってくださいね」
「「っ!?」」
アイアが、女の子座りをして、ヨミに横になるように言う。
それを聞いたユリアとエルナの二人が、驚きながらも慌てて二人の間に入る。
「ちょ、ちょっと!? 何抜け駆けしてんのよぉ! ヨミに膝枕をするのは私よ!」
「い、いえ……! ヨミさんに膝枕をするのは私です!」
「何を仰ってますの? ヨミ様は、私の柔らかくふわふわな膝で眠りたいのです。あなた達の出る幕はないので、お下がりなさい!」
など、三人は、誰がヨミに膝枕をするのかで揉め始めた。
「え、えっと……僕は普通に──」
『ヨミ(さん、様)は黙ってて!』
「は、はい……」
結局、じゃんけんで勝ったエルナの膝の上で眠る事となった、ヨミであった。
☆ ♡ ☆
夜。
「ん……? ヨミさん……?」
ユリアが荷台の中で目を覚ます。
エルナとアイアは寝ているが、ヨミの姿が見当たらない。
ユリアは荷台から顔を出す。ちなみに荷台は、大きな布のような物に包まれている。
「う……外は暑い……」
ユリアは一瞬で吹き上がった額の汗を、腕で拭いながら外に出た。
「ヨミさん、どこに行ったのでしょう……?」
ヨミを探し歩いていると、近くから水音が聞こえてくる。
「わぁ〜……滝」
ユリアがたどり着いたのは、滝が流れる池だった。
「綺麗……」
その池は、月明かりに照らされて、幻想的な雰囲気が漂っていた。
と──、
「ん? 誰か、いる……?」
端っこの方に人影が見えたので、ユリアはゆっくりとそこに近づいていく。
月明かりで、人影がハッキリ見えるようになると──、
「っ!? ゆ、ユリアさん!?」
「よ、ヨミさん!? っ!」
そこにはヨミが立っていた。どうやら水浴びをしていたようで、ヨミは全裸だった。
ユリアの視線は自然と下に下り、その視線の先には──、
「お、おちんち……!」
「っ!?」
ユリアがその名称を叫びそうになった瞬間に、ヨミは慌てて股間を隠す。
「ご、ごめんなさい……! 池を見つけたら、水浴びをしたくなっちゃって……!」
「い、いえ……! 私の方こそごめんなさい……! そ、その……見ちゃって……!」
「い、いえ……大丈夫です……お見苦しいものをお見せしてしまいすみません……あの、服を着たいので……」
「あ……」
ヨミの服は、ユリアの足元にあった。
「………………」
ヨミの服を見つめるユリア。何を思ったのか──、
「よいしょ」
「っ!? ちょ、ちょっとユリアさん!? な、なんで服を脱ぎ始めてるんですか!?」
ユリアは、制服を脱ぎ始めてしまった。
制服のブラウスのボタンを開け、スカートを脱ぎ、下着姿に。そして、ブラのホックに手をかけ、ブラを取る。
そして、パンツも脱ぎ去り、生まれたままの姿となった。
ヨミは慌てて後ろを向き、見ないようにする。
「ヨミさん……私の裸、見てください……」
「ゆ、ユリアさん……?」
「私はヨミさんの裸を見てしまいました……。なので、これでおあいこです。だから、見てください」
「で、でも……」
「私、胸が大きくなったんです。ヨミさんにいっぱい揉んでもらえたからだと思います。なので、その成長を見てください」
「……………ゴク」
ヨミは生唾を飲み込む。
見てもいいと言われるが、中々勇気が出ず、振り向けずにいると──、
「ヨミさん」
「ゆ、ユリアさん!?」
ユリアが抱きついてきた。
ヨミの背中には、生のおっぱいの感触がダイレクトに伝わっている。
「ゆ、ユリアさん……!」
「伝わってますか? 私の、胸の感触……大きさ、分かりますか……?」
「は、はい……伝わってます……ユリアさんの……」
「よかった……あの、もしよかったら、一緒に水浴び、しませんか……?」
「い、いいですけど……ここの水、結構冷たいですよ?」
「暑いから大丈夫です」
「ま、まぁそうですけど……それでも冷たいですよ? 僕は昔から冷たさをあまり感じない体質みたいなので平気ですが、ユリアさんはそうではないので、耐えられるかどうか……」
「むぅ〜……やってみなきゃ分からないじゃないですか」
そう言ってユリアは、ヨミから離れ、池の中に足を入れる。
「つ、冷たい……!?」
「だから言ったじゃないですか……」
「す、すみません……キャッ!?」
「ユリアさん!?」
足を滑らせたユリアを、ヨミが駆け寄り支える。
「「あ……」」
ヨミは、ユリアの体を支えた事により、ユリアの裸をばっちり見てしまった。
それだけじゃなく、右手がユリアのおっぱいに当たっている。
「よ、ヨミさんのが、足に当たってます……」
「ご、ごめんなさい……」
「謝らなでください。嬉しいです。私で興奮してくれて」
ヨミは興奮し、下半身に血流が集まってしまっていた。それが、ユリアの足に当たってしまった。
それをユリアは嬉しそうに微笑んだ。
そして、二人はジーッと見つめ合い──、
「「ん……」」
初めての、口づけを交わした。
☆ ♡ ☆
「あ、あいつらこんな場所で何やってんだぁーー!」
「静かにしてないとバレるよ!」
「だってよー!」
「二人ともお静かに。監視をする際に気をつけなければならないのは、気配や存在を察知されない事です。今のお二人では気づかれてしまいますよ?」
「「は、はい……ごめんなさい……」」
「分かればいいんです。さぁ、監視を続けますよ」
「「は〜い!」」
(それにしても、あれが男性の……初めて見ました……♥ 素敵ですね……♥)
謎の少女三人組──三術姫による、ヨミの監視はまだまだ続いていた。
投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません……!
お待たせしてしまったぶん、楽しんでいただけるような内容になっていると思います!
ミャナを助ける為にダンジョンに向かうヨミ達。
ヨミを監視する三術姫達。
そして、ついにキスまでしてしまったヨミとユリア!
ここからどうなるのか、楽しみになさっていてください!
ブックマークをすると、毎週日曜日に読むことができますので、どうか、よろしくお願い致します……!
そして、この話でこの作品のストックがなくなってしまいました……。
ですが、ご安心を! 頭の中には今後の展開の構想がしっかりとありますので、変わらず毎週日曜日に投稿していきます!
毎週日曜日を楽しみにしていてくださると、嬉しいです!
次は3/23に投稿いたしますので、お楽しみに♪