ep.18 ミャナの為に
学園の寮、ヨミ達が暮らす部屋で。
「はぁはぁ……」
「よ、ヨミ様!? エルナ!? どうしたの!?」
突如、部屋に傷ついたヨミと、そんなヨミを支えるエルナが入ってきた。
「詳しい話は後……! ユリア! 治術でヨミを治療して! 私の治術よりもユリアの方が効果が高いと思うから!」
「は、はい!」
エルナがベッドにヨミを寝かせる。そのヨミに、ユリアが治療を開始する。
「それで、何があったんですか……?」
ベッドの端に座るエルナに、アイアが心配そうに尋ねる。
「昼間、ヨミ宛に手紙があったからそれをヨミに届けたの。それで、その手紙を読んだヨミの様子が突然おかしくなって、それで心配になって様子を見に行ったら、変なガキとミャナにヨミが襲われてたの」
「みゃ、ミャナに!? なんでまた!?」
「知らないわよ。なんか様子がおかしかったのは確かだけど」
「そうですか……それで? そのガキとお言うのは?」
「なんか、お団子頭のガキで、三術姫? って言ってたけど」
「さ、三術姫!?」
「知ってるの?」
「え、えぇ……噂でしか聞いた事がありませんが、魔術の頂点に立つと言われる伝説の魔術士、グリエ・チャームが認めた三人の弟子で、【重力のリーサル】【大気のエーサル】【精神のシーサル】と呼ばれてるそうよ」
「重力……確かにあのガキ、重力を操ってたわね」
「まさかそんな厄介な人達が現れるとは……」
「狙いはヨミ、よね……?」
「恐らく……我々も本気で守りを固めなければですね」
「えぇ」
二人は、ヨミを守る為に色々と動くことにした。
☆ ♡ ☆
「おや、早かったですね」
「えぇ。思ったよりも早く終わったみたいでね。まぁ、向こうが上手く逃げおおせただけなんだけど」
「そうですか。ですが、逃げるだけ力がある、と言うことですね。貴女の ”最高傑作” である三術姫と対峙していたと言うのに」
「まぁ、そうね。レベルアップと言う、あの子にしか使えない力があるからね。それよりほら。ご所望の物よ」
とある部屋に、白髪白髭の男性がいた。グルスだ。
そのグルスの元に、妖艶な女性が現れた。
その女性は、綺麗なエメラルド色の髪をしていて、薄い緑色のドレスを身に纏っている。胸元が大胆に開いており、大きな胸が今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。
お尻も大きく、ドレスの上からでも形がハッキリ分かる。
「おやおや。傷一つない。珍しいですね。どういう風の吹き回しですか?」
「別に。たまには納品する物の品質を上げようかと思ってね」
「なるほど。報酬の上乗せですか」
「察しのいい男性は嫌いじゃないわ」
「はぁ〜……。それで? 要求は?」
「あら、本当にくれるの? 半分冗談だったのだけれど。まぁ、くれるというのなら、もらうわ。そうね。じゃあ、私をあなたの学園の教師として雇いなさい」
「………………」
「あなたのそんな顔、初めて見たわ。あなたでも驚く事があるのね」
「そ、それはまぁ、私も一応は人ですから……。それより、本気ですか?」
「えぇ、本気よ。あなたの学園にいれば、あの子をより近くで監視できるでしょう?」
「なるほど……分かりました。準備を進めておきます」
「よろしく頼むわ。それじゃ私は行くわ。後はお好きにどうぞ」
そう言って、女性はどこかに消えて行った。
「全くあの人にも困ったものだ……しかし、納品に関しては優秀すぎるほど。今回もこんなにも完璧に」
グルスが立ち上がり、歩き出す。そして、とある場所で立ち止まる。
男性が立ち止まった場所には、ミャナがいた。
「これであなたは、私のもの。ふふ……」
グルスは、ミャナの髪に触れ、不敵な笑みを浮かべた。
☆ ♡ ☆
ミャナとリーサルとの戦いを終えた翌日。
ヨミ達は、ミリアに報告を行っていた。
「そうか……シーズが……それに、三術姫まで現れるとは……」
「先生は、三術姫をご存知なんですか?」
ヨミが聞く。
「あぁ。噂程度だがな。魔術の頂点に立つと言われる伝説の魔術士、グリエ・チャームが作った最強の魔術士。そんな最強の三人が集まったのが三術姫だ。口頭などでは聞かされて来たが、誰一人としてその存在を見た者はいないと言われていた。だが、まさかお前達が会うなんてな」
「あんなガキが、最強の魔術士なんてね」
エルナが言う。
「ガキ?」
「えぇ。見た目は小学生? くらいの見た目で、口調もまだ成長しきってない子供そのものって感じのあれだったわ。すぐに癇癪を起こす困った子だったわ」
エルナが、。リーサルを思い出しながら深いため息をつく。
「こ、子って……ヨミ、どうだったんだ?」
「そうですね……子供っぽいって言うのは確かだと思います。見た目や喋り方、癇癪は僕も接していて子供を相手にしているみたいでした。ですが、強さは本物でした。重力の魔術を、あそこまで精密に操れるのは相当の実力がないと無理ですから」
「そうか……【重力のリーサル】【大気のエーサル】【精神のシーサル】。一人ひとりでも厄介だが、それが一堂に会したらどうなるか……」
「想像もしたくありませんわね」
ミリアの言葉に、アイアが答え、皆が黙ってしまう。
そんな沈黙を破ったのは、ヨミだった。
「あの、先生」
「ん?」
「ミャナさんの洗脳を解く方法、ありませんかね……?」
「そう、だな……」
ヨミの尋ねに、ミリアは考え込んでしまう。
「現時点で、洗脳を解く魔術や魔法は存在していない」
「そう、ですか……」
ミリアの答えに肩を落とすヨミ。「だが」とミリアが続けて──、
「最強の伝説龍、クロノスドラゴンなら、可能かもしれない」
「く、クロノスドラゴン……?」
ヨミ達は首を傾げた。
「クロノスドラゴンとは、魔術や魔法を生み出したと言われている伝説の龍だ。その龍は、全てを生み出した張本人なので、おそらくは洗脳を解く事もできる、かもしれない」
「なるほど……そのクロノスドラゴンは今どこに?」
「ダンジョンのラスボスとして【エンガ砂漠】のダンジョンにいる」
「え、【エンガ砂漠】!?」
アイアが驚愕の声を上げる。
「し、知ってるんですか?」
ユリアが尋ねる。
「えぇ。【エンガ砂漠】。あそこは人が到底踏み入れられない場所です。常に暑くて、水もない。生き物は十分も耐えられない場所です」
「そ、そんな場所に……」
ユリアが驚愕している。
「そ、そんな所にどうやって行くって言うの?」
エルナがミリアに尋ねる。
「そう難しい事じゃないぞ? 馬車で向かう」
「ば、馬車で!? 暑くて水もない場所なんでしょ!? そんな所に馬車で向かうなんて、どう考えても無謀でしょ!?」
エルナがミリアに言う。
「まぁ、そう思うよな。だがな行けるんだ。水はユリアが魔術で出せるから飲水には困らない。そして何より、馬車の中は、冷風完備だ」
「「「「っ!」」」」
ミリアの言葉に、四人は目を見開き驚いた。
「れ、冷風完備の馬車って、噂では聞いた事あるけど、本当にあるんだ……!」
「まさか、学生の身分で乗れるなんて……!」
「お姉ちゃん、本当に乗っていいの?」
「あぁ。特別に手配しておいてやる」
ミリアの返答に、四人は声を上げて喜んだ。
「だからヨミ、出発は明後日でいいか? 準備が色々あるからな」
「はい。もちろんです。ありがとうございます。よろしくお願いします」
「分かった。当日は本当は私が連れて行ってやりたいんだが、仕事が立て込んでてな……代わりに、別の人を呼んでおいた」
「「「「?」」」」
ミリアが手招きすると、一人の女性がやって来た。
「初めまして。保健医のリエと申します。ぜひ、お見知りおきを」
かなり妖艶な女性が自己紹介をした。
白衣を着ているが、その下のニットが、胸元が大胆にあいたセクシーなもので、男子の目を引いてしまう服装で、かなり刺激的だった。
下はミニスカートで、タイツを穿いていた。
「この人……ヨミを近づかせちゃいけないわね……」
「この方、妙な気配がしますね……」
エルナとアイアは、リエを見てそれぞれの思いを抱いていた。そんな中、ヨミとユリアの二人は──、
(この方、どこかで会ったような……?)
(この人の事、僕、知ってる……?)
と、思う二人だった。
「ふふ。よろしくね」
妖艶に微笑むリエだった。
連続投稿です!
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