ep.17 三術姫、リーサル
「アタシはリーサル! 【三術姫】の一人だ!」
【三術姫】と言う言葉を聞いたヨミは──、
(【三術姫】……どこかで聞いたことがあるような……)
と、思っていた。そんなヨミを見たリーサルは──、
「おいテメェ! なんで黙ってやがんだ! アタシが折角名乗ってやったんだ、ちった〜反応しやがれクソが!」
リーサルはまるで子供が駄々をこねるかのように、空中でジタバタして怒っていた。
しかし、ヨミはそれにも反応を示さない。そんなヨミにさらに腹を立てたリーサルは──、
「テンメェ……! ヨミ・アーバント、もう許さねぇ! ここでボコしてやる!」
怒りがピークに達したリーサルが、魔術を使用し、ヨミに攻撃を仕掛け始めた。
「重力術、圧迫!」
リーサルが魔術を使用した瞬間、ヨミの体がガクンと重たくなった。
(ぐっ……! また体が……!)
「あっはは! さっきの重力は普通の重力を倍にした程度だったが、今は五倍にしてあるぜ! そのまま落ちろ!」
(ぐっ……! 体が動かない……!)
「あぁ? なんでテメェはその場にいられんだ? 五倍にしてんだぞ? 普通の人間なら……あぁ、そうだった。テメェは ”普通の人間じゃなかった” んだなぁ」
リーサルは、ヨミに聞こえない程度の小さい声で、不敵に微笑みながらそう呟いた。
「あっはは! じゃあ、倍数増やしてくから、どこまで耐えられるか勝負しようぜぇ!」
「ぐっ……!」
(負荷が増した!?)
ヨミにかかる重力がどんどんと増えていく。
最初は五倍だったが、次第に六倍、七倍、八倍、九倍……と、どんどん増していき、ヨミの体が、骨が悲鳴を上げ始める。
(ぐっ……どうにかして抜け出さないと……! 空間術を使う隙はない……どうしたら……ぐっ……!)
ヨミが流石に耐えきれなくなり、崩れ落ちそうになった瞬間──、
「火術、弾!」
「んだ?」
突如後ろから、火の弾が飛んできた。その攻撃をノールックで躱すリーサル。
苛立ったように後ろを振り向くが、そこには誰もいなかった。
が、ヨミがいた方から音がしたので、そっちを向くと、そこには──、
「あぁ? 女、テメェ、誰だ?」
ヨミを支える、エルナがいた。
「ヨミ、大丈夫?」
「は、はい……ありがとうございます……」
「ううん。ヨミが無事ならよかった」
「おい女! 無視すんな! アタシを置いてけぼりのままイチャイチャすんな! 無駄におっぱい押し付けやがって!」
「なんなのあのガキ、うるさいわね。それにミャナの様子もおかしいし。ヨミを襲ってるのがあのガキって言うのは分かるんだけど、一体何者なの?」
「ようやくアタシに興味が向いたか。お前にも特別に教えてやる! アタシはリーサル。三術姫の一人だ! 覚えとけ、おっぱい押し付け女!」
「三術姫? 聞いたことない名前ね。あと、自分に押し付けるほどのおっぱいがないからって、ひがまないでくれる?」
「んだとテメェ! ちょっとおっぱいが大きいくらいで調子乗んなよ!」
「乗ってないわよ! この大きさで乗れるなら乗ってみたいわ! 私なんかより大きい子、沢山いるんだから!」
「テメェより大きいおっぱいが、いっぱい……? ふざけんなーーーーーー!! その全員、ぶっ殺してやる!」
「なんかよく分かんないわね、この子!」
リーサルとエルナが言い争いをしていると、真下から剣閃が飛んできた。
「あの女……! ヨミを殺そうとしてるわね……! ヨミ、あいつとミャナ、どっちの相手ならできそう?」
「り、リーサルの相手なら、おそらく……」
「オッケー。ミャナのやつを叩きのめして、すぐに戻って来るから、それまでなんとかしのいで」
「はい」
そうして、エルナは降下する。
「あ、待て女!」
リーサルが追いかけようとするが──、
「あなたの相手は、僕です……」
「おいおい冗談だろ? そんなボロボロの状態で、どうやってアタシと戦うってんだ?」
「戦いようならあります! 空間術!」
ヨミが魔術を使用するが──。
「ん? なんも起こんねぇぞ?」
「あ、、あれ……!? な、なんで……!? さっきは使えたのに!?」
「あっはは! 何が起きてんのかわかんねぇけど、お前にはもう、戦う術はないみたいだな! だったら、大人しく死んでくれ! 重力変化術・重槍!」
「くっ……!? な、なんだ……!?」
「よく避けれたな。褒めてやるよ。この攻撃はな、重力を操り、様々な形に変えて敵を攻撃する術なんだ。ま、重力だから目には視えないんだけどな〜。だからこそお前がウザい! なんで避けれんだよ!」
(ど、どうする……あの視えない術を使われると厄介だ……術が使えないとなると、対抗する手段が何もない……魔法は苦手だし、体力ももう限界が来てるし……)
など、ヨミが考えていると──、
「隙あり、だ。落ちろ」
「っ!? ぐあっ!?」
油断していた為、ヨミはリーサルの重力術で、地上に叩き落されてしまった。
「ぐっ……!? ぐがぁ!?」
地面に思い切り打ちつけられた為、大量に吐血するヨミ。
「ヨミ!?」
ミャナを戦っているエルナが、落下してきたヨミを見て動揺する。
「あっはは!! やっと落ちたぜ! さぁ、今度は潰れろ!」
リーサルが、倒れているヨミに向かって更に重力術を使用しようとする。
「させる訳、ないでしょ!」
「ぐっ……!」
エルナは、ミャナから剣を奪い取り、上空にいるリーサルに向かって投げ飛ばす。
その剣が、リーサルの左肩に命中し、リーサルは地上に落下する。
「ヨミ! 大丈夫!?」
「は、はい……」
ヨミに駆け寄るエルナ。優しく体を支える。
「あいつ、何気に強いわね……私が相手をしても勝てるかどうか……」
「みゃ、ミャナさんは……」
「あのバカなら、あそこで尻もちをついてるわよ。いい気味ね。ヨミを襲った罰よ」
「早く、助けてあげないと……」
「………………ねぇ、おっぱい揉んで」
「ふぇ!? ど、どうしたんですかいきなり!?」
突然、エルナがそんな事を言い出した。
それを聞いたヨミは、顔を真っ赤にした。
「ヨミのレベルが上がれば、この状況を打破できない?」
「あっ……」
エルナが考えたのは、ヨミのレベルを上げて、この危機的状況を覆す事。
ヨミはレベルが上がると、その度に強さを増す。それを知っている為、エルナはこの提案をしたのだ。
「ほら、早く」
「は、はい。失礼します……」
ヨミは、エルナの右胸を揉む。
「痛てて……ったく剣を投げつけるとか信じらんねぇわ。って! 何外でイチャついてんだゴラァ! しかもおっぱい揉むとか、何考えてんだァ!」
「うっさい! 黙ってなさい! これは私とヨミの大事な行為なのよ! んっ……♡」
ヨミに胸を揉まれ、妖艶な吐息を漏らすエルナ。
その声に更に腹を立てたリーサルが──、
「エロい声出してんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 重力変化術・重弾!」
リーサルは、手から視えない弾を放った。
しかし、それを──、
「フッ!」
「なっ!?」
ヨミが左腕を振るい、簡単に弾いてしまった。
ヨミの体には、銀色の光りが集まり、キラキラと輝いている。
レベルアップに成功したのだ。
「あ、アタシの攻撃を弾いた……!? さっきまであんな雑魚だった奴が……!?」
「レベルアップしたからね! 今のヨミのレベルは四十八よ! (私は十八になったけど……)」
「こ、これが ”あの方” が言っていたレベルアップ……厄介だな……!」
「ヨミ!」
「はい! 火炎、噴煙!」
「くっ……!?」
ヨミが煙幕を焚く。それにより、リーサルとミャナの視界を塞ぐことに成功。
その隙に二人はその場を去った。
噴煙が晴れる。
「なっ!? 逃げた!? だぁぁぁぁぁぁぁ!! チクショウ! おい! ボーッとしてんな! さっさと帰るぞ!」
リーサルは、相当苛立った様子でミャナを引き連れ、どこかに向かっていってしまった。
そのリーサルの後ろ姿は、子供が怒っているような姿で、どこか可愛らしかった。
ミャナは一体どうなってしまったのか。そして、謎の【三術姫】とは一体なんなのか。
ヨミはなぜ、魔術が使えたり使えなかったりするのか。
色々と謎が散りばめられていますが、お話が進むにつれて明らかになっていきますので、楽しみにしていてくださると幸いです!(謎が明らかになるのはまだまだ先なので、ブックマークをしておくのがオススメです♪)
この続きは、来週の3/16に投稿したいと思っております!
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(今回は活動報告はなしにさせていただきます……すみません……!)