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ep.14 転校生

 ヨミは復帰し、久しぶりに教室に来ていた。


「ねぇ聞いたよ! 強い魔物に襲われたんだって? それなのに無事なんて凄いじゃん!」


 など、複数の女子生徒達が、ヨミの所に来て声をかけていた。


「何あいつら。なんで気安くヨミに話しかけてんよ」


 エルナがその様子を、ムスッとした表情を浮かべながら見ていた。


「ま、まぁ、それだけヨミさんのした事が凄いって事ですよ。話したくなるのも無理もないですよ」

「ユリアはそれでいいの?」

「え?」

「今まで邪魔者扱いされてきたヨミが、いきなり女子にモテ始めて、うちらが近づく隙もなくなっちゃうかもしれないのよ?」

「そ、それは……い、嫌です……」

「でしょう?」


 エルナの尋ねに、険しい表情をして俯くユリア。よっぽどヨミと離れるのが嫌なのだろう。

 一方で、ヨミの事をジーッと見ているアイアは──。


「ヨミ様なら大丈夫ですよ。私達を見捨てたり、仲間はずれにしたりは絶対にしない。それが、私達の知っているヨミ様でしょう?」


 優しく微笑みながら、二人に対して言った。まぁ、語気に少し怒りが混じっているような気はするが……。


「そうね。ヨミが私達を捨てるなんてありえないわね。ヨミは私達がいないと駄目だから。私達がいないと、本当に……」

「ヨミ様のあの謎の力、謎の人格の正体についてはまだ分かっていませんが、私達が今するべき事は分かっています。ヨミ様をお守りすることです。それが、私達の最大の使命です」

「うん!」「はい!」


 ユリアとエルナは、アイアの言葉に深く頷き、ヨミを守る事を固く誓った。

 再びヨミが暴走しないように。誰も殺めないように。ヨミが、傷つかないように。

 三人はそう決心した。


 ☆ ♡ ☆


 ヨミが学園に復帰してから一ヶ月。

 特に危険な事もなく、穏やかな学園生活が流れていた。

 授業を受けたり、お昼を仲良く食べたり、友達と遊んだり、などなど、学園生活を謳歌していた。

 ヨミに至っては、寮に帰ってからの方が大変だった。

 今までは、ユリアとエルナの二人と暮らしていたが、そこにアイアも加わり、狭い部屋に四人で暮らしている。

 同じベッドに四人で寝ている為、ヨミは知らず知らずのうちにユリア達の体を触ってしまっていて、知らず知らずのうちに勝手に全員のレベルが上がっていた。

 ヨミはMH・Lvが二十。ユリアのER・Lvが十。エルナが六、アイアが四になっていた。

 ちなみに、ユリアの胸はまた少しだけ大きくなっていた。

 と、まぁ。そんな感じで平和な日々を過ごしていたが、それが変わる日が訪れた。

 泉霞叡術魔術学園、一年術組で。


「え〜突然だが、転校生を紹介する。入れ」


 ミリアが左側のドアを見ながら、入室の合図を送った。が──。


「あれ? 入ってこない?」


 転校生が入室してこなかった。


「あれ? おいどうした? 入っていいぞ?」


 ミリアが再び合図を送ると──、


「おいおい……」


 転校生は、ミリアがいる方の扉、ではなく、後ろの扉から入ってきた。


「あ、あの子は……」


 ヨミが、入室してきた転校生の女子生徒を見て、驚きの表情を浮かべる。


「なんで後ろから……まぁいい。そのまま前に来なさい」


 ミリアは呆れていたが、後ろにいる女子生徒に声をかける。すると、その女子生徒が通路を通ってミリアのいる教卓の方へと向かった。


「じゃあ、自己紹介して」

「はい。ミャナ・シーズです。よろしく」


 転校してきたのはなんと、ミャナだった。

 だが、ヨミと出会った時のような優しい感じはなく、他を威圧するかのような感じだった。

 そんなミャナに──、


「ミャナさん、あんな感じだったっけ?」


 ヨミは疑問を抱いていた。


 ☆ ♡ ☆


 ミャナの自己紹介も終わり、現在は授業が始まるまでの小休憩。

 ミャナは当然、質問攻めを受けているかと思いきや──、


「あの子、近寄るなオーラが凄いわね。話しかけたくても、誰も話しかけられないわよ、あれじゃ」


 エルナが、一人で座るミャナを見て小さく呟く。

 と──、


「あ、ヨミ?」

「ヨミ様?」

「ヨミさん?」


 ヨミが一人でミャナに近づいていく。

 三人は、積極的に動くヨミが珍しく、不思議そうな顔をしてヨミの背中を眺めていた。

 ヨミは、ミャナの目の前で立ち止まると──、


「お久しぶりです、ミャナさん。僕の事覚えてますかね……?」

「もちろんです。その節はありがとうございました」

「良かった。あの時、この学園の前にいたのって転校前の視察とかだったんですか?」

「いえ。そういう訳ではないんです。ないんですが……」


 ミャナは急に視線が気になった。ヨミと親しげに話しているこの状況。折角作ったミャナの、話しかけづらいというイメージが、変わってしまう。

 そう思い、周りの視線が気になってしまった。

 今、周りからはどう見られているのか? どう思われているのか? それが気になってしまった。


「ミャナさん……?」


 ヨミが心配になり声をかけると──、


「すみません。一人にしてください」

「あ、ミャナさん!」


 ミャナは教室を出て行ってしまった。

 その後を追って、ヨミも教室を出ていく。


「ヨミさん!」


 ユリアがヨミの後を追おうとすると──、


「どこ行く気だ? もう授業が始まるぞ? とっとと座れ」


 ミリアが教室に入ってきた。


「でもお姉ちゃ……先生、ヨミさんとミャナさんが……」

「あいつなら大丈夫だ。任せておけばいい。だからお前達は安心して授業を受ければいい。さぁ、始めるぞ」


 ミリアは何事もないかのように授業を開始した。

 だが、ユリアはヨミとミャナの事が。特にヨミの事が気になって仕方がなかった。

 なぜこんなにも気になるのか、本人は気づけずに。


 ☆ ♡ ☆


 教室を飛び出したミャナをヨミが追いかけた。

 ミャナは空き教室に入ったみたいで、ヨミもそこに入る。


「ミャナさん」


 ヨミがミャナに優しく声をかける。


「なんで付いてくるんですか? 私は一人にしてと頼んだはずです」


 ミャナは苛立ったような口調でヨミに尋ねる。だが、ヨミにはその口調の中に悲しさが混じってるような気がして……。


「すみません……なんか放っておけなくて、気がついたら後を追ってしまいました。すみません」


 ヨミはわざと明るく答える。少しでもミャナの悲しみを緩和してやりたいから。まぁ、ヨミの勘違いかもしれないが。


「私がこの学園に来た理由をさっき聞きましたよね?」

「え? は、はい」

「前の学校で暴力沙汰を起こしてしまったんです。それで退学になって。でも学園としては退学者を出すのは嫌らしく、転校と言う形で私を厄介払いしたんです。それが、私のこの学園に来た理由です」


 ミャナは自身が泉霞に来た理由を話した。だが、その表情はどこか苦しそうだった(ヨミに背を向けている為、ヨミからはミャナの表情は窺えない)。


「暴力を振るってしまった訳は……?」


 ヨミは、優しい口調で疑問に思った事を尋ねる。

 まだ浅い付き合いだが、ミャナがなんの理由もなしに人を殴る訳がない。そんな事は短い付き合いでもすぐに分かった。

 だから、あえて尋ねた。


「理由なんて酷いもんですよ。自分の夢を馬鹿にされたから。ただそれだけ。失望したでしょ? たかが夢を馬鹿にされたくらいで人を殴るなんて」

「いえ! その状況だったら僕も殴ってしまったかもしれません!」

「え……?」


 ヨミの言葉を聞いたミャナは、ここでようやくヨミに向き合った。


「どんな理由があろうと、人の夢を馬鹿にするなんてしてはいけないです! 夢は自由なんですから! 僕だって自分の夢を馬鹿にされたら、怒っちゃうかもです」

「わ、私の夢は馬鹿にされて当然の夢なのよ……魔法騎士になりたいなんて夢……」

「ミャナさんは魔法騎士になりたいんですか? 凄いです!」

「え……?」

「魔法騎士なんてめっちゃ格好いいじゃないですか! 剣と魔法を使って悪を成敗する。格好良すぎます! ミャナさんにピッタリな夢じゃないですか!」


 ヨミのその言葉を聞いたミャナは、嬉しさのあまり、泣いてしまった。

 しかし、本人に泣いている自覚はなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。


「え!? あ、あの、な、なんで泣いて……!? ぼ、僕なんか嫌な事言っちゃいましたか!?」


 ヨミは、急に泣き出してしまったミャナに慌ててしまう。

 自分が何かミャナの傷を抉るような事を言ってしまったのではないかと思ったから。

 だが、そんな心配は無用で──、


「え、あ、ううん。違うの……。ヨミさんの言葉が嬉しくて、勝手に……ごめんなさい……止まらないんです……涙が溢れて……今ままで否定ばっかりで、肯定された事なんて、なかったから……!」


 ミャナは今まで、自分の夢を否定され続けていた。

 お前がなれるはずないと。お前には無理だと。

 それを受けて、何度夢を諦めようと思ったか。何度夢を捨てようと思ったか。

 それでもミャナは、胸に抱き続けていた。

 見返してやりたいという気持があったから。

 だが、一人で戦い続けるのは苦しかった。大変だった。精神的に参ってしまっていた。

 だから、ヨミの言葉が胸に刺さった。嬉しかった。枷が外れたようだった。

『君は一人じゃない』と言われたような気がした。だから、張り詰めていた糸が切れ、涙が溢れ出てしまっていた。


「大丈夫です! 僕は、ミャナさんの味方ですから! もう一人で、苦しまないでください」

「っ! はい……! はい……っ!」


 ヨミは優しくミャナを抱きしめる。ミャナはヨミに胸に顔を埋め、泣きじゃくった。

 ヨミはミャナが泣き止むまで、抱きしめ背中を擦ってあげた。


 ☆ ♡ ☆


 泣きじゃくったミャナ。今は落ち着きを取り戻し、椅子に座っている。

 ヨミはミャナの隣に腰掛け、ミャナの背中を擦っている。


「ごめんなさい……みっともない所を見せちゃって……」

「いえ。全然みっともなくなんてないですよ。僕はミャナさんの本音が聞けて良かったです。話してくれて、ありがとうございます」

「ヨミさん……あなたは優しすぎます……そんな事言われたら私、駄目になっちゃいます……」

「駄目になったっていいじゃないですか。完璧な人なんていないんです。それに、気を抜ける人が側にいないと、心も体も疲れちゃいます」

「ありがとう……ヨミさ……」

「ん?」


 ヨミは首を傾げた。なぜ止まったのか。


「よ、ヨミ、君って、呼んでも、いいですか……?」

「もちろん!」

「っ! あ、ありがとう。ヨミ君」


 ヨミの屈託のない笑顔にミャナは、顔を赤らめながらニッコリと笑った。

 この二人は、ユリア達にはない別の絆で、強く結ばれた。


 ☆ ♡ ☆


 ヨミとミャナの二人は、教室に戻って来ていた。

 ミャナは教室に戻る間、ヨミに対して甘えており、ヨミの袖を掴んでいた。

 だが、教室に入るや否や、ミャナは先程と同様の警戒心丸出しの雰囲気を醸し出した。

 ヨミは気になり、声をかける。


「みゃ、ミャナさん? なんでそんな警戒心丸出しなんですか……?」

「私はヨミ君以外とは仲良くするつもりはないの。他の奴なんてどうでもいい」

「そ、そっか……」


 ミャナはそう言い切ってしまった。

 その言葉が、周りに聞こえていたのか、周りにいる生徒達の表情は険しいものだった。

 ヨミとミャナの後ろの席に座るユリア達は──、


「良かった。仲良くなれたんですね」


 安堵するユリア。


「なんか君付けで呼んでるんですけど! 馴れ馴れしすぎない!?」


 怒り心頭のエルナ。


「ヨミ様以外の人とは仲良くしたくない、ですか。ふふふ……これはライバルがまた増えましたね……」


 冷静に、それでいて不気味に呟くアイア。


(みんなと仲良くなってほしいんだけど……まぁ、ミャナさんが元気になったんなら、それでいっか)


 そう思うヨミだった。


「ふふ♡」


 そんなヨミを見て、可愛らしく微笑み、恋する乙女のような表情を浮かべるミャナだった。

 投稿が遅くなり、申し訳ございません……!


 お読み頂きありがとうございます!

 いかがだったでしょうか?

 新ヒロインのミャナちゃん。好きになってくださったら嬉しいです♪


 普段はクールですが、ヨミと二人っきりの時は甘えん坊になると言うギャップを上手く書いていけるように精進して参りますので、応援の程、よろしくお願いします!


 この続きは、3/2の日曜日に投稿いたしますので、楽しみになさっていてください♪


 ブックマーク、ご評価などなど、皆様の応援が僕の執筆のモチベーションになっております!

 誠にありがとうございます!

 今後も、どんどん更新して参りますので、これからもよろしくお願い致します!

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