ep.133 クロノスドラゴンと特訓 ③
クロノスドラゴンに特訓してもらえなかった翌日。
食堂にいたエルナとアイアの元に、ユリアがやってきた。
「ん? ゆりは? ほうひはの?」
お昼を食べているようで、エルナはご飯を多く口に含んでいた。
その状態で喋っていたので、目の前にいたアイアに注意されてしまう。
「エルナ。口の中に入った状態で喋らない。なくなってから喋りなさい」
「ごく……。あんたは私の母親か」
口の中のものを飲み込んだエルナは、注意してきたアイアに突っ込みを入れる。
そんなやり取りを微笑ましく見ていたユリアは、ここに来た目的を告げる。
「エルナさん、アイアさんクロノスドラゴンさんから伝言です」
「「っ!」」
ユリアの言葉を聞いた二人は、目を見開き、持っていた箸を置いた。
そして、ユリアの方を見る。
「なんだって?」
「今から一分以内に、特別訓練棟に来てほしいと。一秒の遅れも許さないと」
「「またぁ!?」」
二人はユリアから伝言を聞き、嫌そうな表情を浮かべた。
しかし、やらない訳にはいかないので、嫌々ながらもトレイを返しに行き、急いで特別訓練棟に向かって走り出した。
「お二人も頑張ってるんです、私も頑張らなければ!」
走る二人の背中を見つめながら、ユリアは何かを意気込んだ。
☆ ♡ ☆
「「はぁはぁ……!」」
特別訓練棟に向かう二人。
特別訓練棟とは、エルナ達が普段授業を受けたり、訓練したり、医務室があったりする院舎から少し離れた場所にあるもう一つの院舎。
そこには、訓練室や禁書庫、武器庫などがある。
普通の院舎にも、禁書庫はあるのだが、別棟にある禁書庫にはより危険な書物が保管されていた。
「別棟なんて、遠、すぎ、る、でしょ……!」
「普段の院舎から、別棟まで、それなりに、あり、ます、から、ね……!」
少し離れている。と言ったが、距離にして数十キロ。
本来であれば、走って向かう場所ではなく、馬車などで移動する距離だった。
「魔術の使用は、禁止されてません、から、使い、ま、しょう……!」
「そ、そうね……!」
二人は魔術を使用した。
エルナは雷、アイアは風の魔術を使って走るスピードを速めた。
「「間に合えーーーーーーーー!」」
☆ ♡ ☆
「「ゼェゼェ……!」」
「59秒か。昨日より一秒遅い」
なんとか間に合った二人。
昨日と同じように、訓練室には時計を持ったヨミ(クロノスドラゴン)が立って待っていた。
しかし、一分以内には間に合ったものの、59秒で、昨日より一秒遅かった。
それを見たクロノスドラゴンは、不服そうな声で時間を述べた。
「し、仕方、ない、でしょ……ゼェゼェ……! ここまで、めちゃくちゃ、遠いん、だから……!」
「言い訳はいい。もっと早く来い」
「無茶、言わないで、ください……! 魔術を使用して、なんとか、一分以内に間に合ったんです……」
「魔術の使用……そう言えば言うの忘れてたな」
「「?」」
ヨミ(クロノスドラゴン)は、出口に向かって歩きながら──、
「次から魔術の使用は禁止だ。自分の力で、自力だけで走れ」
そう言ってヨミ(クロノスドラゴン)は、訓練室を出て行ってしまった。
「また訓練してくんないのかよっ!?」
「走り損です……!」
「しかも、魔術の使用が、禁止!?」
「ありえ、ませんっ!?」
二人は、息を整えながら文句を垂れた。そして、昨日と同じく──、
「「私達が頑張って走った意味はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
と、叫んだ。




