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最弱の魔法使いが、女子の力を借りて最強に  作者: 龍  岳
第一章 絆 編【人間の悪意】
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ep.132 クロノスドラゴンと特訓 ②

 魔物の森での戦闘から、一週間が経過した。


 エルナとアイアの二人は、激しく動き回っても平気な程に回復していた。


「これで、クロノスドラゴンに特訓してもらえるわね」

「そうですね。それで早速お願いしたいのですが……クロノスドラゴンはどこに行ったのでしょうか……?」


 二人は今、庭にいた。

 ここでクロノスドラゴンと待ち合わせをしているのだが、クロノスドラゴンは一向に現れない。


 二人が不思議に思っていると――、


「エルナさん! アイアさん!」


 ユリアが走ってきた。


「どうしたの?」

「はぁはぁ……ヨミさん……じゃなかった。クロノスドラゴンさんが、訓練室に来てくれと」

「それをなんで言伝なのよ。自分で言えばいいのに」

「まぁまぁ、私達は特訓してもらう身ですし、クロノスドラゴンは照れてるんですよ」

「あ、あと、もう一つ伝言がありまして」

「「ん?」」


「一分以内に来ないと、特訓はしないと」


「「はぁ!?」」


 ユリアからその伝言を聞いた二人は、そこまで遠くはないが、そこそこの距離がある訓練室に向かって走り出した。


「今から一分以内とか、鬼畜かよー!」

「これも特訓の内、だとしてもいきなり厳しすぎですー!」


 そんな二人の後ろ姿を見つめながら――、


「あの子達に期待をしているのね、タイリ。私が復活できるまで、この世界をお願いね」


 ユリアの表情とは思えない、大人びた微笑みを浮かべ、ユリアの声とは別の声で呟いた。

 そんなユリアの周りには、透明なオーラが現れていた。


「っ!? わ、私、今何か言った……?」


 透明なオーラが消えた瞬間、ユリアの表情と声が元に戻った。


「あ! 急いでリエ先生のとこに行かないと!」


 ユリアは用事を思い出したのか、リエがいる医務室に向かって走り出した。


 そんなユリアの後ろ姿を、グートが妖しい表情を浮かべながら見つめていた。


 ☆ ♡ ☆


「おう、来たか」

「「ゼェゼェゼェゼェ……!」」


 訓練室に到着したエルナとアイア。

 激しく息を切らしており、若干の過呼吸にも思えるほどだ。


 二人は膝に手を当て、前屈みになって呼吸を整えようとしている。

 二人は、特訓してもらう為にすでにトレーニングウェアに着替えていた。

 灰色のトレーニングウェアが、汗を吸収し変色している。

 アイアの胸の膨らみや、エルナのお尻の形などが汗で服が張り付いているせいで強調されている。


 目の前にいるのが、クロノスドラゴンではなく普通のヨミだったらたじろいでいただろう。


 しかし、目の前にいるのはヨミの体に宿るクロノスドラゴン。二人のそんな姿を見ても全く動じない。

 それどころか、時間を確認していた。


「58秒か。ギリギリだな」

「そ、そりゃ、そう、でしょ……!」

「病み上がりなのも、あり、ますし、それに、何より、距離が、遠い、ん、ですから……!」


 冷たい口調で時間を口にするクロノスドラゴンに、二人は文句を垂れた。

 その文句が気に食わなかったのか──、


「我は別に特訓などしなくてもいいんだぞ? なんなら、今からやめても──」


 いい、と言い切る前に──、


「「すみませんでしたっ!!」」


 と、二人は謝罪した。

 しかし、その謝罪には怒気がこもっているような気がした。


「はぁ〜。とりあえず合格だ。じゃ」

「「へっ……?」」


 ヨミ(クロノスドラゴン)は、歩き出してしまった。

 その様子を見て、素っ頓狂な顔と声を出す二人。


「えっ、ちょ、ちょっと!?」

「特訓はぁ!?」

「来たらしてやるとは言ったが、今日やるとは言ってない」


 と言って、ヨミ(クロノスドラゴン)は訓練室を出て行ってしまった。


「「……………………じゃあ、走った意味はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 二人の声が、訓練室に響き渡った。

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