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最弱の魔法使いが、女子の力を借りて最強に  作者: 龍  岳
第一章 絆 編【人間の悪意】
131/138

ep.126 謎の行動

 バンッ!


「先生ーーーーーーーーーーーー!!!!」


 銃声と共に、アイアの叫び声が森に響いた。


「え……?」


 アイアは、今起こった事に対し目を点にしている。


「っ…………え……?」


 アイアの視線の先には、無事に立つリエがいた。

 リエは目を瞑っていたようで、ゆっくりと目を開いた。


「ど、どういうつもり、ですか……?」


 リエが震える声で尋ねる。


「あ〜。時間切れだ。残念だ」


 コウトは、わざとリエの額を撃たなかった。

 額を撃つ直前、銃口を上にそらし空を撃った。


「お前らを殺すのはまた今度だ」


 そう言ってコウトは、銃を腰元に収めながら去っていってしまう。


「はぁはぁ……あっ! トーリさん!」


 リエは緊張が解けたのか、呼吸を乱す。が、アイアが倒れてる事を思い出し、慌ててアイアの元に駆け寄る。


「トーリさん! 今、治療します!」

「す、すみません……ありがとうございます……」


 アイアは、リエに治療してもらいなから、とある事を考えていた。


(時間切れとは一体、なんの事なのでしょう……。それに、どうして殺せたはずの私達を殺さなかったのか……)


 そんな事を考えながら、アイアは意識を手放した。


 ☆ ♡ ☆


「うるさっ。さっさと死ね」

「がああああああああああああああああ!?」


 倒れ込むミリアを見下ろしながら、シーサルは更に右手に力を込める。

 精神をやられてるユリア。心臓を握られるミリア。

 この二人の運命は、果たして……。


「あ〜残念。時間切れだ」

「え……?」


 シーサルが突然そう呟き、ミリアの心臓を解放した。


「はぁはぁ……ど、どういう、つもり、だ……?」

「う〜ん……そういう約束って感じ? お前らを殺したい気持ちは変わらないけど、約束は約束だからな。それに、約束守ったら美味しいご飯くれるって言ってたし」


 そう言ってシーサルは、ユリアの精神攻撃もやめてどこかに去っていってしまった。


「た、助かった……のか?」

「うっ……うぅ……」

「あっ! ユリア!」


 ミリアは、自分の心臓の痛みを無視して倒れているユリアに駆け寄る。


「ユリア! ユリア大丈夫か!?」

「ん……お、お姉ちゃん……?」

「ユリア……大丈夫か……?」

「う、うん……私……どうしたの……?」

「シーサルの攻撃で、精神をやられていたんだ。体はなんともないか?」

「そうだったんだ……うん。特になんともない。なんか、嫌な夢を見てたって感じ……」

「そうか……なんともないならいいんだ」


 ミリアは、ユリアの答えを聞いてホッとした表情を浮かべた。

 ユリアはゆっくりと体を起こし、ミリアの隣に座る。


「そう言えば、シーサルは?」

「あいつならどっか行ったよ。時間切れだ、とかよく分かんない事言ってな」

「そ、そう、なんだ……お姉ちゃんは、大丈夫?」

「ん? あぁ。私は全然大丈夫だ。さ、ちょっと休憩してから戻ろう」

「うん」


 二人は少し休憩してから戻る事にした。

 ミリアは、心臓の痛みが全くと言っていいほどなくなっていた。

 まるで ”最初から効いていなかったみたいに” 。


 ☆ ♡ ☆


「嘘……」

「これは〜♡ 止められないですよね〜♡」

「こんなの……!」


 ミャナは再び剣を鞘に収め、落下してくる扇と対峙して……。


「えぇ〜♡ もう時間切れですか〜♡」

「っ!?」


 ミャナに向かって落下して来ていた扇は、突如として向きを変え、リムリの方へと戻っていった。


「な、何……!?」

「ごめんなさい〜♡ もう時間切れとなってしまったので〜♡ ここで帰らせてもらいます〜♡」

「は、はぁ!? あんた何言ってんの!? 戦いはまだ終わってない!」

「でも〜♡ ここで私を見逃した方が、あなたの為にもなると思いますよ〜? だってあなた、ボロボロじゃないですか〜♡」

「くっ……!」


 リムリの言う通りだった。

 ミャナはすでに満身創痍の状態。

 できれば戦闘を終えたかった。だが、それを認めて相手をみすみす逃がすのは、剣士としてのプライドが許さない。


「そんなの関係ない! あんたはここで倒す!」

「はぁ〜。無理なものは無理なんです〜♡ では〜失礼しますね〜♡」

「ま、待ちなさいっ──くっ……!」


 リムリが扇を地面に突き刺すと、そこを起点に爆発が発生。

 大きな砂埃が舞った。


「あっ……くっ……逃げられた……!」


 砂埃が晴れると、リムリの姿はそこになかった。

 ミャナは剣の柄を握りしめながら、悔しそうに奥歯を噛み締めた。


 ☆ ♡ ☆


「ここから、形勢逆転よ」

「くっ……!」


 エルナは低い声でそう告げた。

 ここから、エルナは逆転できるのか……?


「焔──」


 エルナが魔術? を使おうとした瞬間──、


『何を遊んでいるんですか?』

「っ!?」

「っ!?」


 突如、ゴーザの真後ろの空間が歪み、そこから声が聞こえてきた。

 その声は、魔術などによって加工されているのか、高いような低いような、よく分からない声をしていた。


「な、なぜここに……!?」


 その声にゴーザは、顔を引き攣らせるほど怯えており、震えながら後ろを振り返った。


『作戦終了の合図が出たからね。君を呼びに来たんですよ。そしたらなんですかこの体たらくは。殺しているどころか押されていて、挙げ句深手を負っているとは。なんと情けない』

「こ、これは、その……! ち、違うんですっ!?」

『何が違うと言うのですか。この状況を見て情けない以外の言葉が当てはまりますか?』

「そ、それは……」


 ゴーザは、謎の声の主が相当恐ろしいのか、エルナに対して接する時とはてんで違う弱々しい態度で接していた。


「敵に背を向けるなんて、いい度胸ね。ここは戦場。敵に背を向けたら、死あるのみ──がはっ……!?」


 背を向けたゴーザに、魔術? を放とうとしたエルナ。しかし、その瞬間、エルナの左肩からは血しぶきが舞った。


『あなたはちょっと黙っていてください。今は大人の話をしているんです』

「がっ……!? がはっ……!?」


 エルナは左肩が相当痛むのか、左肩を右手で押さえながら身悶えている。


『ゴーザ。作戦は終了です。引き上げますよ』

「で、ですが……!?」

『聞こえませんでしたか? 引き上げますよ』

「っ……!? は、はい……分かりました……」


 謎の声の主の見えない威圧感が、ゴーザを黙らせる。

 謎の声の命令に、従うしかないゴーザは、力なく項垂れながら歪んだ空間に入った。


「ま、待ちな、さい……!」


 エルナが苦痛の声で、歪んだ空間に声をかける。

 が、その声は届かず──、


『これでようやく……』


 謎の声はそう呟いた後、歪んだ空間はゴーザと共に消失した。


「なんで急に……ぐっ……マズイ……このままじゃ……ヨミ……」


 エルナは左肩から大量の血を流しながら、意識を失った。

「ったくよ〜。後もうちょっとで殺せそうだったってのに、タイミング悪すぎだろ」


 とある部屋で、コウトが椅子の背もたれに寄りかかりながら文句を垂れていた。


「ふわぁ〜……ご飯、まだ……?」


 シーサルは、床に座りながらあくびをしていた。そして、辺りをキョロキョロと見回しながら食事がくるのを待っていた。


「はぁはぁ……♡」


 そんな中で、床に座り一人熱っぽい吐息を漏らす少女がいた。リムリだ。


「んっ……♡ ふぁ……♡」

「おいおい、そこの女どうすんだよ。さっきから声がうざいんだけど」


 と、コウトが苦言を呈すると──、


「まぁまぁ、そう言わないであげてください。彼女は洗脳のせいでこうなってしまっているのですから」

「ジジイも戻ってきたのか」


 どこからか、項垂れるゴーザと共にグルスが部屋に入ってきた。


「えぇ。皆様もお疲れ様でした。殺せましたか?」

「タイミングが悪ぃんだよ。後もうちょっとだったのによぉ」

「オレも、殺せなかった……」

「この様子だと、この少女も駄目だったようですね。さて、この発情を止めるには、彼女に洗脳を施さなければならないのですが……」


 と、グルスが少し困った表情を浮かべると──、


「いいわよ。やってあげる」

「おや、グリエさん。戻られたのですか」

「えぇ」


 グルスに声をかけたのは、薄緑色のドレスを身に纏った女性──グリエだった。

 そんなグリエを見たコウトが、勢いよく立ち上がり──、


「お、おいその女!? なんでその女がここにいんだよ!?」

「どうされましたか?」

「どうした、じゃねぇよ! その女、俺が戦った相手だぞ!?」


 そう叫ぶコウト。しかし、コウトが戦った相手とは、アイア、リエの二人だが……?


「あぁ。あの人の事ですが。まぁ、他人のそら似です。気にしないでください」

「そうそう。世の中に似てる人間なんて三人はいるんだから」

「……………?」


 コウトは訳が分からないと言ったような表情を浮かべながら、ゆっくりと着席した。


「それより、洗脳を再びお願いできますか?」

「えぇ。もちろん。私達の ”計画" にはこの子が必要不可欠でしょ? だからやるわよ。何度だってね」

「ありがとうございます。助かります」


 そう言って、グリエはリムリに近づき、手をかざし洗脳を施し始めた。


「さて。後は彼らが合流すれば、終了ですね」

「そういや、合図を出したくせに遅ぇな」


 そんな話をしていると、部屋の中に三つの空間の歪みが発生し、そこから──、


「おいおい、お前らどうしたよ!?」


 気を失ったリョウヤ、そんなリョウヤを担いだサトル。そして、ミヤビとアカネが現れた。

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