ep.121 ヨミVS四人組 ①
「行きますよ、皆さん」
「あぁ!」「「はい!」」
眼鏡をかけた女性の合図で、戦闘が開始した。
「オーラァ!」
「ぐっ……!?」
リョウヤがヨミに向かって正拳突きをする。
咄嗟に腕をクロスさせる事で防いだが、その威力は半端じゃなく、ヨミは後方に吹き飛ばされてしまう。
足は地面についているので、砂埃が舞っている。
「獣神具技・威風吹翔!」
「がっ!?」
後方に吹き飛んだヨミの背中に、後方にいた女性が持っていた扇から技を放った。
その技は風を操る技で、ヨミの背中にのみ風を当てた。
風を背中に受けたヨミは、そのまま前に吹き飛んでしまう。
「待ってたぜ! オーラァ!」
ヨミが向かう先には、巨大な剣を構えるリョウヤが。
このままでは、ヨミは真っ二つに斬られてしまう。
(負けるか! 業火、焔黒守!)
「何!?」
ヨミは、剣に斬られる直前、自身の周りにバリアを張った。
それにより、剣に斬られる事はなかった。
しかし、リョウヤの大剣を使った攻撃は凄まじい威力で、バリアを一瞬にして破壊してしまった。
「がっ! ぐっ! うっ!」
バリアが破壊されるのと同時に吹き飛ばされたヨミは、地面を数回転げた。
「はぁはぁ……」
痛む体に鞭を打ちながらなんとか立ち上がろうとするヨミ。そんなヨミの真横に──、
バンッ!
「っ!?」
”銃弾” が飛んできた。顔の横ギリギリを通ったので、ヨミの頬には擦り傷ができた。
「次は外しませんよ?」
「あなた達が誰かは分かりません。ですが、敵であると言う事は分かります! なので、僕も遠慮はしません!」
ヨミは立ち上がり、両手両足に黒い焔を纏わせた。
「お? やる気になったか! いいぜ! 殺し合いだぁ〜!」
ヨミの様子を見て、リョウヤは嬉しそうに大剣を構える。
「全く。これはお遊びではなく実践。これまでの訓練とは違うんです。気を引き締めてください」
「はいはい。わぁ〜ってるよ。真面目さんがうっさいんでね。ここからはマジで殺しにいかせてもらう」
「っ!?」
リョウヤは低い声でそう言うと、凄まじい速度でヨミに肉薄してくる。
「業火、焔黒拳! くっ……!」
ヨミは、リョウヤの攻撃を拳で受け止めていく。
剣での攻撃なので、普通に拳で受けたら斬られてしまうが、ヨミは剣の刃ではない側面を上手く攻撃して受け流している。
それにより、激しい攻防が繰り広げられている。
そんな二人の様子を、いつの間にか一箇所に集まった三人が見つめながら話している。
「ミヤビさん。先程はなぜ当てなかったんです?」
「まぁ、威嚇射撃みたいなものですよ。私達の持つ武器が、どれほど脅威でどれほど殺傷能力があるのかを知らずに死ぬのは、可愛そうだと思ったので」
「なるほど。お優しいですね」
「まぁね」
(や、優しいのかな……?)
眼鏡をかけた女性──ミヤビと、同じく眼鏡をかけた青年──サトルがよく分からない会話をしていた。
それに対し扇を持つ女性──アカネは、心の中で軽い疑問を抱いていた。
と、そんな三人の元に──、
「っちあ〜」
リョウヤが後退してきた。
「どうした? 随分苦戦しているようだが」
「あぁ? だってよ、あいつがここまで戦えるなんて聞いてねぇぞ。あの爺さん、情報間違ってんじゃねぇのか?」
「いいえ。あの人の言う事は間違ってないです」
「あ?」
ミヤビは、息を切らしながら睨みつけてくるヨミを見ながら──、
「あの人には特殊な力がある。自身の力を強化できると言う特殊な力が」
それを聞いたリョウヤが──、
「そうか! それでここまで強くなったのか!」
「えぇ」
「でも確か、その力を使うには……」
サトルが少し顔を赤くしながら言うと、それに対しミヤビは心底嫌そうな顔を浮かべ──、
「そう。あの男は女性にいやらしい事をするとパワーアップするんです。詳しい内容までは知りませんが、自身の強化の為に同意もなく女性に性的行為を行うなど、言語道断。いえ、同意があっても駄目です。そういうのは成人して、結婚してからでないと」
だから……と続け──、
「私はあの男を絶対に許しません。いかなる理由があろうとも、女性を性の対象としか見ず、果てには性的行為を迫る不届き者など、許していいはずがありません。あの男はこの世界の為、女性の為、ここで必ず殺します」
「将来、警察官になりたいやつが、殺すとか言っていいのかね〜」
「問題ありません。ここは ”異世界” です。倫理も常識も価値観も、全てが ”地球” とは違う。それに、私は別に誰彼構わず殺したい訳ではありません。ただあの、女を喰い物にする男だけを殺したいのです」
ミヤビは歯を食いしばりながら言った。
彼女には、彼女にしか分からない何かがあるのだろう。それを感じ取ったサトルやリョウヤは──、
「別に駄目って言ってる訳じゃねぇよ。そのお前の思いに、賛同してんだからよ、俺は」
「えぇ。僕も同意です。ミヤビさんの気持ちを全て理解できる訳ではありませんが、僕も、あの男は気に食わない。なので、一緒に殺しましょう」
「二人とも……ありがとうございます」
「わ、私もいるよ……! ミヤビちゃん……!」
「アカネもありがとうございます。では、これまでの訓練の成果を発揮しましょう!」
「あぁ!」「「はい!」」