ep.119 ゴーザVSエルナ ④
足を負傷したエルナに、ゴーザは剣閃を放つ。
その剣閃は、一直線にエルナに向かって行き──、
「舐める、なよ! 雷術、雷速の瞬動!」
エルナは、雷術の新技を使用し、その剣閃を躱した。
エルナが使用した【雷速の瞬動】は、全身に雷を纏い、足に電力を充電し、それを一気に放電することで、目にも留まらぬ速さで動くことができるというもの。
それを使用してエルナは、ゴーザの剣閃を躱した。の、だが……。
「はぁはぁ……」
「ははは! 秘策だったんだろうが、自分を痛めつけただけだったな! 左足、もう壊れてるぞ?」
そう。エルナの左足は限界を迎えてしまっていた。
ゴーザに刺され、穴が空いてしまっている左足。しかし、そんな左足に鞭を打った為、エルナの左足の骨は粉々に砕けてしまった。
今、エルナは右足だけで立っている状態だった。
「逃げるために足を犠牲にしたら、俺と戦えねぇぞ? どうするって言うんだ? もしかして、俺との戦いを諦めたか?」
「そんな訳ないでしょ……! 私は戦いを、諦めない!」
「はは! 威勢だけはいいが、どうするって言うんだ! その足で、その体力で、その軟弱な力で! どうやって俺に立ち向かうと!」
(啖呵を切ったのはいいけど……実際どうしよう……)
エルナがゴーザに悟られないように考えていると──、
(ほんの少しだけ──力を──貸す──よ)
(っ!? だ、誰!?)
突如として、エルナの頭の中に知らない人の声が響いた。
(大丈夫──落ち着いて──僕は──君の味方──だから)
(……………この状況を打破できるの?)
(あぁ──彼を倒すことはできない──かもだけど──立ち向かう事──はできる──はずだ)
(………………分かった。今はあんたの言葉を信じる)
(ありがとう──)
エルナは短剣を、右手に持っているのとは別にもう一本生み出す。
「今更そんな二本の短剣で、何ができると──」
「焔雷」
「っ!?」
エルナは、目にも留まらぬスピードで移動した。
「どこだ……どこに行った……?」
ゴーザが辺りを見回す。しかし、エルナの姿は見当たらない。
と──、
「ここよ」
「っ!?」
エルナの声は、ゴーザの真後ろから聞こえてきた。
ゴーザが慌てて後ろを振り向くと、そこには剣を振りかぶったエルナがいた。
そして、その剣をゴーザの肩目掛けて振り下ろす。
「無駄だ! お前の攻撃は俺には効かな──ぐあああああああああああ!?」
振り下ろしたエルナの短剣は、ゴーザの肩を斬り裂いた。
ゴーザの肩には大きな傷跡ができ、そこから大量の血が溢れ出す。
「な、なぜだ!? 俺にはあらゆる攻撃が効かないはずなのに!」
「そんなの、私も知らない」
そう言うエルナは、全身に赤黒いオーラを纏っている。瞳も黒目が赤く光っている。
さらに、注目すべきは短剣だ。
通常の雷の短剣であれば、色は黄色なのだが、今エルナが持っている短剣は、黄色と言うよりは黄金で、刃はオーラと同じ赤黒い色に染まっている。
「はぁはぁ……(治癒しねぇ……この攻撃、まさか不可治の攻撃か……? だとしたら、かなりマズイ……!)」
ゴーザが左肩を押さえながら、ゆっくり後退る。
そして、エルナの攻撃を受けてはならないと考え、どうすればいいのかを考える。
「ここから、形成逆転よ」
「くっ……!」
エルナは低い声でそう告げた。
ここから、エルナは逆転できるのか……?