ep.104 コウトVSアイア&リエ ①
「俺の相手はテメェらか」
「えぇ。アイア・トーリと申します。以後、お見知り置きを」
「リエです。よろしくお願いします」
「はっ。無駄に丁寧だなぁ。これから殺し合うっていうのに」
コウトは、アイアとリエの丁寧さに少し苛立っていた。その為、わざと挑発するかのように悪態をついた。
しかし、そんなコウトの悪態には乗らず、アイアとリエはコウトに質問をした。
「あなたは一体何者で、何が目的なんですか?」
アイアが尋ねる。
「俺が何者か、か。悪いがそれはまだ言えねぇな」
「それはなぜです?」
コウトの答えに、リエが首を傾げる。
「時期尚早ってやつだ。俺の事はその時が来るまで喋るなって言われてんだ」
「誰に?」
アイアが、鋭く睨みながら訊く。
「それも言えねぇな。が、一つだけなら言える事がある」
「なんですか?」
アイアがそう訊くと──、
「俺の目的が、お前らを殺すって事がなぁ!」
「「っ!」」
突如、コウトが二人に向かって走り出して来た。
しかも、そのスピードは普通の人間では出せない速度で、瞬く間にアイアとの距離を詰めてしまった。
だが、ただジッと待っているアイアではなく、コウトが疾駆した瞬間に素早く魔術を使用した。
「風術、竜巻!」
「おっと!」
「躱した!?」
アイアが放った竜巻を、コウトは簡単に躱してしまう。その光景に驚いたリエは、思わず声を上げてしまう。
「だったら! 風術、散!」
アイアは、後退する事で攻撃を回避したコウトに向かって、風を分断させる術を使用した。
風を真っ二つにして、左右から攻撃を仕掛ける。が──、
「おっと!」
それも躱されてしまう。
しかし、そんなのははなから予測済みのアイアは、その分断した風を使い──、
「風術、集!」
アイアは、両手を目の前でクロスさせて分断した二つの風を中央に寄せ付けた。
その風の真ん中にいるのはコウト。このままいけばコウトに攻撃は直撃──、
「こんなの、俺には当たらねぇよ!」
「なっ!?」
する寸前で、コウトは真上に飛び上がり攻撃を回避した。
空中にいる状態で真上にさらに飛び上がるのは、本来は不可能なはずなのだが……。
「そんでもって、この風を〜!」
バンッ!
コウトは腰元から何かを取り出し、風に向かって放った。
すると、アイアの放った風が一瞬にして消滅してしまった。
「なっ……!? い、今、何が起こって……!?」
リエは今起こった事が理解できず、呆然としている。
そんな中、アイアは地面に降りてくるコウトを油断なく睨みつけている。
「よっと。お〜すげぇなぁ〜」
「それは?」
「これか? ”拳銃” って言うんだ。このグリップの所に弾を装填して、この部分をスライドさせてこのトリガーを引くと〜」
バンッ!
「っ!?」
「バンッ! っと弾が発射されるんだ。あれ? 避けたのか?」
「えぇ。当然よ」
と、強がったアイアだが──、
(い、今の、何……!? 全く視えなかった……! 何が起こったのか、何をしたのか全く分からなかった……!)
コウトが使用した ”拳銃” の攻撃を、アイアは見抜けてはいなかった。
たまたまコウトが銃を数ミリずらしていたので、当たらなかっただけで、アイアは避けたりなどはしていなかった。
「ふん。まぁいいや。本当に避けれたのか、試してやる」