ep.98 立ち向かう勇気
「それで先生」
「はい?」
「謎の生物がいるのは分かった。それでその後は?」
「そ、その後……?」
「ここに向かってきてるんでしょう? 何も対処せずに放っておくの?」
「い、いえ! ちゃんと対処はします! 今、冒険者ギルドに協力を仰いでいます。手が空いていて出撃できる冒険者さん達を集めてもらっています」
「他力本願なんだ」
「え……?」
ミャナはリエの近くまで行く。
「なんで、私達の学園に向かってきている敵を、通っている私達じゃなくて顔も知らない他人に任せなきゃいけないの?」
「っ!? た、他人ってそんな……あの方々は冒険者で……」
「その冒険者がどれだけ信用できる? あのキザ野郎や大男だって、結局は敵だった! 他人は必ず裏切る。それが人ってもの! そんな奴らに学園の危機を任せるわけにはいかない!」
ミャナの圧に押し黙ってしまうリエ。すると──、
「だったら、どうするって言うんだ? シーズ」
ミリアが低く声を発した。
「そんなの簡単よ。私達が戦う」
「はっ。調子に乗るなよ? お前らみたいなガキが! 対抗できるような相手じゃないんだよ!」
「やってみなきゃ分からない!」
「分かる! 私はこれまで色んな敵と戦って来た。でも、あれはその中でもトップクラスの相手だ……。この学園にいる教師が束になっても勝てるかどうか分からない……。そんな相手にちょっと力があるくらいの子供が敵う訳ないんだよ!」
ミリアがそう叫ぶと──、
「敵前逃亡」
「あ……?」
「目の前に敵がいて、戦う力を持っているのに逃げるなんて、そんなの弱者がする事! 敵うか敵わないかなんてどうだっていい! 力がある。戦う力がある! ただそれだけ、その理由だけで! 立ち向かう理由になる!」
それに……と続け──、
「先生は怖いからって、敵わないからって理由だけで戦う事をやめた? 守るべき者がいて、守るべき物がある状況下で、そんなくだらない理由で戦うことをやめて逃げたの? 大切なものを見殺しにしたの!?」
パチンッ!
「お、お姉ちゃん……!?」
ミリアは泣きながらミャナの頬を引っ叩いた。
「そんな訳ないでしょう……! そんな訳、ないでしょう……! どんなに怖い相手でも、敵わない相手でも! 大切なものを守る為に立ち向かってきた……!」
「だったら! 今回も、立ち向かわなきゃ。この学園、生徒、教師は、先生にとってどんな存在?」
「………………た、大切な、大切な存在だ……!」
「なら、勇気を出して。みんなを守る為、立ち向かう勇気を出して……! 怖いのは分かる。人間だもん、誰だって怖い。でも、先生は一人じゃない」
「え……?」
「私がいる」
「シーズ……」
「先生には、私がいる!」
ミャナがそう言うと──、
「先生! 私だっているよ!」
エルナが立ち上がり、さらに──、
「私だっていますわ!」
アイアも立ち上がった。そして──、
「わ、私だっているよ……! お姉ちゃん!」
ユリアも声を上げた。
「スカーレット……トーリ……ユリア……!」
ミリアは涙を流す。
が、すぐにその涙を拭い──、
「そうだな……! みんながいる! 私は一人じゃない! 怖さは消えないが……ここで立ち止まってたら、何も守れない!」
「「「「うん!」」」」
「みんなで、この学園を守るぞ!」
『おーーーー!!!!』