ep.97 謎の生物達
「そのどちらでもない……?」
「あぁ……あれは、空想上の生き物でも動物などの生き物でも、どちらでもない……初めて見るものだった……!」
ミリアは額に大汗を浮かべ、瞳には涙を浮かべている。
確認した際の生物の姿を思い出し、恐怖に包まれているのだろう。
ミリアは、この学園の教師の中ではグルスとゴーザに続く実力者。
数々の戦場をくぐり抜けてきているので、そう簡単に怯んだり恐怖に包まれたりする事はない。
ないのだが……。
「お、お姉ちゃん……!」
体を震わせるミリアに、ユリアが駆け寄り背中をさする。
今のミリアは、初めて戦場に出て敵の威圧感に怯む新人そのもの。
誰の目にもそう映っているだろう。
「リエ先生、その生物はどんな姿をしてた?」
ミャナは、これ以上ミリアから話は聞けないと判断し、リエに尋ねる。
「そう、ですね……一見するとゴリラのような見た目なんですけど、頭には角があって二本足で立ってて、筋骨隆々で、そして……」
「そして?」
「人間っぽい」
『っ!?』
この世界に、人の形、人の姿をしたモンスターや魔物は存在していない。
全てが『人以外』の生物なのだ。
それが、今回森に現れたのは『人の姿』をした何かだと言う。
リエのその言葉を聞いた生徒達は、一瞬にして恐怖に包まれた。
「その人間っぽい生物は、どのくらいいる?」
「そうですね……確認できただけで数百……いえ、数千はいました」
『っ!?』
「ですが、確認できた所だけで、です。おそらく、森の奥にもっといると思います。想像でしかありませんし、想像したくはありませんが……おそらく、数万……数十万はいるかと……」
その言葉に、皆は絶句した。
そもそも、モンスターや魔物の大群であっても多くて数百程度。
十万や千を超える事はまずない。
だが、今回は千をゆうに超え、万、下手をすれば数十万はいるかもしれないと言う。
その、今まで聞いたこともない事態に、生徒達は軽いパニックになっていた。
「ど、どうすんだよ!?」
「そんな数の怪物がここに向かってきているんでしょう!?」
「俺達どうなるんだよ!」
「まだ魔術習ってる段階だから、戦ったりなんてできねぇぞ!?」
「うるさい!!!」
『っ!?』
パニックになり騒ぎ出す生徒達を、ミャナが怒鳴り黙らせる。
「別にあんた達に戦えなんて誰も言ってない。怖がることしかできない奴らは邪魔だから黙ってて」
『…………………』
生徒達は何も言えなかった。
ミャナの言う事は正しかったから。
だから、黙るしかなかった。