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それゆけ!怪獣デザイナー

作者: 一飼 安美

「ダメ。ボツ」


 制作会社からダメ出しを受けて作り直しになったのは、怪獣。このデザインでこの設定で、シナリオを作ろうと思えばいくらでもヒーロー番組ができる!と思って持ち込んだ自信作は、日光怪獣アブソーラー。今までの怪獣は石油や原子力をエネルギー源にするところを、こいつは太陽の光を吸収して攻撃してくる次世代型SDGs怪獣です!と力説したら「コイツが悪者でどうする!」と怒られた。なんでダメなんだろう、やっぱり日光怪獣だからといって猿回しに寄せたのがいけなかったのだろうか。そう思って見ているとなんだかそんな気がしてきたので嫌になり、別のヤツを考えた。


「ダメ」


 次なるデザイン画、古代怪獣ババラは即突き返された。名前が悪いらしい。こいつは一億年前の恐竜の生き残りで、自分の生んだ卵を守るために戦うんです!と後付けすると余計ダメになったようで、「これの真逆を考えてくれ」と頼まれた。先方もそこそこ厳しいらしく、一人でも多くのデザイナーを育てたいからボツにする割には門前払いはしない。恐竜の母親が優しくて何がいけないのか、と考えた結果「母親をババラと呼ぶのはまずい」と思い直した。くそ!ババラめ!なんてセリフが入ったら今のご時世では一発でアウトだ。その辺もあるし、と含みのある納得の仕方をした先方は、態度がはっきりしない。こんな感じだからオレのような出入りの相手をしているのだろうか。


「違うでしょ」


 ランプの精をモデルにした宇宙魔人ランプラーは一瞬引っかかったようだが割とすぐに返された。「名前はいいんだけどねえ」なんて言われたから本当のことが言いづらい。自分では、ナンプラーに似ているけど名前は後で変えれるし、と思っていた。骨董品のランプに入った宇宙生物が、子どもたちをいいように使って悪だくみをする、とか……一瞬大筋を考えてくれた担当者だが、あまり興味がないのか新聞を手に取って読み始め、海外のこの辺が今こうで……と話をはぐらかしてくる。ちんぷんかんぷんなので適当に答えていたら「世の中に興味を持つように」と就活生のようなことを言われた。就活せずにこの仕事をしているのに、なんでそんなことを言われないといけないのか、といらだちを押さえながら帰ろうとした。そしたら、いつもメモを取っているノートがカバンから落っこちた。


「これは?」


 ……落書きです、と我慢して答えた。いい年してこんなものを描くのが好きで、奇抜で斬新な怪獣を作れたら大当たりする!と思ってがんばって考える傍ら、ノートの隅には手が動くままに描いた怪獣、デザインとは言えないようなものがたまっていく。鼻のような赤い角、四足歩行、尻尾には毒針。横腹から出た二本の大きな角は、真ん中でスパークして光線を飛ばす、と描いてから考えた。地底で寝ていたら汚水をかけられて怒ったとか、そんなんなんだろうなあ……と口から出まかせを言う。コイツに汚水がかかったらたぶん角から濡れるだろうと思い、その角、センサーだから臭いんですよ!とその場で付け加えたら、「預かっていいかい?」。先方はノートの落書きを熱心に眺めていた。がんばって考えたのは全部ダメだったので、正直複雑だ。


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