信じるべきか
「ここでは魅也子さんが絶対的存在なので…」
乱れた髪を直ししゃんと立つ姿は、さっきまでブンブンと羽音をつけて、飛ぶ真似をしていたハチ男がイケメンで何だか普通にショックだった。
「だからと言って彼女に何から何まで従うと言う意味では無いわよ」
そこへ扇子を片手に、スカートの裾を翻し、物珍しそうに一瞥してきた女子高生がさっきまで僕が座っていた椅子に腰を降ろした。
「彼女はただ私達を。私達の魂を解放してくれただけ。ちょっと、私がここに座ったらすぐにお茶とマカロンを用意するように言ったわよね!」
後半急に声を張り上げムッとした表情でテーブルをキラキラとカラフルなラインストーンをつけた人差し指で叩いてきたから驚いた。
彼女の声を聞きつけたのか、奥の部屋から、キメの整った肌をしたこれまたスラッとした男性が現れた。
「遅れまして大変申し訳ありません満良さま」
手にしていたトレイに載せられていたバラのティカップの上にソーサーを載せ、横に色とりどりのマカロン、そして砂時計を満良の前に置いた。
「ありがとう」
ひっくり返された砂時計がパラパラと落ちてゆくのを見ながら、男が僕に声を掛けた。
「初めまして、魅也子さまに支える半田空人です。確か、足川龍二さまですよね?話は魅也子さまから聞いております。心情お察しします」
あれ?僕の名前言ったっけ?
「私を誰だと思ってる?お前の事など何でもお見通しだ」
「え?前世しか見えないんじゃないのか?」
「私の手にかかれば現世のお前も丸見えだ」
得意気に髪の毛をいじりながらクククと笑った。
すごい、やっぱり彼女は本物だ!
「これがそこに落ちておりました」
空人がおもむろに胸ポケットから取り出したモノを僕の手に載せた。
あ、これ僕の生徒手帳だ。いつの間に落としたんだろう?てか、彼女はこれを見たのか!
何だ、すっかり騙されてしまった。
「それはそうとこのままじゃお前はもしかしたら、3日後の誕生日を迎えられないかもしれんな」
「…」
だから、どうすれば助かるか教えて欲しくてここにいるんじゃないか!
なのに、ここにいても何も話が進展しない。
「勘違いするな。私は別にお前を見殺しにしようとしている訳じゃない、現にそのような事例は今まで何件か扱ってる」
「…本当か?それでその人達はどうなった?」
「ほぼ助かっているから安心しろ」
「…」
ほぼ助かってるってそんな安直な…。
本当に彼女を信じていいのだろうか?
僕は不安な気持ちのまま彼女を見詰めた。